全部合わせれば和音なのに、なぜ響きが空虚になる?

木管と弦を全部合わせれば、和音の構成音はそろっている。それなのに、木管だけが空っぽに聞こえたり、上下が別々に鳴っているように感じられたりすることがあります。

原因の一つは、和音を音名の合計だけで考えていることです。異なる楽器群の音は、必ずしも同じ距離感で一つにまとまりません。全体の構成音を確認した後、それぞれの音色群がどんな和声を作っているかも見る必要があります。

和音の音名がそろうことと、一つに聞こえること

ある和音に必要な音が、オーケストラ全体のどこかに存在している。それは和声を作るための重要な条件ですが、響きの配置としては、まだ確認することが残っています。

どの音をどの楽器群が担当するかによって、聞こえのまとまりは変わります。木管に欠けた要素を弦へ置けば、木管自身の空虚さがそのまま消えるとは限りません。二つの色が、同じ場所にある音として聞こえるとは限らないからです。

ここでは、音を追加する前に、和音を楽器群ごとに分けて見ます。木管だけ、弦だけで、どのような音の組み合わせになっているかを確認することが、原因を見つける手掛かりになります。

上三声を木管、バスを弦に任せる場合

よくある配置の一つが、和声の上三声を木管へ、バスを別の楽器群へ任せる形です。弦のアルコやピッツィカートが、低い線を受け持つこともあります。

このとき、木管の三声は、バスの助けを借りなくても、和声としてまとまりを持っていることが重要です。全体の最低音を木管で必ず鳴らすという意味ではなく、木管の三声の組み合わせ自体を充実させるということです。

そうすることで、木管の中が空虚な四度や五度の関係だけになってしまうのを防ぎます。バスを弦へ任せるという役割分担と、木管側の和声が欠けたままになることを混同しないでください。

「それだけで完結」とは、全音を各群へ写すことか

各音色群の和声を、それだけでまとまりのあるものにする、と聞くと、すべての群へ和音の全構成音を重ねるべきだと思うかもしれません。しかし、常に全員へ同じ和音を配るという意味ではありません。

上三声を木管、バスを弦へ任せる配置自体が成立する以上、役割を分担する余地はあります。大切なのは、各群が担当する部分が、その役割に合うまとまりを持つことです。

全部の群で同じ和音を重ねれば、厚さや重さも変わります。空虚さを避けるために、いつでも全楽器を重複させるのではなく、必要な声部をどの音色が受け持つかを整えます。

木管が中間の二声だけを受け持つ場合

バスだけでなく、いちばん上の声部も弦へ任せると、木管は中間の二声を受け持つことになります。この場合も、木管の二音が、それだけである程度まとまっていることが望まれます。

そのための音程として、二度、七度、三度、六度という関係が挙げられます。二つの音しかないときにも、どの関係を一つの音色群に持たせるかを考える必要があります。

ここから、各群に必ず三音以上必要だと考える必要はありません。二声の役割なら、二声としての充実した関係を作ります。音の数を増やすことより、担当している音同士の意味を見ることが大切です。

声部の配分を、二つの典型で比べる

次の表は、木管と別の楽器群で和声を分担するときの、確認の違いを整理したものです。すべてを一つの編成へ固定する表ではなく、担当が変わると見るべき場所も変わることを示しています。

分担木管の役割木管だけで確認する点
上三声を木管、バスを別の群和声の上側を構成するバスの助けだけに頼らず、三声にまとまりがあるか
最高声とバスを弦、内声を木管中間の二声を受け持つ二度・七度・三度・六度など、二声としての関係を考える
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』の木管の和声の節をもとに整理。

上の声部まで木管が担当する場合と、木管が内側だけを担当する場合では、木管に求める役割が違います。それでも共通するのは、木管が奏する部分を、独立に確かめる必要があるという点です。

全体を合算した和音だけ見ていると、この違いは見えにくくなります。総譜を楽器群ごとに読むことで、どのまとまりに不足があるかを具体的に考えられます。

別の音色へ置いた一音が、同じように埋めるとは限らない

ある楽器群の和音が不完全なとき、その欠けた音を別の群へ置いても、同じ距離感で聞こえるとは限りません。音色が違うことで、音のまとまりが分かれて感じられる場合があります。

たとえば、木管が作っている響きに必要な関係を、遠い低音の弦だけへ任せた場合、全体の音名はそろっていても、木管自身の性格は変わらないことがあります。音の所在と、音色のまとまりは別の条件なのです。

これは、異なる楽器群を組み合わせてはいけないという意味ではありません。組み合わせるからこそ、各群の中で何が鳴っているかを確認します。まとまりのない部分を、別の色が自動的に補修してくれると期待しないことが重要です。

音域の隙間も、同時に点検する

音色群の中身に加えて、上声と低声の距離も確認します。特にフォルテで、上と下が大きく離れ、中間が空いている配置は、空虚な和音を作る原因になります。

その場合、構成音を別の群へ移すだけでは、音域の穴が残ることがあります。どの音色に何を配るかという問題と、どの高さに置くかという問題を、両方考える必要があります。

広い音域の和音では、低音側を広く、高音側を狭くする並びが指針になります。配置そのものの考え方は、低音と高音で和音の間隔を変える理由で説明しています。

ピアノ譜からの移し替えで起きやすいこと

ピアノの右手を木管、左手を弦へ配れば、元の音をすべて使うことはできます。しかし、右手と左手のまとまりが、そのまま二つの音色群として適切とは限りません。

ピアノでは上三声とバスが一オクターブ以上離れることも多いため、中間の配置を見直す必要があります。それに加えて、各群に残った和声がまとまりを持つかも確認します。

この二つを見ないまま、元の音符を割り振ったことだけで完成とすると、音が増えても空虚さが残る場合があります。移し替えの具体的な確認は、ピアノ譜を管弦楽にすると中間が空く理由を参照してください。

均一な背景を作るなら、木管内部の配置も整える

木管の和声を一つの背景として聞かせたいなら、密集した配置が基本になります。音同士が離れるほど、別々の音色として聞こえやすくなるためです。

さらに、声部ごとの重複を平等にし、各楽器の対応する声区を使います。一声だけを二本で重ねたり、一音だけが強くよく通る声区にあったりすれば、木管内部にも別の偏りが生まれます。

したがって、木管だけで構成音を整えた後も、釣り合いの確認は必要です。和声のまとまり、音域の配置、各声部の力を、段階を分けて点検していきます。

全員を同じ音色にすれば解決するわけではない

異なる音色の組み合わせが難しいからといって、すべてを一種類の楽器へ任せればよいわけではありません。編成には本数の条件があり、各楽器には適した音域があります。

二管編成では、同じ種類だけで三声の和音を作れないため、複数の音色を組み合わせる必要があります。堆積、交叉、囲い込みといった配置の工夫を使い、声区や進行も合わせて考えます。

大切なのは、音色の違いを避けることではなく、その違いを含めてまとまりを設計することです。木管の並べ方は、三つの配置法についての記事で原図とともに解説しています。

長く続く和声と、孤立した短い和音を分ける

ここまでの基本は、持続する和音にも、連続して移り変わる和声にも関わります。長く聞こえる響きや、つながって進む和音では、配置と各声部の進行が重要になります。

一方、休符によってはっきり区切られた短い和音では、配置や音色の組み合わせ、声部進行の重要性は比較的低くなります。一瞬のアクセントとしての性格が強くなるためです。

短く孤立した和音で成り立った配分を、そのまま長い背景へ移さないことが大切です。音の構成が同じでも、持続時間と前後のつながりが変われば、聞こえの条件は変わります。

空虚さを感じたときの、切り分け方

まず、全体の和声の基本声部を確認します。次に、木管、弦などの群ごとに、何の音が残るかを見ます。どの群がバスを受け持ち、どこが上三声や内声を担当しているかを整理してください。

そのうえで、各群の中の音程関係を調べます。欠けた要素を、別の群が持っているという理由だけで済ませていないかを確認します。木管が二声だけなら、二声としてのまとまりを見ます。

次に、上と下の距離や、途中の音域の隙間を確認します。最後に、各声部の本数、声区、進行を見ます。音色の問題、配置の問題、声部の問題を、一つずつ分けると修正の目的が明確になります。

足す前に、今ある音をどう配っているかを見る

響きが空虚だと、さらに楽器や音を追加したくなります。しかし、すでに必要な構成音があるなら、問題は数ではなく、割り振りにあるかもしれません。

その場合は、各群が作っている和声へ目を向けます。単に全体を厚くするのではなく、どのまとまりが不足しているかを見つけてから、必要な変更を考えます。

全部合わせれば和音になる、という確認は出発点です。その和音が、実際に聞こえる音色のまとまりごとにどう成り立っているかを確かめること。 ここまで見ることで、音名はそろっているのに空虚に感じる問題へ、具体的に取り組めるようになります。


複数の楽器群で和声を作る考え方は、『管弦楽法の基本』の書籍版・PDF版で詳しく読めます。

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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:木管楽器による多声部に渡る和声、重複による音色の混合、その他補足。和音の配置については第三章の概論、木管内部の声区と重複は木管の概論も参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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