【会話で学ぶ】柔らかい旋律の伴奏にトロンボーンを使うには?弱奏の和声配分
旋律を柔らかく歌わせたいので、トロンボーンは休ませている。でも、いつも弦と木管だけでは伴奏の選択が狭く感じる――そんな迷いを、原典の《雪娘》の例から考えます。
クマニコル:博士、柔らかい旋律の伴奏には、トロンボーンを使わない方がよいでしょうか。入れた途端に堂々とした場面へ変わりそうです。
リムコフ博士:クマ君、トロンボーンの強奏の印象だけで決めていないかな。フォルテでは力強く堂々とするけれど、ピアノでは豊かで、いくらか重みを持った響きになる。いつも強く鳴らすための楽器ではないよ。
クマニコル:では、主役を歌わせながら、その後ろに置くこともできるんですね。
リムコフ博士:できる。《雪娘》の練習番号231には、三本のトロンボーンが柔らかく甘い音で和声の骨格を作る例がある。トロンボーンに旋律を大きく吹かせる場面とは、仕事が違うんだ。
旋律を重ねるのではなく、和声を受け持つ
クマニコル:そのトロンボーンは、ほかの楽器の旋律を一緒になぞっているのですか。
リムコフ博士:ここで注目しているのは和声の役だよ。同じ練習番号の箇所は、チェロが第一クラリネットを模倣するcantabile ed espressivoの例としても挙がっている。旋律の線と、それを支える金管の和声という、違う仕事を見分けよう。
原典本文が《雪娘》練習番号231について挙げる二つの参照点です。全パートの音符や全区間の同時関係を再現した表ではありません。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 歌う旋律の参照点 | 練習番号231の5小節目。チェロがA弦で、第一クラリネットを模倣。cantabile ed espressivo。 |
| 和声の参照点 | 練習番号231。三本のトロンボーンによる、柔らかく甘い和声の骨格。 |


リムコフ博士:No.8の前半では、Tr-bni. e Tubaの段で和声の骨格を確認できる。続くページでは、クラリネットのSoloと、それを追うチェロのdolce cantabile ed espress.を見よう。ただし前半の金管にはmfやfの指定もあり、譜例全体が一様な弱奏なのではない。旋律が受け渡される場所と、金管が和声を支える場所を分けて読むことが大切だね。
クマニコル:金管を加えるといっても、チェロと同じ旋律を強めるのとは違うんですね。
リムコフ博士:そう。旋律と和声を分担する案なら、二つの音色が完全に一つへ溶けることを最初から目標にしなくてよい。どの線を歌として聴かせ、どの音を背景の和声にするかを先に決めるんだ。
柔らかい音でも、重みは残る
クマニコル:弱く指定すれば、トロンボーンの重さも消えると思ってよいですか。
リムコフ博士:そこは分けよう。弱奏でも、豊かさといくらかの重みは残る。軽く薄い背景が欲しいときと、柔らかくても充実した背景が欲しいときでは、同じ楽器が適するとは限らない。
クマニコル:僕が欲しいのは、細い飾りではなく、歌う旋律の後ろに静かに残る和声です。
リムコフ博士:それなら、この例は検討する手掛かりになるね。ただし、トロンボーンが柔らかく鳴ることと、いまの旋律を覆わないことは、別に確認しなければならない。
クマニコル:三本を同じ強弱にそろえただけでは、まだ十分ではないのですね。
リムコフ博士:うん。和声の音域や配置、旋律との釣り合いまで見る。旋律の表情が聴き取れなければ、弱い記号を書いたという理由だけで、その伴奏を採用することはできないよ。
トロンボーン3本で三声の伴奏和音を作る
クマニコル:三本のトロンボーンには、何を分担させると考えればよいですか。
リムコフ博士:金管の三声では、同じ種類の楽器を三本使う形がよい出発点になる。三本すべてを一本の線へ重ねるのではなく、それぞれが和声の声部を持つ考え方だね。
クマニコル:三本いるから三倍に補強する、という考えではないんですね。
リムコフ博士:そう。音色のそろった三声として、和声を形作れる。ただし、三本へ音を一つずつ配れば完成という意味ではない。各声部の進行と、音の間に大きな隙間ができていないかも確かめよう。
クマニコル:ホルンや木管を重ねて、さらに柔らかくする必要はありますか。
リムコフ博士:柔らかくしたいというだけで、追加を必須にしなくてよい。この例が示しているのは、トロンボーン自体にも柔らかく甘い和声を受け持つ使い方があることだ。まず、その三声の色が場面に合うかを考える。
使えるかどうかを、強奏の印象だけで決めない
クマニコル:静かな旋律だからトロンボーンは除外、としていました。でも、旋律をなぞらず、和声を分担させるなら別の選択になりますね。
リムコフ博士:うん。今回の答えは、柔らかな旋律の伴奏にも使える、ただし弱奏でも残る豊かさと重みを含めて選ぶ、ということだ。強い金管の印象だけで候補から外さず、和声の役を与えたときの響きを考えてみよう。
同じ旋律を弦と金管で重ねる場合は、「弦と金管を同じ音にしても、一つの音色にならない?」で、別の問題として説明しています。
出典:『管弦楽法の基本』第一章「金管楽器」、第二章「メロディ」チェロの項、第三章「金管楽器による和声」。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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