合唱を三声・四声に分けるとき、和音のバランスをどう保つ?

合唱の和音を充実させようとして声部を増やしたのに、かえって中身が薄く感じられる。そんなときは、和音の音数だけでなく、誰がどの音を受け持っているかを見直します。

声部を増やすことと、響きを充実させることは同じではありません。divisiによって一つのパートを分けると、各線を歌う人数は減ります。その変化を踏まえながら、旋律と和声の役割を配分する必要があります。リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』の合唱の考え方から、整理してみましょう。

混声合唱の四声は、広く配置できる

ソプラノ、アルト、テノール、バスがそれぞれ和声の一声部を担う混声合唱では、音をある程度離した解離配置が自然な出発点になります。各声部が自分の声域を生かせるため、広い範囲にわたって均一でよく響く和音を作りやすいからです。

これは、どんな場面でも間隔を広げればよいという意味ではありません。四つの声部が異なる高さを得意とするため、その違いに沿って和音を配分できる、ということです。ピアノで押さえやすい密集した和音を、そのまま四人分の歌の位置として決めないようにしましょう。

また、合唱が純粋に和声を担当し、旋律はオーケストラが受け持つ場面も考えられます。合唱の一番上の線が、いつも主旋律でなければならないわけではありません。和音として支える場面では、特定の一声部だけを目立たせるより、全体の釣り合いが重要になります。

密集した強い和音には、分割と重複を組み合わせる

混声合唱で密集した配置の強奏を求める場合には、四声をただ狭い範囲に押し込む以外の方法があります。ソプラノを二つ、テノールを二つ、バスを二つに分け、アルトは一つのままにする配分です。

上側には第一ソプラノ、第二ソプラノ、アルトの三声を置きます。その一オクターブ下を、第一テノール、第二テノール、第一バスがそれぞれ重複します。さらに第二バスが、独立した最下声を受け持ちます。

譜面上は七つに分かれますが、七本すべてが別々の材料を歌うわけではありません。上の三声を下の三声で補強し、低音を別に支える構造です。パートの数だけでなく、独立した線と重複する線を区別すると、この配分の狙いが見えてきます。

この形をあらゆる強奏の定型にする必要はありません。密集した響きが必要な場面で、各声部の自然な高さと補強の関係を両立させる一つの方法として理解すると役立ちます。

男声だけ・女声だけでは、配置の条件が変わる

混声合唱で自然だった広い四声配置を、女声だけ、男声だけの合唱へそのまま移すことはできません。近い音域と音色の声で和音を作るため、上下を広げすぎると、上の声部は高すぎ、下の声部は低すぎる位置に追い込まれるからです。

女声の四声ならソプラノを二つ、アルトを二つに分け、男声の四声ならテノールを二つ、バスを二つに分けます。この場合には、密集した配置が扱いやすくなります。

一方、三声で上声部が旋律を受け持つ場合には、密集配置だけでなく解離配置も使えます。和声だけに徹するのか、上の旋律を中心に組み立てるのかで、考え方が少し変わります。四声と三声を一括して、必ず狭く、あるいは必ず広くと決めないことが大切です。

男声や女声だけの和声では、四声を常に保つより三声で進むことも多く、場合によっては二声に減らす方がよいこともあります。欠けた音を機械的に埋めるより、その編成で整った響きになる声部数を選びましょう。

三声にするなら、どちらのパートを分けるか

女声を三声に分ける場合、第一ソプラノ・第二ソプラノ・アルトという組み合わせと、ソプラノ・第一アルト・第二アルトという組み合わせがあります。男声なら、テノールを二つに分けるか、バスを二つに分けるかという違いになります。

選ぶ基準は、どこを主役にしたいか、どの音域を使いたいかです。曲の初めにソプラノを分けたからといって、最後までその分け方を固定する必要はありません。旋律の位置や和声の進み方に応じて交代できます。

ここで人数を等分することだけを考えると、実際の響きの役割が見えにくくなります。上の線を明瞭にしたいのか、中を満たしたいのか、低い支えを保ちたいのか。三つに分ける前に、その場面で不足させたくない部分を確かめます。

分け方を変えることは、声部数を変えることとは別です。同じ三声でも、どの声の組み合わせで三本を作るかを変えれば、旋律と和声の釣り合いを調整できます。

中声部の補強は、旋律の補強とは別の仕事

三声の中央を強めたいときには、女声なら第一ソプラノを上、第二ソプラノと第一アルトを中央、第二アルトを下に置く方法があります。男声なら、第一テノールを上、第二テノールと第一バスを中央、第二バスを下に置く形です。

四つのグループを作りながら、実際の和声は三声にし、中央の音を二つのグループで支えています。これは上の旋律に人数を集める方法とは目的が異なります。上だけがよく聞こえても、和声の内部が十分に鳴るとは限らないからです。

目立つ旋律が欲しいのか、満ちた和音が欲しいのかを混同しないことがポイントです。どちらも必要な場面では、その両方が成立するように配分を考えます。

実際の人数や音量の調整には合唱を指導する側の働きも関わります。ただ、作曲する側が中声部の役割を考えなくてよいわけではありません。譜面の段階で意図を明確にし、どの線の補強が和音を支えているのかを把握しておきましょう。

旋律が上がったら、同じ配分を移調しない

同じフレーズを高い調で繰り返すとき、すべての声部をそのまま平行に上げれば済むとは限りません。最初はソプラノとアルトが一緒に旋律を歌い、テノールとバスが分割して和声を作っていたとします。

繰り返しで旋律が高くなれば、旋律をソプラノだけに任せ、アルトを和声へ移す方がよい場合があります。その変更に伴って、テノールとバスの分割も見直します。同じ音楽を保つために、かえって各パートの仕事を変えるわけです。

このように、音の高さが変わると、旋律を補強できる声部も、和音を自然に受け持てる声部も変わります。編成表だけを固定し、音符だけを上げ下げする方法では、繰り返しの響きが不均衡になることがあります。

旋律をどの組み合わせで重ねるかは、合唱のユニゾンとオクターブの記事で詳しく説明しています。そこで選んだ旋律の配分を前提に、残る声部で和声を組み直していきます。

声部を増やすなら、終わりの和音も先に考える

多声的な進行で声部を次々に増やす場合、入り口だけを考えると、最後に各声部がどこへ収まるかが曖昧になります。必要な数までdivisiを増やすときも、最終和音や頂点の配置を見通しておくことが大切です。

最後の声部が入ったあとは、各線を終着点へどう導くかを意識します。声部が増えた勢いだけで交差を繰り返すのではなく、自然な声域の順序を基本に保ちます。短い交差は特定の旋律や言葉の表現を強調するために使えますが、配置の整理を後回しにするための手段にはしません。

分割が増えても、一つひとつの声部が納得できる進行を持っていることが必要です。不協和音が適切に準備され、各線が明確に進めば、難しい転調にも取り組みやすくなります。逆に、声部進行の問題を人数や練習だけで補うことはできません。

合唱だけの低音と、音楽全体の低音を区別する

女声合唱に伴奏が付く場合、合唱の最も低い線が、そのまま音楽全体のバス声部になるとは限りません。女声合唱が和声の上側を受け持ち、低音の土台は伴奏に任せる考え方があります。

この区別を忘れると、合唱だけを見て音が足りないと判断し、不要な低い声部を加えてしまうかもしれません。反対に、伴奏に低音があるから歌の和音はどう並べてもよい、と考えるのも適切ではありません。歌だけで生まれる音程の関係も確認する必要があります。

まず各声部の自然な進行を整え、次に歌の中の釣り合いを確かめ、最後に伴奏を含む役割を見る。この順番なら、声部を増やすか減らすかも、和音を支えるための具体的な選択になります。

同じ人数でも、全員が歌い続ける必要はない

混声合唱の中で男声を休ませれば女声合唱になり、女声を休ませれば男声合唱になります。編成そのものを変更しなくても、場面ごとに使う声のまとまりを切り替えられます。三声や四声への分割は、この切り替えと合わせて考えることもできます。

女声だけの三声から混声の四声へ移るときは、単に一声部を追加するのではありません。響きの範囲も、和音を置きやすい位置も変わります。女声だけの場面で必要だった分割を、そのまま混声の場面まで引き継ぐ必要があるか、いったん見直します。

また、分割によって各線の人数は減りますが、合唱では人数の配分や歌い方を調整して均衡を整える余地があります。この柔軟さを生かしつつ、常に最大の声部数を保つのではなく、場面の役割に合ったまとまりを作りましょう。


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