【会話で学ぶ】シンバルのロールは必ずクレッシェンド?弱い持続を添える方法
クマニコル:シンバルのロールを入れると、どうしても盛り上がる方向へ書いてしまいます。静かな旋律に添えるだけでも使えますか?
リムコフ博士:使える。音を持続させることと、次第に大きくすることは別の指定じゃ。『金鶏』には、シンバルを pp のトレモロで続ける例がある。ロールだから必ずクレッシェンド、とは考えなくてよい。
『金鶏』No.92では、ppのシンバルが途中から加わる
『管弦楽法の基本』第2巻No.92は『金鶏』の練習番号98です。第1巻ではヴィオラとホルンによる旋律の重複例として参照されています。ここでは、同じ総譜の「Piatti(シンバル)」に注目します。

クマニコル:シンバルの最初の小節は休みで、二小節目に pp と tr がありますね。
リムコフ博士:そうじゃ。長い音符にトレモロの指定があり、次の小節へ結ばれている。掲載された四小節のシンバルには、クレッシェンドの記号はない。音を続けることを、音量を増していくことに読み替えないようにしよう。
旋律、和音、細かな伴奏を、それぞれ残す
クマニコル:シンバルが入ったら、ほかの伴奏も同じように音を伸ばすのでしょうか?
リムコフ博士:この例ではそうなっていない。ホルンIとヴィオラが旋律を受け持ち、ホルンII・III・IVには pp の和音がある。その下でチェロは八分音符の動きを続ける。旋律、和音の支え、細かな運動に、シンバルの持続が加わるのじゃ。
| 譜例の楽器 | 注目する動き |
|---|---|
| ホルンI・ヴィオラ | 長い音を含む旋律 |
| ホルンII・III・IV | ppで支える和音 |
| チェロ | 八分音符による連続した動き |
| シンバル | 第2小節から加わるppのトレモロ |
クマニコル:ハープや高い木管にも、違う動きがあります。
リムコフ博士:ハープは交代でグリッサンドを入れ、高い木管には短い細かな音型がある。それらの発音をシンバルが一つずつなぞっているわけではない。瞬間的な動きと、間をつなぐ持続とを分けて読もう。
ロールの終わりに、強い一撃を足す必要はない
クマニコル:ロールの終わりは、大きな一撃で締めたくなります。ここもそうですか?
リムコフ博士:譜面の右端を見よう。シンバルは最後の小節の途中まで続き、その後に休符がある。ここには強い終止の打点も、ff への変更も書かれていない。続けた響きを離すことも、終わり方の一つなのじゃ。
クマニコル:入るときも、終わるときも、山場を作る必要はないのですね。
リムコフ博士:その通り。色を添えるための持続を、毎回「到達点へ向かう効果」に変える必要はない。逆に、実際に盛り上げたい場面なら、強弱の変化と、その行き先を別に決めることになる。
自分の編曲では「何を続け、何を変えるか」を決める
クマニコル:同じ方法を試すときは、まず何を確認すればよいでしょう?
リムコフ博士:まず、旋律と和声と動く伴奏だけで、その部分が成立しているかを確認しよう。そのうえで、シンバルに必要なのが静かな響きの継続なのか、音量の増大なのかを分ける。この確認順は、自作に応用するときの学習上の提案じゃ。
クマニコル:弱い持続なら、どこから加え、どこで休むかを考えるのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。No.92でも冒頭から全員を同時に入れず、シンバルは一小節休んでいる。ただし「必ず一小節待つ」という規則ではない。旋律の入りを先に聞かせる案と、最初から持続を添える案では、冒頭の配分が違う。どちらが必要かを考えよう。
クマニコル:pp と書けば、どんな編成でも旋律を邪魔しませんか?
リムコフ博士:強弱記号だけでは保証できない。ここではホルンの和音も pp で、周囲の楽器にも弱い指定がある。自作では、実際の旋律や伴奏との関係を確かめよう。原典も強い打楽器のトレモロには全奏を上回り得る力があると述べている。静かな持続を望むのに、習慣で大きくしてしまわないことが肝心じゃ。
クマニコル:ロールを入れるかどうかと、クレッシェンドさせるかどうかを別々に決められそうです。
出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦と金管の重複」「リズムの強調や色彩感を増すための打楽器の使用」、第2巻No.92。シンバルの入り・持続・終わり方は掲載譜例の分析です。自作での点検手順は学習上の補足です。ここでは当該四小節を扱い、作品全体の強弱については断定していません。
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