木管の和音で、一つの音だけ飛び出すのはなぜ?
木管で背景の和音を鳴らしたいのに、一つの音だけが旋律のように前へ出る。強弱記号をそろえても、和音が平らなまとまりにならない。そんなときは、まず、その音だけを複数の楽器で重ねていないか確認してください。
木管の和声では、各声部を平等に扱うことが、響きを一体にする基本です。一声だけを重複すれば、その声部へ注意が集まりやすくなります。 均一な背景を作るのか、特定の線を際立たせるのかを、最初に分けて考えましょう。
背景の和音と、目立たせる声部は役割が違う
和声を一つの背景として聞かせたいときには、どこかの声部が理由なく突出しないことが重要です。各音が一つのまとまりとして働けば、聞き手の注意を旋律から奪いにくくなります。
一方、和音の中のある声部を目立たせたいなら、その声部だけを重ねることには意味があります。重複の偏り自体が、いつでも誤りなのではありません。意図せず生まれた強調なのか、必要な強調なのかを区別します。
問題になるのは、背景を作るつもりなのに、一つの音へだけ補強を集めている場合です。総譜に同じ強弱記号が付いていても、楽器の配分は平等ではないことがあります。
まず、各音に何本の楽器が付いているか数える
三つの声部からなる和音で、二つの声部は一本ずつ、残りの一声だけは二本の楽器で演奏していると考えてみましょう。和音の音名は三つでも、それぞれの音を受け持つ条件はそろっていません。
そのため、楽器の総数だけでなく、声部ごとの担当数を見る必要があります。四本の木管を使っているという情報だけでは、四つの声部なのか、三声の一部を重ねているのかは分かりません。
均等な和声を目指すなら、重複する場合は各声部を同じように重複し、重複しない場合はどの声部も重複しない形を基本にします。余っている楽器を、入れやすい一音へだけ追加することには注意が必要です。
原図の二重になっている音を見る
次の図は、重複する声部と重複しない声部が混在した、避けるべき例です。「2 Fag.」「2 Ob.」「2 Fl.」「2 Cl.」という表示の付いた音に注目してください。

同じ高さに並んだ音符は、その一つの音を二本の楽器で重ねていることを示します。最初の例ではファゴット、次はオーボエ、その次はフルート、最後はクラリネットが、一つの音に二本で加わっています。
一方、その和音のほかの声部は、同じ条件で二重になっているわけではありません。図が問題にしているのは、特定の楽器名そのものではなく、声部間の重複の偏りです。
「低い音なら二本でもよい」「高い音だけなら問題ない」と場所だけで判断せず、どの音を目立たせる結果になるかを考えます。背景として均一に聞かせたいなら、この偏りを見直す必要があります。
本数をそろえた後は、音域を確かめる
ただし、各声部を一本ずつにすれば、必ず釣り合うわけではありません。木管は、同じ楽器でも音域によって力や性格が変わります。人数をそろえることは、確認の一段階です。
ある楽器が柔らかく弱い音しか出しにくい高さにあり、別の楽器が強くよく通る高さにあるなら、同じ一本でも釣り合いません。担当する音が、それぞれの楽器にとってどんな声区なのかを見ます。
同じ高さに近いことと、それぞれにとって同じ性格の音域であることは違います。 フルートとオーボエを例にした具体的な説明は、木管の音域を合わせる記事で扱います。
木管は、楽器名だけでは性格を決められない
フルートなら柔らかい、オーボエならよく通る、といった楽器名だけの印象で和音を配ると、実際の高さによる違いを見落とします。低音、中音、高音で、同じ楽器の使い方は変わります。
木管一つの中に、音域ごとに異なる楽器があるように考えると、配分を見直しやすくなります。ただし、声区の境界が完全にはっきり区切られているわけではありません。実際に使う音域の関係を見るための考え方です。
したがって、一音が飛び出したときには、本数の偏りと音域の偏りを別々に調べます。二本で重ねたから目立つのか、一本でも強い声区にあるのか。原因を分けると、直す場所が明確になります。
音の動きも、注意を集める
和音を一つずつ見るだけではなく、和声進行の中で各声部がどう動くかも確認します。ほかの条件が同じなら、聞き手は、音を保っている声部よりも、動いている声部を追いやすくなります。
そのため、共通音を保持する声部と、音を動かす声部は、楽器への割り当ても意識して考えます。和音の中で一つの線だけがよく動くなら、その線が前へ出て感じられることには、動き自体も関わっています。
この場合、音量が大きいと決め付けて、その楽器だけを弱くする前に、役割を見ます。背景の中に動きが必要なのか、主旋律とは別の線として聞かせたいのか。音の量だけでなく、音の動きも聞こえ方を変えます。
途中で重複を増やすと、その場所が強調される
和声の途中から、ある声部にだけ楽器が加われば、その変化にも注意が集まります。初めから偏っている場合だけでなく、フレーズの途中で配分が変わる場合も確認してください。
たとえば、和音が薄く感じられた一か所へだけ、別の木管を加えたとします。その音が補強されることで、そこが意図しないアクセントになる場合があります。厚くしたかったのは和音全体なのに、一声だけを強調しているかもしれません。
一方、その線を意図して浮かび上がらせたいなら、同じ追加に意味があります。重複を足す場所では、和音全体を変えるのか、特定の声部を際立たせるのかを、言葉にしてみると判断しやすくなります。
自然な進行で一時的に重なる場合は別
各声部が正しく進んだ結果、一時的に同じ音へ集まる場合があります。このような重複では、音のバランスが少し変わっても、進行が適切なら聴感上受け入れられます。
したがって、譜面の中に同じ音が二つあるというだけで、すべて取り除く必要はありません。意図的に一声だけ補強しているのか、それとも声部の自然な動きの結果なのかを区別します。
一瞬の均等さを守るために、正しい進行を壊してしまっては逆効果です。基本の声部と重複の関係は、四声の和声とパート数の違いでも説明しています。
二管編成では、音色の組み合わせを工夫する
各種類が二本ずつの木管編成では、同じ楽器だけで三声の和音を作れません。そのため、複数の音色を組み合わせながら、一つの響きへまとめる必要があります。
三声なら、同じ楽器、または同族楽器の二本と、別の楽器一本を組み合わせる形が基本になります。各声部へ別々の楽器を一つずつ置けば、自動的に均一になるわけではありません。
四声でも、楽器を音域順に積む方法のほか、互い違いにしたり、一方がもう一方を上下から囲ったりする方法があります。音色の配置によってまとまり方を変える考え方は、木管の上下を入れ替える理由で詳しく扱います。
重複の均等さと、音色の均等さを合わせる
すべての声部を二本ずつ重ねても、組み合わせる音色や声区がばらばらなら、同じ性格にはなりません。反対に、音域を丁寧に合わせても、一声にだけ多くの楽器が集中していれば、別の偏りが生まれます。
人数、音域、音色の配置を、一つずつ見た後で組み合わせます。どれか一つの条件を整えたことを、全体の釣り合いが完成した証拠にしないことが大切です。
また、均一な和声の背景を目指す木管では、密集した配置が基本になります。音の間隔が広がるほど別々の色として聞こえやすくなるため、音域の幅も合わせて確認します。特殊な色の対照を狙う場合とは、目的が異なります。
飛び出した一音だけを直さない
一音が目立つと、その音の担当楽器を替えたくなります。しかし、和音のほかの声部が弱い音域に置かれている場合には、目立つ音だけが原因とは限りません。
まず、全声部の本数と音域を並べて見ます。その後で、どの声部が動き、どの声部が共通音を保っているかを追います。一つの音だけを孤立させて修正するのではなく、和音全体の関係を調べるのです。
修正の方向も、目立つ一声を弱めるだけとは限りません。不要な重複を外す、各声部の重複条件をそろえる、楽器の声区を合わせるなど、原因に応じた方法を考えます。すべてを一度に変えず、何を整える変更かを明確にします。
主役にしたいなら、偏りを意図して使う
和音の中の一声を際立たせたい場面では、均一な背景の原則から離れる意味があります。その声部を重ね、ほかの線との関係を明確にすれば、和音の中に主従を作れます。
この場合は、目立つことを不具合として消す必要はありません。逆に、背景のつもりなら、その強調が不要であると判断できます。同じ配分でも、役割によって評価が変わるのです。
木管の和音で一つの音が飛び出したら、本数、声区、動き、配置の順に、その音が目立つ条件を調べると原因を整理できます。強弱記号をそろえるだけでなく、楽器の割り振りそのものから、必要な釣り合いを作っていきましょう。
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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:木管楽器による和声 概論、4声または3声の和声。一時的な重複と多声部の配置については、第三章の木管の続節も参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

