【会話で学ぶ】チェロとコントラバスが旋律を弾くとき、上の弦はどう伴奏する?
クマニコル:チェロとコントラバスに低い旋律を弾かせたいです。上のヴァイオリンやヴィオラも同じ旋律を重ねるべきでしょうか?
リムコフ博士:上の弦まで同じ旋律にそろえる必要はない。低い旋律を低音木管で重ね、上の弦には細かな伴奏、ほかの管楽器には長い和音を任せる方法がある。旋律の補強と、周囲の運動を分けて考えよう。
『サトコ』では、低い旋律を二つの高さで重ねる
『管弦楽法の基本』第1巻「弦と木管の重複」は、第2巻No.86『サトコ』3を、チェロ+バスクラリネット、その1オクターブ下のコントラバス+コントラファゴットという組み合わせの実例として挙げています。

クマニコル:いちばん下の V-c. e C-b. がチェロとコントラバスですね。最初は同じ形が繰り返されています。
リムコフ博士:その線を、上の Cl. basso と C-fag. の段でも探してみよう。低い旋律は弦だけではなく、バスクラリネットとコントラファゴットにもある。上側はチェロとバスクラリネット、下側はコントラバスとコントラファゴットという二層なのじゃ。
クマニコル:チェロとコントラバスが一段に書かれていても、同じ高さに聞こえるわけではないのですね。
リムコフ博士:コントラバスは書かれた音より1オクターブ低く鳴る。原典本文の組み合わせと照らせば、ここは上下のオクターブを含む重複だと分かる。低い楽器が集まっていても、全員を同じ実音へ押し込む配置ではないぞ。
ヴァイオリンとヴィオラは、低い旋律をなぞらない
クマニコル:その上の弦にも動きがあります。これも同じ旋律ですか?
リムコフ博士:Viol. I e II unis. は、第1・第2ヴァイオリンがユニゾンで同じパートを奏する指定じゃ。そこには、低い旋律とは違う細かな上下の動きがある。ヴィオラにも同じ細かさの動きがあり、上の弦が別の伴奏を作っている。
クマニコル:低い主題を全弦で高く重ねる案とは違うのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。低い旋律は低いまま弦と木管で支え、その上に別の動きを置く。旋律の高さを拡張することと、上側へ伴奏の運動を足すことは別の選択なのじゃ。
低音が長く伸びるところで、上の弦は動き続ける
クマニコル:最初から最後まで、上と下で同じ動き方を続けていますか?
リムコフ博士:最初の二小節では、低い旋律は短い音を並べ、上の弦は小節の初めに長めの音を置いてから細かく動く。そのあとの小節では、低い旋律が長い音へ移る一方、上の弦の細かな動きは続く。ここを縦に比べてみよう。
クマニコル:低い主題が伸びたところでも、曲全体の動きまで止まらないのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。主題を細かく書き換えずに、別の声部で運動を続けている。この例から学べるのは、低音の音符の長さだけで、合奏全体の動きを判断しないことじゃ。
管楽器の多くは、細かい伴奏へ参加せず和音を保つ
クマニコル:木管や金管まで上の弦と同じように動かせば、もっと充実しますか?
リムコフ博士:この譜例では、フルート、オーボエ、イングリッシュホルン、通常のクラリネットなどに長い音がある。ホルン、トロンボーン、チューバも長い和声を受け持つ。細かく動く声部と、長く和音を支える声部を分けているのじゃ。
| 役割 | 譜例での担当 |
|---|---|
| 低い旋律の上側 | チェロ+バスクラリネット |
| その1オクターブ下 | コントラバス+コントラファゴット |
| 細かな伴奏 | 第1・第2ヴァイオリンのユニゾンと、ヴィオラ |
| 長い和声 | その他の木管、ホルン、トロンボーン、チューバなど |
クマニコル:ファゴットも、コントラファゴットと同じ低い旋律ではないのですね。
リムコフ博士:よいところに気付いた。Fag. の段では和音を長く保ち、C-fag. は低い旋律を重ねている。同族楽器だから同じ役割、と決めないことじゃ。
この例は「伴奏を弱くすれば解決する」例ではない
クマニコル:低い旋律を聴かせるために、上の弦は弱く弾くのですか?
リムコフ博士:譜例の冒頭を見ると、上の弦にも低い旋律にも f がある。ほかの多くの声部も強奏じゃ。ここでの要点は、背景を一律に弱くすることではなく、低い主題の重複と、伴奏の異なる動き方を組み合わせていることにある。
クマニコル:では、どんな低音旋律でもこの配分なら埋もれませんか?
リムコフ博士:そうは言えない。低い線の音域や速さ、上の音型の密度、和声の配置が変われば条件も変わる。譜例と同じ楽器名を並べるだけで、主題が必ず明瞭になるわけではない。実際の線を合わせて判断するのじゃ。
自分の編曲では、低い主題と上の音型を別々に確認する
クマニコル:この方法を試すなら、最初に何を確認すればよいでしょう?
リムコフ博士:まず低い主題だけを読み、どの高さをチェロ、どの高さをコントラバスに任せるかを決める。次に、それぞれの高さへ木管を重ねる。そのうえで、上の弦に主題とは別の動きが本当に必要かを考えるのじゃ。
クマニコル:上の弦を動かす場合も、管楽器の持続和音との関係を見ます。
リムコフ博士:そうじゃ。上の音型だけが面白くなって、低い主題よりそちらを追わせる結果になっていないかを確認する。主題、細かな伴奏、長い和声の三つが、それぞれ望んだ仕事をしているかを見るのじゃ。
クマニコル:低音が旋律だから上の弦を全部休ませる、あるいは全部同じ旋律にする、という二択ではないのですね。
リムコフ博士:その通り。低い線を重複で支え、上の弦で運動を作り、別の楽器で和声を保つ。この三つを分けると、低音を主役にした編曲にも具体的な選択肢ができる。
出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦と木管の重複」、第2巻No.86。旋律のオクターブごとの組み合わせは原典本文、上の弦・管楽器の役割と音価の変化は譜例の分析に基づきます。自作へ適用する際の確認手順は学習上の補足です。
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