金管をいつも木管で和らげると、何が失われる?
金管の響きを少し柔らかくしたいとき、木管を重ねる方法は役に立ちます。しかし、金管が登場するたびに同じ処理をすると、明瞭で純粋な金管の音色を使う機会がなくなります。
柔らかく混ぜた音色と、金管だけのはっきりした音色を、どちらも選べるようにしておく。 これが、重ね方を考える出発点です。「木管を足した方が完成度が高い」と考えると、かえって管弦楽の色彩を狭めてしまいます。
木管を加える目的を、最初に分ける
木管と金管を一緒に使う場合、そもそも何を補いたいのかを確かめます。金管だけでは足りない和声の声部を木管で受け持つ場合と、同じ音を重ねて響きの性格を変える場合は、働きが異なります。
前者では、木管が新しい構成音を担当します。その音が聞こえなくなると和声そのものが欠けるため、金管との音量差を十分に考えなくてはなりません。空いている楽器へ音符を配るだけでは済まない問題です。
後者では、木管を外しても、金管が同じ音を受け持っています。木管を加える目的は、新しい声部を作ることより、同じ音の響きを補強したり、金管の性格を和らげたりすることにあります。
この二つを区別せずに「木管が金管に負けるかどうか」だけを考えると、判断が混乱します。何を聞こえさせる必要があるのかを先に決めれば、重ねることの意味も整理できます。
柔らかくすることは、弱くすることとは違う
木管を金管へユニゾンで重ねると、金管らしい性格を和らげながら、その音を補強する働きがあります。したがって、柔らかな音色になることと、全体の音量が下がることを同じ意味で捉えないようにします。
たとえば、トランペットの和音を少し丸くしたいからといって、木管を加えれば伴奏が自動的に控えめになるわけではありません。音色を混ぜる操作と、旋律を覆わない音量にする操作は、別々に確認する必要があります。
また、金管の方が強いので木管は無意味、と決めつけるのも適切ではありません。独立した木管の線として前に出なくても、同じ音を重ねることが響きの性格に関わる場合があります。
この点は大きな金管に木管を重ねる意味で詳しく扱っています。ここで考えたいのは、その効果を得られるとしても、いつも使うべきかどうかという、もう一段先の判断です。
原図の組み合わせを「常備の配合」にしない

図には、フルートやオーボエ、クラリネットと、トランペットやホルンを組み合わせる例が示されています。こうした組み合わせは、木管と金管の響きを一緒にする具体的な選択肢です。
ただし、図にあるからといって、トランペットが二本出てきたら必ず木管も二本加える、と読み替えないでください。必要な響きに合わせて使う方法であり、金管の音を完成させるための必須部品ではありません。
図を見るときは、どの音が重複しているかと、どの種類の音色が混ざるかを確かめます。同じ音域の同じ構成音でも、フルート、オーボエ、クラリネットのどれを加えるかで、同じ配合とはいえません。
さらに、木管側の音域も重要です。どこでも同じ力で鳴ると考えず、その高さの木管が金管とどう釣り合うかを確認します。楽器名の組み合わせだけを覚えても、実際の譜面の判断には足りません。
混ぜ続けると、使える対比が減る
金管をいつも木管で和らげていると、金管だけの明瞭な色が聞こえる場面がなくなります。すると、楽器の数は多くても、音色の変化としては似た混合音が続くことになります。
ここで失われるのは、一つの和音の響きのよさというより、音楽の中で選べる対比です。混合音が有効であるほど、それと違う純粋な金管の色を残しておくことにも意味があります。
たとえば、あるフレーズでは混ぜた響きを用い、別のフレーズでは金管だけの輪郭を聴かせることを考えます。同じ強弱記号でも、編成の違いが表情の違いを担えるようになります。
反対に、全曲を通じて同じ木管を同じ金管へ付け続けると、この選択肢を自分で閉じてしまいます。音色を豊かにするとは、一度に混ぜる種類を増やすことだけではありません。違いを使い分けることでもあります。
金管だけの響きが必要な場面を残す
明瞭で純粋な金管の音色は、管弦楽の重要な色の一つです。その性格を音楽の表情として使いたいなら、木管を重ねないという選択も積極的に考えます。
これは、金管を必ず強く鳴らすという意味ではありません。「金管だけであること」と「大音量であること」は別の条件です。ここで残したいのは、混合する前の音色の性格を選べる余地です。
たとえば、同じ和声進行を繰り返すとき、音を足す方向だけで変化を作ろうとすると、後半ほど常に編成が大きくなります。一度木管を外し、金管の色を明確にすることも、異なる響きを作る選択として考えられます。
その際、木管が単なる重複だったのか、必要な独立声部だったのかを、最初の区別に戻って確認します。独立声部まで取り去って和声が欠けたなら、それは音色だけを変えたことにはなりません。
音色を混ぜるなら、部分的に選ぶ
木管で金管を和らげる方法は、部分的に使うことで効果を発揮します。あるフレーズの色を整える、特定の声部を補強する、必要な和声を一つの響きにまとめる、といった目的を明確にして選びます。
すべての金管声部へ同じように木管を付ける必要はありません。どの声部に混合した性格が必要で、どの声部は金管のままでよいかを考えると、配分に理由が生まれます。
ただし、部分的という言葉を、何のつながりもなく一音ごとに編成を切り替えることと取り違えないでください。音色の変更が、和声やフレーズの流れの中で自然に聞こえるかも見ます。
前半は金管だけ、後半は木管を重ねる案を作ったなら、その境目で何が変わるのかを説明できるようにします。音色の変化を求めたのか、和声の声部が増えたのか、強さが変わったのかが曖昧なままにならないことが大切です。
柔らかな小編成と、大きな合奏を同じ配分で考えない
ファゴット二本とホルン二本による柔らかな四声は、混合した和声の一例です。しかし、この組み合わせをそのまま強奏にすると、ホルンが優勢になり、弱いときの釣り合いは保ちにくくなります。
このように、木管と金管の組み合わせには、目的だけでなく強弱による条件があります。小さな響きでの成功例を、大きな合奏にもそのまま当てはめることはできません。
一方、木管群と金管群を全体として合わせる場合には、堂々とした統一感を得る方向の使い方もあります。ここでは、少数の楽器を柔らかく混ぜる場面とは、音楽上の役割が違います。
具体的な小編成の配分はファゴット二本とホルン二本の和音で扱っています。組み合わせの名前だけでなく、どの強弱で、何声を、どのように支えるかまで含めて選びましょう。
木管を外す案も、いったん譜面にしてみる
重複が多すぎると感じたら、木管が同じ音をなぞっている箇所を探し、その部分を外した案と比べて考えてみます。まず構成音と金管の配置を保ち、混合するかどうかに焦点を絞ります。
木管を外しても必要な和声が残るなら、違いの中心は音色や補強の度合いにあります。そこで、今のフレーズに必要なのは丸みか、明瞭な金管の色かを判断できます。
もし外したことで一つの声部が消えるなら、その木管は和声を補完していました。その場合は、重複の整理として削るのではなく、別の楽器に声部を渡すか、和声そのものを変えるかという検討になります。
この確認は、譜面を薄くすること自体が目的ではありません。一人ひとりが何の役割で鳴っているかを明確にするためです。理由のある重複は残し、理由のない常時の重複を見直します。
音色の選択を曲の流れに戻すことも忘れないでください。ある箇所では美しく混ざる配分でも、その前後が同じ混合音ばかりなら、そこで生まれる変化は小さくなります。反対に、金管だけの響きが続いたあとなら、木管を加える意味がより明確になります。
重ね方を決める際には、その和音だけを見るのではなく、直前にどんな音色が鳴っていたか、次に何を聴かせたいかまで譜面を広げてみましょう。曲全体で使う色を残しておく考え方は、最初からすべての楽器を鳴らすべきかでも取り上げています。
混ぜる効果と、混ぜない効果を対で覚える
木管を重ねるときは、和声の補完、同じ音の補強、音色の軟化のどれを求めているかを確かめます。そして、その効果が今の場面に必要か、曲のほかの部分との対比を損なっていないかを見ます。
『管弦楽法の基本』が示す組み合わせを生かすには、配合例だけでなく、純粋な金管の色を保つという視点も一緒に持つことが大切です。
木管を加えることも、加えないことも、音色を選ぶ行為です。 柔らかな混合音を万能の完成形にせず、金管本来の明瞭さと使い分けることで、同じ編成の中にもっと多くの表情を残せます。
木管を重ねる方法とは別に、金管自体の音色を変える選択肢もあります。奏法による変化は、金管のミュートは、音量を下げるためだけのもの?をご覧ください。
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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:複数の楽器群による和声。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

