長いクレッシェンドは、全員を少しずつ強くするだけでいい?
長いクレッシェンドを書いたのに、途中からあまり大きくなった感じがしない。あるいは、新しい楽器が入るたびに段差ができる。そんな場合は、強弱記号の長さだけでなく、参加する楽器の順番と入り方を見直してみましょう。
長い増大や減衰では、同じ編成の音量を変えるだけでなく、響きに参加する楽器を変えることが重要です。 どこから始め、途中で何が加わり、最後に何が残るかを、時間に沿って組み立てます。
短い変化と、長い変化では設計の範囲が違う
短いクレッシェンドやディミヌエンドは、強弱の指定によって表現できます。しかし、長い時間をかけて変化する場合には、配分自体にも工夫が必要になります。
最初からすべての楽器が参加していれば、途中で加えられる音色は残っていません。反対に、後から入る楽器を用意していても、入る瞬間の強さが合わなければ、滑らかな増大にならないことがあります。
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』では、楽器の追加や削減によって、音色を複雑にしたり単純に戻したりする方法が示されています。音量の変化に、響きの中身の変化を伴わせる考え方です。
曲全体で音色を使い切らないという判断は、盛り上げたいなら、最初から全部の楽器を鳴らすべき?で扱っています。この記事では、一つの長い強弱の変化を、途中の入り方まで具体的に考えます。
新しい群は、弱く入り、変化に追いつく
ある楽器群が徐々にクレッシェンドしているところへ、別の群を加える場合、新しく入る群はピアノやピアニッシモで始め、より急速にクレッシェンドする方法があります。
この入り方なら、追加された瞬間だけが強い段差になるのではなく、最初の群の増大へ新しい色が重なっていきます。二つの群が同じ時点から同じ速さで強くなる必要はありません。
新しい楽器へ、入った瞬間から周囲と同じ強さを求めると、参加そのものが大きなアクセントになる場合があります。その効果を狙うならよいですが、連続した増大が欲しい場合には区別が必要です。
どの楽器を加えるかと同じくらい、どの強さから参加させるかが重要です。 音符が始まる場所だけでなく、その直後の強弱の傾きまで読みます。
弦、木管、金管の順を、基本の目安にする
自然な増大の出発点として、弦または木管から始め、次にもう一方を加え、最後に金管へ進む順序が挙げられています。長いクレッシェンドでは、弦、木管、金管という順の追加も示されています。
この順序には、群ごとの音の強さの違いが関わっています。いくつかの打楽器を除けば、金管は非常に大きな音を出せる群であり、到達点へ向けた増大に効果を持ちます。
ただし、毎回この順に楽器名を並べればよいということではありません。曲が初めから必要としている音色や、旋律を担当する楽器を踏まえ、その場面で実際に何を加えられるかを考えます。
基本の順序は、なぜその群を後へ残すのかを理解するために使います。別の順序を選ぶ場合も、各群の強さや音域が目的に合っている理由を確認しましょう。
聞こえないほど小さく始められるかを確かめる
弦は、ほとんど聞こえないような非常に弱い音から始めることができます。一方、木管では発音の始まりに、聞こえる程度の輪郭が生まれます。
そのため、どの楽器でも同じように、何もないところから音を現れさせられるとは考えないでください。音が加わったことを明確に聞かせたいのか、気付かないうちに厚くなったようにしたいのかによって、入り方の選択が変わります。
木管の入口が聞こえることは、必ずしも欠点ではありません。新しい色の登場を表情にしたいなら、その輪郭を生かせます。逆に、滑らかさを優先するなら、前後の配分と強弱を慎重に合わせます。
最初の一音を確認するときには、そこだけを見ず、直前の響きと比べます。十分弱い記号があるかではなく、参加したことがどのように聞こえるかが判断になります。
金管の増大を、到達点へつなげる
金管は弦に次いで音量の変化を付けやすい楽器群として説明され、クレッシェンドからスフォルツァンドの頂点へ向かう流れに、とくに効果を持ちます。
ここで重要なのは、金管を加えた瞬間にすべてを使い切らないことです。参加してから頂点までの変化が必要なら、開始時の強さと、その後の余地を考えます。
また、金管が大きくなると、ほかの群との釣り合いも変わります。木管の線を残したいなら、その音域や配分が強い金管の中で役割を保てるかを見直します。
全体の強さが増すことと、すべての声部が同じように聞こえ続けることは別です。頂点で何を主役として聞かせたいかを決め、それに合わせて途中からの配分を整理します。
打楽器は、途中の変化にも最後の打点にも使える
ティンパニ、大太鼓、吊るしたシンバルなどには、非常に小さい音から大きな音まで変化できるものがあります。こうした楽器は、途中からの増大へ参加させる候補になります。
一方、十分小さくできない打楽器でも、最後のアクセントへ参加することができます。すべての打楽器に同じ始まり方を求めず、増大の経過に使うのか、到達点に使うのかを分けます。
大きなクレッシェンドでは、最後の瞬間まで何かを残しておくことが重要です。終点に新しい発音や色が加わることで、そこへ到達したことを明確にできます。
ティンパニ自体の強弱の幅については、ティンパニは、強い一撃以外にどう使える?で説明しています。長い変化の中では、その性格をいつ使うかが主題になります。
ディミヌエンドは、減らす順番を考える
長いディミヌエンドでは、増大とは逆に、金管、木管、弦という方向で楽器を減らしていく方法があります。音量が小さくなると同時に、混合されていた色が単純なものへ戻ります。
ただし、減らす際には、演奏をやめた楽器が何の声部を担っていたかを確認します。重複していた音を取り去る場合と、必要な和声音そのものがなくなる場合は違います。
音量だけを基準に強い楽器から消していくと、和声や旋律の一部が意図せず欠けることがあります。残る群が、必要な音楽の骨格を保てるように配分します。
途中で一声が出入りする自然さについては、フレーズの途中で「一声足す」と、なぜ不自然になる?も関係します。減らすときも、声部の流れとして不自然な途切れがないかを見ます。
最後に消える楽器を、弱音の性格から選ぶ
クラリネットは、ほとんど息の音だけになるほど弱くでき、モレンドに適しています。ディミヌエンドの終点を考える際には、こうした楽器ごとの弱音の性格が重要になります。
最後まで残す楽器を、単にその直前まで鳴っていたからという理由で選ばないでください。どのように消えてほしいか、その終わり方を実現しやすい音色は何かを考えます。
また、残る音が小さくても、周囲に別の強い持続があれば、その消え方は同じようには伝わりません。最後の一つのパートだけでなく、同時に残る響き全体を確認します。
増大では最後に何を加えるかが重要だったように、減衰では最後に何を残すかが重要になります。終点の色から逆に読み直すと、途中で減らす順序も考えやすくなります。
音域の広がりと、音量の増大を同一視しない
和声の音域を広げると、上声と低音の間に空間が生まれます。そこへ声部の重複を加えることで、音域の拡大と音量の増大が結び付く場合があります。
しかし、広がれば必ず大きくなるわけではありません。原典には、木管が演奏をやめ、弦をさらにdivisiすることで、音域が広がりながらディミヌエンドする例も説明されています。
ここから分かるのは、音域、人数、強弱を別々の条件として見たうえで、組み合わせる必要があるということです。高低の距離が広がる動きと、各音を担当する人数が減る動きは、同時に起こり得ます。
複雑な効果を無理に作る前に、何が広がり、何が減っているかを明確にします。音域の図形だけを見て、強弱まで自動的に決めないことが大切です。
三つの時点に分けて、途中の変化を点検する
書き終えたら、始まり、中ほど、終点の三つの響きを比べます。参加している楽器、各声部の重複、音域、強弱がどのように変わったかを確認します。
次に、その間の入口と出口を見ます。新しい群が入るときに意図しない段差がないか、群が去るときに必要な声部まで失われていないかを点検します。
最後に、到達点または消失点の意味を確かめます。最大音量へ行くことだけでなく、そこで何の響きを聞かせたいか、何が最後まで残るかを決めます。
このように考えると、長いクレッシェンドやディミヌエンドは、同じ編成の音量を伸縮させる指示ではなく、音色と声部が時間の中で変化する構成になります。強弱記号と楽器の配分を同じ方向へ働かせ、始まりから終わりまでを一つの表現として組み立てましょう。
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