【会話で学ぶ】ピッツィカートからアルコへ変えるとき、伴奏の音型はどうする?

クマニコル:ピッツィカートの伴奏から弓奏へ変えて、音楽を広げたいです。ヴィオラとコントラバスを、両方とも長い音にすればよいでしょうか?

リムコフ博士:両方を持続音にそろえる必要はない。ヴィオラは細かな動きへ、コントラバスは長い低音へ変える配分もある。弓へ戻すことと、全員を同じ動き方にすることを分けて考えよう。

『セルヴィリア』では、同じアルコでも仕事が違う

第2巻No.89『セルヴィリア』125は、第1巻「弦と木管の重複」で三度・六度の重複例として示される譜例です。ここではその同じ総譜を、伴奏の奏法と役割が変わる場面として読みます。

第2巻No.89『セルヴィリア』125。ヴィオラはピッツィカートから弓奏の細かな音型へ、コントラバスはピッツィカートから持続音へ変わる。
『管弦楽法の基本』第2巻No.89『セルヴィリア』125、原書93頁。画像を押すと拡大できます。

クマニコル:下のほうにある V-le. がヴィオラ、C-b. がコントラバスですね。どちらも最初は pizz. です。

リムコフ博士:冒頭の短い小節を除き、最初の二小節と、その次の小節を比べよう。ヴィオラは初め、休符を挟んで少数の音を上行する。コントラバスは小節頭の四分音符を弾き、そのあとを休む。二つともピッツィカートだが、最初からリズムは同じではない。

クマニコル:その次で、どちらにも arco と書いてあります。

リムコフ博士:そこでヴィオラは細かく上下する音型へ移る。一方、コントラバスは全音符の持続低音になる。同時に弓へ戻しても、中ほどの運動と低音の支えへ仕事を分けられるのじゃ。

パート初めの二小節次の小節
ヴィオラpizz.、p。休符を挟む上行音型arco、mf。細かな上下の動き
コントラバスpizz.、p。小節頭の音と休符arco、p。全音符
分奏チェロの上側p tranquillo。細かな分散音型mf espress.。より長い音価を含む線
分奏チェロの下側p。持続低音p。持続低音を続ける

細かく動く担当を、チェロだけに固定しない

クマニコル:ヴィオラが細かく動き始めたら、チェロの伴奏はどうなりますか?

リムコフ博士:V-c. div. の二段を分けて見よう。上の段は初め、細かな分散音型を奏している。それが次の小節では、先ほどより長い音価を含む、表情を込めた線へ変わる。ヴィオラの変化だけでなく、周囲の動きも組み替わっているのじゃ。

クマニコル:では、ヴィオラがチェロの音を全部そのまま引き継ぐのですか?

リムコフ博士:そこまでは言わない。音型を機械的に受け渡す例としてではなく、どのパートが細かな運動を担うかが変わる例として読もう。ハープにも動きがあり、ヴィオラだけが伴奏の運動を全部受け持つわけではないぞ。

コントラバスは、強くせずに音の長さを変える

クマニコル:弓に戻すところは、全員を強くする合図でもありますか?

リムコフ博士:ヴィオラには mf があるが、コントラバスには引き続き p がある。低音は強弱記号を大きくするのでなく、休符を伴う短い発音から、弓で保つ音へ変わる。この違いを見落とさないことじゃ。

クマニコル:チェロの下側にも、長い低音が残っていますね。

リムコフ博士:そうじゃ。初めの二小節から、分奏チェロの下側が低音を持続している。したがって、コントラバスのアルコで「初めて持続低音が生まれる」と読むのも違う。すでにある持続の支えに、コントラバスも弓奏で加わる変化なのじゃ。

全員の変更を小節線にそろえる必要はない

クマニコル:区切りをはっきりさせるなら、旋律の担当も同じ小節頭で変えますか?

リムコフ博士:第1・第2ヴァイオリンを見てみよう。div. と mf espress. は、ヴィオラやコントラバスの arco より少し前、二小節目の終わりに現れる。旋律側の変化が先に始まり、次の小節で下の弦の奏法と音型が変わる。総譜全体を縦に見ると、この時間差が分かる。

クマニコル:「ここから盛り上げる」と思っても、すべてを同じ瞬間に切り替える必要はないのですね。

リムコフ博士:その通り。ただし、この順序をあらゆる曲の規則にしてはいけない。旋律のフレーズと伴奏の切れ目に合っているかを見て、どの変化を先に聴かせるかを判断するのじゃ。

編曲では「動き」と「持続」を別々に割り振る

クマニコル:自分の編曲で、両方を持続音にする案と、役割を分ける案をどう選べばよいでしょう?

リムコフ博士:切り替えたあとにも細かな運動を残したいなら、誰がそれを担うかを先に決めよう。そのうえで低音を長く保ちたいなら、この例のようにヴィオラは運動、コントラバスは持続という案が考えられる。両方を長い音へ変える案では、ほかのパートに必要な動きが残るかを確かめるのじゃ。

クマニコル:新しい音型を足すだけでなく、それまで細かく動いていたチェロも見直すのですね。

リムコフ博士:そうじゃ。すべての動きを残してさらに足すのか、一部の役割を変えるのかで、できあがる伴奏は違う。まず切り替えの前後をそれぞれ読み、細かく動く線、長く支える線、旋律の三つを区別しよう。

クマニコル:arco と書いたあとの仕事まで決めると、奏法の変更が編曲の変化になるのですね。

出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦と木管の重複」、第2巻No.89。奏法・音価・強弱・変更の位置は掲載譜例の分析です。編曲時の比較手順は学習上の補足であり、原典本文に記された一律の規則ではありません。

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