【会話で学ぶ】編曲の一部分だけが曲全体から浮くのはなぜ?前後のつながりを直す

クマニコル:博士、気になる4小節だけ何度も繰り返して聴き、かなり良くなったと思いました。でも曲の頭から聴くと、そこだけ急に別の曲みたいに聞こえるんです。部分では良いのに、なぜでしょう?

リムコフ博士:クマ君、その4小節の中での釣り合いと、前後へ続いたときの釣り合いを分けて考えよう。ある一節が単独でよく響くことは、その場所にふさわしいことまで保証しない。前後のパッセージとの関係まで含めて考える必要があるんだ。

「ここだけ気持ちよい」が、合格の基準になっていた

クマニコル:メロディも聞こえるし、伴奏も濁っていません。それでも、直す理由があるんですか?

リムコフ博士:ある。その中の旋律と伴奏が整理できているなら、今度は「曲の中で何をしている4小節か」を見よう。前の流れを受け継ぐ所なのか、対照的な場面を始める所なのか、それとも頂点なのか。同じ響きでも、置かれる役割で評価が変わるんだ。

クマニコル:ここは次のテーマへのつなぎです。でも、この部分だけ立派に仕上げようとしていました。

リムコフ博士:そうすると、次へ渡すための一節を、独立した山場のように作ってしまった可能性があるね。音量が大きすぎると決める前に、役割と表情が一致しているかを確認したい。つなぎでも対照が必要な場合はあるから、単に薄くすればよいとも限らない。

クマニコル:良い音を探していたつもりが、「何のための音か」を途中で忘れていたのかもしれません。

リムコフ博士:一部分だけなら申し分なくても、現れる場所によって不自然になることはある。同時に鳴る音の釣り合いだけでなく、時間に沿って響きがどう続くかを見る。この二つを分けると、いま確かめるべきことがはっきりするね。

編曲が浮く小節は、前後の楽器配置と続けて確認する

クマニコル:それなら、聴く範囲を広げて聴けば解決しますか?

リムコフ博士:範囲を広げるだけで自動的に直るわけではないが、比較する材料は戻せる。前の句、問題の4小節、次の句を続けて聴き、4小節に入ると何が変わり、そこを出ると何が起きるかを確かめてみよう。

クマニコル:入った瞬間には変化があって、その終わりで次のテーマへ自然に渡ってほしいです。

リムコフ博士:その二つを別々に聴くとよいね。入口だけ魅力的でも、出口で次のテーマを弱く感じさせることがある。反対に、入口の変化をすべて消せば、欲しかった対照までなくなるかもしれない。4小節をどちらへ働かせるのかを確かめるんだ。

クマニコル:4小節の中だけを細かく直すより、直前の楽器の使い方に原因があることもありますか?

リムコフ博士:あるよ。たとえば、ある楽器のソロを新鮮に登場させたいなら、その直前ではその楽器を休ませる方法がある。同じソロでも、その色がずっと鳴っていた後に出るのか、一度休んでから現れるのかで、登場の感じが変わるからだ。

直す場所は、違和感のある小節の中とは限らない

クマニコル:次に木管のソロを出したいのに、今の4小節でも同じ木管をずっと聞かせていました。ソロの音符を直す前に、その直前を考え直せるんですね。

リムコフ博士:そうだね。ただし、「ソロの前は必ずその楽器を休ませる」と暗記する話ではない。新鮮な登場が必要なら、その準備として休ませる方法がある、ということだ。前から続く同じ声として聞かせたいなら、別の意図になる。

クマニコル:今の4小節を弱くする、音色を変える、前後の担当を変える。どこから手を付ければよいでしょう?

リムコフ博士:まず、欲しかった役割を一文に戻そう。今回は「前の場面と少し対照を作り、次の木管ソロへ渡す」だったね。次に、今の配分がそのどこに反しているかを見る。ソロが新しく感じられないのが問題なら、その直前に同じ色を聞かせすぎていないかを調べる、という順だ。

クマニコル:問題の4小節を丸ごと捨てる必要はなく、前後との関係に合っていない所だけを変えるんですね。

リムコフ博士:うん。前後を補う一節なのか、対照を作るのか、頂点なのか流れの一部なのか。その問いを先に立てれば、単に「もっと良い音」にするための修正から、必要な役割へ近付ける修正に変えられる。

部分の確認と、曲中での確認を使い分ける

クマニコル:では、一部分だけを繰り返して聴くこと自体をやめた方がよいですか?

リムコフ博士:今回の話は、部分を確かめる作業を否定するものではないよ。一節の中で何が鳴っているかを確認する作業と、その一節をどこへ置くかを確認する作業は、答える問いが違う。短い範囲で整えたら、前後との関係へ戻して判断する、という使い分けができる。

クマニコル:まず4小節だけで満足していた判断を保留にします。前の句と次のソロを含めて聴き、つなぎとして働いているかを確かめます。

リムコフ博士:それでよい、クマ君。曲全体で浮く一節は、単独の響きが悪いとは限らない。その響きが、必要な場所で必要な役割を果たしているかを見ることが、今回の答えだ。

同時に鳴る旋律と伴奏の配分は、通常解説の「旋律と伴奏は、別の楽器群に分けた方がいい?」で扱っています。

出典:『リムスキーコルサコフ著「管弦楽法の基本」』第四章「同じ音楽を様々にオーケストレーションする」および流れのバランスについてのCOMMENT。相談の場面は創作し、説明は本文および補足の考え方に基づいて構成しています。

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