チェロとコントラバスの低音に、ファゴットを足すと?

チェロとコントラバスで低音を作った後、さらにファゴットを加える。よくある組み合わせですが、ファゴットをどの高さへ置くかによって、響きのまとまり方は変わります。「低い楽器だから、いちばん下を補強する」とは限りません。

低音の旋律に甘く柔らかな色を加えたいなら、チェロとコントラバスをオクターブにし、ファゴットはチェロと同じ高さに重ねる方法があります。最も低い音を増やすのではなく、上側の低音を混合音色にするのが、この配置の要点です。

まず、二層の低音を見分ける

チェロとコントラバスは、低音をオクターブで重ねる基本的な組み合わせです。チェロが一つの線を奏し、その一オクターブ下をコントラバスが支えます。同じ旋律の動きを共有しながら、上下二つの高さで低音を作っています。

ここへファゴットを加えるとき、三つ目の高さを作る必要はありません。チェロと同じ音をファゴットに与えれば、上の層はチェロとファゴット、下の層はコントラバスになります。楽器は三種類ですが、オクターブの層は二つのままです。

この違いを押さえておきましょう。低音楽器が三種類いることと、低音を三つのオクターブに広げることは同じではありません。今回の配置は、範囲をむやみに拡大するのではなく、既にある上の層の音色を変える方法です。

上にチェロとファゴット、下にコントラバス

配置を上から読むと、「チェロとファゴットのユニゾン、その一オクターブ下にコントラバス」となります。上の二つが同じ高さの音を受け持ち、下のコントラバスが低い土台を作ります。まずこの役割分担をはっきりさせます。

ファゴットの参加によって、低音の旋律に甘く柔らかい音色を得られます。低音を強くしたいときには、つい最下部の人数や厚さばかり増やしたくなりますが、この方法では、上側にある旋律の色を整えることが重要になります。

そのため、同じ三種類の楽器を使っていても、ファゴットを下へ移した配置とは区別して考えます。楽器名の一覧が同じでも、どの音を誰が共有するかが違えば、同じ組み合わせとはいえません。総譜では、段の数だけでなく、実際の高さを見てください。

弦と木管が、互いの音色を変える

この配置の上側では、弦と木管のユニゾンができています。一般に木管は弦の響きや音色を増強し、弦は木管の音質を柔らかくします。ファゴットを足すことは、チェロと同じ旋律をもう一本置くだけでなく、両者の混合音色を作ることなのです。

弦と木管の力が等しい場合には、弦の性格が優勢になります。チェロとファゴットは、その例として考えられる組み合わせです。ファゴットの存在が独奏のように前へ出なくても、チェロの線に働きかける意味があります。

ただし、木管を何本も重ねれば、同じ関係がそのまま続くとは限りません。複数の木管が弦の一セクションとユニゾンになると、木管側の性格が優勢になり得ます。一本を添える発想と、木管をまとめて加える発想は分けてください。

柔らかい低音にも、動きのある低音にも使える

この組み合わせを、ゆっくり歌う低音専用と考える必要はありません。ベースラインが活発に動く場合にも、よく用いられます。ファゴットを加えることで、低音の線に刺激的な性格を与えることができます。

同じ配置でも、長く歌う旋律なら甘さや柔らかさに注目でき、活発な動きなら、その線の生き生きした性格に注目できます。楽器の組み合わせだけで曲調が一つに決まるわけではなく、旋律の動きと結び付けて考える必要があります。

たとえば、細かな動きを持つチェロの低音をファゴットで重ねる場合、単に低音の総量を増すのではなく、その動く線をどんな性格にしたいのかを考えます。低音を厚くすることと、低音の動きを印象付けることを分けると、追加の目的が明確になります。

ファゴットを加える理由を「低音が弱いから」だけで終えない。 甘くしたいのか、線の動きを刺激的にしたいのかを言葉にすれば、同じ低音楽器を使っても、狙っている効果を確かめやすくなります。

コントラファゴットがない編成では

コントラファゴットを含まない木管編成では、超低音域をコントラバスに任せることになります。その場合、チェロと同じ高さをファゴットで重ね、いちばん下はコントラバスが受け持つという配置が、音域の条件から自然に必要になることもあります。

ここでは、すべての高さに同じ種類の楽器をそろえようとしないことが大切です。上に弦と木管がいるから、下にも必ず弦と木管を置かなければならない、という決まりはありません。使える楽器と、その楽器が受け持つ範囲を見ます。

上と下の編成が左右対称でなくても、役割が整理されていれば、低音として考えることができます。見た目を均等にするために別の楽器を足すより、上の混合音色と下の低い支えが、それぞれ何をしているかを理解する方が役立ちます。

コントラファゴットへの置き換えは、単なる拡張ではない

では、コントラファゴットが使えるなら、いつでも加えた方がよいのでしょうか。そう単純には考えられません。コントラファゴットは、ファゴットよりもはるかに唸るような音色を強調するため、使う機会を選びます。

ファゴットを加えて低音の線に柔らかさや活気を求めていたところへ、コントラファゴットを入れれば、同じ効果が下まで延びるだけではありません。音色そのものの性格が変わります。低い楽器ほど、元の楽器の効果をそのまま深くするとは限らないのです。

したがって、コントラファゴットの有無は、編成の充実度だけの問題ではありません。欲しいのがファゴットを含む上の線の性格なのか、より唸るような低い色なのかを分けて考えます。後者が必要な場所なら、その特徴を意図して使うことになります。

コントラバスまで同じ細かさで動かす必要はあるか

チェロとコントラバスのオクターブ重複では、場合によってコントラバスのパートを単純化することがあります。上の線をすべて同じ細かさで下へ写すことだけが、低音を重ねる方法ではありません。

これは、活発な低音にファゴットを加える場合にも考える価値があります。チェロとファゴットが上側で動きを受け持つ一方、コントラバスはより単純な形で低い支えを保つ、という役割の分け方が考えられます。

ただし、単純化すればいつでもよいわけではありません。主となる線が最も目立つように、全体のバランスを整える必要があります。下の音を残す場所や、その強さによって、聞こえの中心が変わらないかを確認してください。

重複する声部のリズムを変えて透明さを保つ考え方は、楽器を足したのに個性が薄くなる理由で詳しく扱っています。ここでは、低音三種類を使っていても、三者が常に完全に同じ形で動く必要はない、と押さえておきましょう。

別のオクターブを足す前に、音色を考える

低音をもっと充実させたいとき、チェロとコントラバスの上へさらにヴィオラを加え、三つの高さでベースラインをなぞりたくなることがあります。しかし、そうした重複は低音を本当に重くしたい場面に向くもので、通常の補強とは区別が必要です。

今回のファゴットの追加は、それとは違います。チェロの高さを共有するため、旋律が占めるオクターブの層を増やさずに、上側の音色を変えます。より広い範囲を埋めることと、同じ高さの響きを豊かにすることは、別の手段なのです。

厚さの不足を感じたときには、どの不足なのかを考えてください。低い支えそのものが欲しいのか、チェロの旋律に別の色が欲しいのか、ベースラインを特別に重くしたいのか。それぞれで、適切な重ね方は変わります。

オクターブを増やす判断については、低音を何オクターブも重ねてよいかを参照してください。このページの中心は、音域を広げることよりも、チェロの高さにファゴットを加える意味にあります。

楽譜で確認するときの順序

まず、チェロとコントラバスがどの高さで低音を作っているかを確認します。オクターブの関係を見たうえで、ファゴットがどちらを重ねているかを追います。楽器が三つある、という見方から、上下二層の役割を見る読み方へ切り替えます。

次に、上側の線が長く歌うのか、活発に動くのかを見ます。その動きに対して、ファゴットの参加で何を得たいのかを考えてください。甘さや柔らかさと、動きの刺激的な性格は、旋律に応じて注目するところが違います。

そして、下のコントラバスが同じ細かさで動く必要があるかを確かめます。単純化する場合も、主となる線とのつながりを保ちます。最後に、さらに低い木管や別のオクターブを加える必要が本当にあるかを判断しましょう。

チェロ、コントラバス、ファゴットは、低音を作る便利な組み合わせです。ただし、その便利さは「低い楽器をまとめて鳴らせばよい」という意味ではありません。上の線の色を作る楽器と、下の深さを支える楽器を分けて考えることで、この組み合わせを意図して使えるようになります。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:複数の楽器群の組み合わせによるメロディ。弦のオクターブ重複については「弦楽器群による旋律」の節も参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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