上の弦をdivisiにしたら、低音だけ重くなった?
ヴァイオリンとヴィオラをdivisiにして、和音の音数を増やした。ところが合奏すると、上側は繊細になった一方で、チェロとコントラバスばかりが重く感じられる。低音には何も変更していないのに、なぜ釣り合いが変わるのでしょうか。
原因は、上の弦を分けたことで、一つ一つの声部を受け持つ人数が減ったことにあります。音符が増えることと、一声の力が増すことは同じではありません。 分割されていない低音は、上側との関係で重くなり得ます。
divisiは、奏者を増やす方法ではない
divisiは、一つの弦楽セクションを複数の組に分け、それぞれが別の音を奏する方法です。一人が複数の音を鳴らす重音奏法とは異なります。もともと同じ線を弾いていた奏者が、複数の線へ分かれます。
たとえば、十二人の第一ヴァイオリンを二つに等分すれば、一方の声部は六人、もう一方も六人になります。全体の奏者数は十二人のままですが、それまで十二人で奏していた一つの線が、そのまま十二人ずつ二本に増えるわけではありません。
したがって、総譜に音が増えたことだけを見て、上の弦が強化されたと判断しないようにします。響きに含まれる音の種類は増えても、それぞれの音を支える人数は変わっています。
上の声部だけを分けると、低音の条件は残る
第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラを分割し、チェロとコントラバスは分割しない場合を考えましょう。上側は一声あたりの人数が減りますが、低い側は、それまでと同じ人数で一つの線を支えます。
低音が急に強く演奏するようになったわけではなくても、上側との釣り合いは変わります。上の各声部が分かれたことで、低音の重さが相対的に前へ出るのです。
これは、低音パートの譜面だけを見ても分かりにくい問題です。チェロやコントラバスに変更がないから原因ではない、と考えず、周囲の声部がどう変わったかを合わせて見てください。
人数の例で、変わるところを見てみる
次の表は、中編成の人数の例を使い、上の三セクションを二つに等分した場合を整理したものです。実際の音量を数値化した表ではなく、各音を担当する人数がどう変わるかを見るための例です。
| セクション | 分割前の人数の例 | 上の三群を二分割した場合 |
|---|---|---|
| 第一ヴァイオリン | 12人 | 6人+6人 |
| 第二ヴァイオリン | 10人 | 5人+5人 |
| ヴィオラ | 8人 | 4人+4人 |
| チェロ | 6人 | 6人のまま |
| コントラバス | 4〜6人 | 4〜6人のまま |
上の三セクションでは、一声に集まっていた人数が二つへ分かれます。一方、チェロとコントラバスは、分割しないという条件では、そのままの人数で演奏します。上側だけに起きている変化が見えるでしょうか。
ただし、六人だから三人の二倍の音量になる、と計算することはできません。この表から読むのは、人数の配分が変わるという事実です。音域や奏法も関わる響きの釣り合いを、人数比だけで決めないようにしてください。
持続する和音で、特に注意する
この問題が重要になるのは、和音を長く保つ場合です。一瞬だけ鳴るアクセントでは、各声部の細かな釣り合いの重要性は比較的低くなります。しかし、持続する和音では、強い声部と弱い声部の差が響きの中に残ります。
トレモロで和音を保つ場合も同じです。音を細かく反復していても、和声が持続する以上、全体のバランスを整える必要があります。トレモロにすれば低音の重さが自動的に解消するわけではありません。
短い和音を長く変えた際に、divisiと低音の問題が目立つこともあります。音の長さによって何を見直すべきかは、短い弦の和音をそのまま伸ばせるかで説明しています。
低音を休ませる、または奏者を減らす
上三声の和声をdivisiで広げた結果、分割していないチェロとコントラバスが重くなりすぎる場合には、それらを休ませるか、奏者数を減らす指示を考えます。
ここで大切なのは、上側をさらに強くしようとする前に、低い側の参加の仕方を見直せるということです。上の繊細な響きを求めてdivisiにしたのなら、その性格に合う低音の量を選ぶ必要があります。
もちろん、低音の役割が必要な場面で、理由なくすべて休ませるわけではありません。低い支えをどの程度残すかを、和声の構成と響きの目的に照らして考えます。上の分割と、下の参加人数を一つの設計として扱うことが重要です。
全体を分ける場合と、一部分を分ける場合
上の弦が同じようにdivisiされ、六声や七声の和声を作る場合には、分割された声部同士の釣り合いを考えやすくなります。一つの声部だけ人数が減る場合とは、条件が違います。
たとえば、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラをそれぞれ二つに分けるなら、六つの声部ができます。ただし、その下に分割しない低音を残す場合には、やはり低音との関係を確認する必要があります。
「全部をdivisiにした」という言い方も、どこまでを含むかを明確にしてください。上の三セクションなのか、低い弦も含むのかで、音の配分は異なります。総譜上の音数だけでなく、各音に何人が付くかを見ます。
ヴィオラだけのdivisiは、よく使われる
部分的なdivisiには注意が必要ですが、ヴィオラだけを分ける書き方は、よく用いられます。ヴィオラが中音域の声部の中に位置するため、この分割は聴感上受け入れられます。
この例を知ると、「一部だけのdivisiは全部避ける」といった機械的な理解を防げます。どのセクションを分けるか、その声部が和声のどこにあるかによって、結果は変わります。
一方、ヴィオラの例があるから、どの声部だけを分けても同じようによい、と一般化するのも避けましょう。目立つ位置の声部なのか、中間を埋める役割なのかを具体的に考えます。分割の可否は、役割と切り離して決められません。
重音なら、同じ人数を保てるか
中音域を埋めるために音を増やす場合、ヴァイオリンやヴィオラを二音の重音にする方法もあります。一人が複数の音を受け持つため、奏者を二組へ分けるdivisiとは、人数の配分が違います。
ただし、重音はdivisiの効果をそのまま置き換えるものではありません。強いアクセントが欲しいときには重音の性格が役立ち、薄い響きが欲しいときにはdivisiが適します。演奏可能かどうかに加えて、欲しい音の性格を考えます。
重音で人数を保てるという理由だけで、滑らかさや透明さを求める箇所まで同じ書き方にしないようにしましょう。詳しい使い分けは、divisiと重音奏法の記事で扱っています。
小編成では、分割後の人数を必ず見る
同じ「二分割」という指定でも、元の人数が違えば、各声部に残る人数は違います。大きな編成の感覚のまま、小さな編成を何度も分けると、想定した響きから離れることがあります。
小編成で分割しすぎたパッセージは、演奏が難しく、得られる効果も想定と変わりやすくなります。音符の配置を大編成と同じにするだけでは、同じ厚さや釣り合いを保てません。
また、三つに分ける場合には、奏者数が三等分できるとは限りません。各声部の人数が均等にならないことも含めて考える必要があります。必要なら、どの席や何人を各声部へ割り当てるかまで明確にします。
音域順と、和声の基本配置も戻って確認する
divisiだけを原因と決め付けず、弦の各セクションが自然な音域順で和声を作っているかも見ます。持続和音では、密集配置の四声と、その一オクターブ下のバスという基本形が、釣り合いを考える出発点になります。
そこから音を増やした際、どの声部を分け、どこを埋めたのかを整理してください。上声とバスの間が空いていることと、低音が重いことが同時に起きているなら、音域の配置と人数の配分を両方見る必要があります。
音の間隔を変える問題は、低音と高音で和音の間隔を変える理由を参照してください。人数を調整するだけで、すべての配置の問題が解決するわけではありません。
分割前と分割後を、声部ごとに比べる
修正するときは、まずdivisiにする前の各声部を考え、分割後にそれぞれ何人で演奏するかを確認します。次に、チェロとコントラバスが何人で、どの高さの線を奏しているかを見ます。
そのうえで、低音を休ませるか、人数を減らすか、そもそも上の分割が目的に合っているかを判断します。上の音を増やしたいだけなのか、繊細で薄い響きが欲しいのかによって、選ぶ方法は変わります。
最後に、持続する間の釣り合いを考えます。鳴り始めだけではなく、和音が続いている状態で、どこが強く残るかを見てください。短いアクセントと長い和声を、同じ基準で扱わないことが大切です。
上の弦をdivisiにして低音が重くなったとき、低音が突然変わったわけではありません。上側の一声あたりの力が変わり、全体の関係が変化したのです。分割する場所だけでなく、分割しない場所も一緒に読むことで、求める繊細さと低音の支えを両立させやすくなります。
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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:弦楽器による和声。人数とdivisiの分け方については、第一章の弦楽器の節も参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

