盛り上げたいなら、最初から全部の楽器を鳴らすべき?

曲を大きく盛り上げたいなら、最初から弦も木管も金管も鳴らしておく方が有利でしょうか。音そのものは厚くなりますが、その後にさらに広がったと感じさせるための変化は、作りにくくなります。

大きな響きは、その瞬間の楽器数だけで決まるものではありません。そこへ至るまでに、どんな響きを聞いてきたかも重要です。すべての音色を一度に使い切らず、後に残しておくことが、オーケストラの色彩を生かす基本になります。

厚い音は、使い続けると普通の音になる

弦、木管、金管の三群が一つの旋律を重ねると、豊かで力強い混合音色になります。弦と金管だけの場合よりも、木管が入ることでよく溶け合います。大きな音のまとまりを作りたい場所には、有効な書き方です。

ただし、このような厚い重複は、使う頻度が増えるほど効果が薄れます。一度の登場なら特別に感じられる響きも、ずっと続けばその曲の通常の状態になります。さらに強く感じさせたい場所で、同じ音色をもう一度使っても変化が伝わりにくくなるのです。

だからといって、大きな編成を避ける必要はありません。大事なのは、その響きにふさわしい場所を選ぶことです。常に最大の厚さを保つのではなく、厚くする前の状態も含めて、一つの流れとして設計します。

「取っておく」とは、何を残すことか

残す対象は、単にまだ鳴っていない楽器の名前ではありません。新しく加わる音色、重複による厚さ、音域の広がり、最後のアクセントなど、後の変化を生む要素を残します。曲の中で、何が変わると到達感が生まれるかを考えるわけです。

たとえば、弦だけで始めた響きに木管が加わり、その後に金管が入るなら、音量とともに音色も変わります。同じ楽器が大きくなるだけでなく、響きの構成自体が豊かになるため、段階を作りやすくなります。

反対に、初めから三群を同じ形で重ねている場合には、後で音量を増す余地はあっても、同じ追加の効果は使えません。何を既に使い、何をまだ残しているかを見ることが、盛り上がりを考える手掛かりになります。

弱く鳴らしていれば、温存したことになるか

全楽器をピアノで鳴らし、山場でフォルテにすれば十分ではないか、と考えるかもしれません。もちろん強弱の変化はできます。しかし、弱い音量でも、三群を重ねた響きの厚さや複雑さは存在しています。

三群の重複は、大音量の場面だけでなく、ピアノで重い音色が欲しいときにも使われます。つまり、弱く鳴らしていることと、軽い編成の響きを保っていることは同じではありません。音量が小さくても、大きな混合音色を使っている場合があります。

後から音色そのものが豊かになる変化を作りたいなら、強弱記号だけでなく、参加している楽器を見直す必要があります。小さく始めることと、少ない音色から始めることは、別の準備なのです。

長いクレッシェンドには、編成の変化を使う

短いクレッシェンドなら、強弱の指定によって作ることができます。一方、長い時間をかけて大きくしていく場合には、楽器の追加による工夫が必要になります。音量の上昇とともに、響きの構成も変えていきます。

基本的な方向は、弦か木管のどちらかから始め、もう一方を加え、その後に金管へ進む形です。金管は、いくつかの打楽器を除けば大きな音を出す楽器群なので、後の段階を担う役割を持ちます。

ただし、この順番を楽器名だけの手順として覚えるのでは不十分です。どの音域で、どんな強さから入り、どこまで増していくかを合わせて考えます。加わった楽器が、その瞬間から完成時の音量を出す必要はありません。

新しい楽器は、小さく入って育てられる

一つの楽器群がクレッシェンドしている途中に、別の楽器群がピアノやピアニッシモで加わり、より急速に大きくなる方法があります。初めから大きく飛び込ませるのではなく、重なりながら響きを変えていく書き方です。

この方法では、先に鳴っていた楽器の音量変化と、新しく加わる楽器の音量変化が、同時に進みます。単に一段ずつ人数を増やすのではなく、音色が徐々に複雑になり、音量とともに緊張感が高まります。

たとえば、弦がすでに大きくなり始めたところへ、木管を弱く加えると考えてみましょう。木管の登場を独立した強い出来事として聞かせるのか、全体の増大へ溶け込ませるのかで、入り方の考え方が変わります。ここでは後者の変化を作っています。

楽器によって、小さく始める条件も違う

同じピアニッシモを指定しても、どの楽器群も同じように始まるわけではありません。弦は、ほとんど聞こえないほどの小ささから始めることができます。木管では、音の始まりに聞き取れる程度のアクセントが伴います。

そのため、何もないところから徐々に響きを現したいときには、楽器の選び方も関わります。強弱記号をそろえるだけでは、始まり方の性格まではそろいません。音が現れる瞬間から、その後の増大までを一続きに考えます。

金管は、クレッシェンドから強いアクセントの山場へ向かう流れを効果的に作れます。一方、音を次第に消していく働きでは、クラリネットが非常に小さくなる性質を生かせます。増やす場面と減らす場面で、同じ楽器が同じように働くとは限らないのです。

最後の一押しを、途中で使い切らない

大きなクレッシェンドでは、最後のアクセントのために何かを残しておくことが重要です。途中の段階で、使える音をすべて出し尽くしてしまうと、到達点が途中の延長だけになりやすくなります。

この最後のアクセントには、打楽器が使われることがあります。打楽器の中には、小さな音から非常に力強い音まで変化できるものもあります。また、小さくできない楽器でも、山場へ参加する役割を持つことができます。

ただし、打楽器を最後に加えれば必ず盛り上がる、という単純な話ではありません。それ以前の響きに対して、最後に何が新しく加わるのかが重要です。残しておいた要素があるからこそ、その登場が到達点として働きます。

音を減らすことも、次の山場を準備する

楽器の追加と逆に、ある楽器群を省いていけば、音色をより単純なものへ戻せます。これは、ディミヌエンドのための書き方になります。大きな混合音色から、少ない色へ戻っていく過程を作ることができます。

長いディミヌエンドなら、金管、木管、弦という方向で楽器を減らしていく方法があります。音量を下げるだけでなく、響きに参加する群を減らすことで、厚さも変わります。増大とは反対向きの編成変化です。

このように音を減らす場所があれば、後で再び加わる音色にも意味が生まれます。休んでいた楽器が戻ることで、前の厚い響きとの差を作れるからです。休符は、単に音のない場所ではなく、その音色を次に使うための余地にもなります。

高さの変化も、使いどころを選ぶ

最高音域や最低音域は、短いパッセージで使うと効果を持ちます。使い続けると耳を疲れさせますが、対比や山場へ適切に参加させれば、オーケストラ全体の響きを大きく変えられます。

つまり、盛り上がりのために残しておくものは、楽器群だけではありません。特殊な高さも、普段との違いを生む要素になります。初めから常に広い範囲を使っていると、後で音域が拡大したときの変化を作りにくくなります。

ただし、音域を広げる際には、和音の配置や中間の声部も関わります。最高音と最低音を追加するだけで、まとまった大きな響きになるわけではありません。極端な音域の使い方は、超高音や超低音を使い続けると効果が薄れる理由で詳しく扱います。

強弱記号だけで、全体の釣り合いを任せない

あるパートをメゾピアノ、別のパートをメゾフォルテにすれば、必要な差が必ず生まれるとは限りません。奏者は、隣のパートに何が書かれているかを常に知っているわけではなく、実際の響きを聞いて音量を合わせようとします。

そのため、大きな変化を作るときは、同時に鳴る楽器の数や、その強さに合う音域も使って設計します。強弱記号は必要ですが、編成と音域が反対の方向へ働いているところを、記号だけで解決しようとしないことが大切です。

たとえば、響きの厚さを明確に減らしたい場面なら、全員に弱く奏するよう求めるだけでなく、どの群が演奏をやめるかも考えられます。逆に厚くしたい場面では、後から加わる群を使えます。楽器の出入りそのものを、強弱の表現に参加させるわけです。

曲全体の中で、登場順を考える

一つの山場を作るときには、最初、途中、到達点の響きを並べて考えると整理しやすくなります。最初に何を聞かせ、途中で何を加え、最後に何を残すのか。完成時の総譜だけでなく、そこまでの差を設計するのです。

たとえば、初めから三群が参加する必要のある音色なら、その響きを無理に薄くする必要はありません。その場合は、後に残す要素を別に考えます。反対に、三群を使う必然性がまだないなら、少ない色から始める余地があります。

この判断では、主旋律の性格も忘れないでください。重複が増えるほど、個々の楽器の特徴は失われます。混合された力強さへ移したいのか、独自の色を保ちたいのかを、場面ごとに選びます。重複と個性の関係は、楽器を重ねたときに旋律の個性が薄れる理由で説明しています。

盛り上がりを作るために必要なのは、最初から最大の人数を鳴らすことではありません。今の響きから、次に何が変わるかを残しておくことです。音量、厚さ、音色、音域の変化を結び付けると、オーケストラの大きな響きを、曲の流れの中で効果的に使えます。

到達点で全奏を使うときも、全員を同時に鳴らすことが唯一の答えではありません。tuttiは、本当に全楽器を鳴らすという意味?で、全奏の考え方を整理しています。

一つの楽器の中にも、非常に弱い音から強奏までの変化を作る余地があります。ティンパニの具体的な使い方は、ティンパニは、強い一撃以外にどう使える?をご覧ください。

音色や楽器の参加を取っておく考え方を、長い強弱の変化として組み立てる方法もあります。詳しくは、長いクレッシェンドは、全員を少しずつ強くするだけでいい?をご覧ください。


音色の組み合わせからtuttiの使い方まで読むなら、リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』の書籍版・PDF版へ。

書籍版をAmazonで見る / PDF版を見る

この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:複数の楽器群の組み合わせによるメロディ。楽器の追加・削減、クレッシェンド、音域の扱いについては、第四章の該当節も参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

Follow me!