ハープのグリッサンドを、曲の和声になじませるには?

ハープのグリッサンドを加えれば、それだけで華やかな響きになるでしょうか。上向き、下向きの大きな動きは目を引きますが、その途中にどんな音が鳴るかまで考えなければ、和声に合わない音の塊にもなります。

グリッサンドを書くときは、動く方向より先に、通過する音と残って重なる音を確かめます。 音階として聞かせたいのか、和音の広がりとして聞かせたいのか、装飾的な勢いが欲しいのかを分けると、配分の判断がしやすくなります。

まず、滑らせる途中の音を考える

普通の旋律なら、音符を一つずつ書くため、和音に含まれる音と含まれない音を確認できます。ところがグリッサンドを一つの線として捉えると、始点と終点だけを見て、途中の響きを見落としがちです。

ハープは本質的に全音階的な楽器で、半音の変化にはペダルの操作が必要です。したがって、同じ範囲を滑らせても、どのように準備したかによって通過する音が変わります。

最初に考えるべきことは、その時点のハープがどんな音を出せる状態になっているかです。曲の調号だけを見て安心するのでなく、直前に使った音、今の和音、直後に必要な音を一緒に見ます。

この準備を抜かして、あとから響きだけを想像しても、実際の発音と一致しないことがあります。グリッサンドは、音符を省略して自由な音を出させる印ではなく、準備された音の並びを一続きに鳴らすものとして考えましょう。

音階のグリッサンドと、和音のグリッサンド

リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』では、単なる音階のグリッサンドと、異名同音を利用した七の和音や九の和音のグリッサンドを区別しています。この違いは、響きが混ざったときに何が残るかという問題です。

音階をそのまま滑らせれば、伴奏の和音に含まれない音も鳴ります。音が短く消えてくれれば順番に動く線として捉えやすくても、前の音が残ると、隣り合う音が同時に響きます。

これに対して、準備した音が一つの和音の響きを作るようになっていれば、残響が重なった結果も、その和音の広がりとして捉えやすくなります。そのため、七の和音や九の和音を異名同音的に得るグリッサンドでは、音階の場合と強弱の条件が変わります。

「何調の音階か」と「何の和音を響かせたいか」は、同じ問いではありません。 調に合う音を使っていることだけで、その瞬間の和音との関係がすべて解決したとは考えないでください。

中音域で濁る理由は、音が残ることにある

ハープの中音域以下では、弦の振動が比較的長く続きます。この余韻は和音に豊かさを与えますが、細かい音が次々と続くと、それぞれの音が消える前に新しい音が重なります。

何も考えずに中音域で音階のグリッサンドを強く鳴らすと、順序よく並んだ音階よりも、密集した響きが前に出てくることがあります。譜面では一本の上昇線でも、耳には多くの音が同時に残ったものとして届くわけです。

したがって、濁りの原因を調べるときに、音名だけを正すのでは不十分です。使う高さ、強さ、音の残り方を合わせて見ます。和声に対して問題の少ない音の並びでも、欲しい輪郭が残響に隠れる可能性があります。

この問題は、ハープの和音が速く切り替わる場合ともつながります。ただし、ここでの主題は一つの和音の弾き方ではなく、連続して通過する音の設計です。和音の配分と消音についてはハープにピアノの和音を、そのまま渡していい?で扱っています。

音階を明瞭に聞かせるなら、高さと弱音を選ぶ

音階そのものの動きを音楽的に聞かせたい場合には、高い方の音域で、十分な弱音にする考え方が役立ちます。高音域では響きが比較的短く、音が長く残りすぎる問題を抑えられるからです。

高くすればよい、という一条件で決めないことも大切です。ここでは高音域と弱い強弱が組み合わされています。明瞭に流れる音を求めるなら、その二つを一緒に確認します。

たとえば、静かな場面の背景で音階を流したい場合、低いところから大きく始めれば、動きの幅は広くなります。しかし、その広さと引き換えに、低い音の残響が増えます。始点を下げることが、必ずしも表情を豊かにするとは限りません。

反対に、高い範囲に絞って弱く流せば、低音からの大きな上昇感は減りますが、透明な動きを作りやすくなります。どちらが優れているかではなく、今の場面で聞かせたいものを選ぶ判断です。

低い方からの強い音階は、装飾として考える

低音から中音を含むフォルテの音階グリッサンドは、装飾的な効果として捉えます。一音ずつの関係を明瞭に聞かせることより、全体の勢いや華やかな動きに役割を持たせる考え方です。

この場合も、音のぶつかりを知らなくてよいわけではありません。装飾だから和声を考えなくてよい、としてしまうと、望んだ派手さと、耳障りな濁りの違いが見えなくなります。

先に主旋律や和声の骨格を確認し、その上にどのような動きを加えるのかを決めます。グリッサンドが骨格を説明するのか、それとも別の色として横切るのか。その役割がはっきりすると、必要な長さや強さも考えやすくなります。

書いたあとには、ハープだけの線でなく、同時に鳴る楽器と合わせて読みます。単独で華やかな響きが、合奏の中でも同じように効果的とは限らないからです。

和音に合わせるには、異名同音も準備に含める

異名同音を使うというのは、同じ高さを別の音名として扱い、ハープの準備を和声に合う形へ整えることです。グリッサンドでは、滑らせる際に鳴る音の並びを作るために、この考え方が重要になります。

ただし、和音名を七の和音や九の和音にしただけでは準備は完了しません。その響きを実際にどの音名で得るのか、前後の音楽に必要な操作がどのようにつながるのかまで確認します。

ハープは急速な転調への対応に制約があります。たった一回のグリッサンドとしては望みどおりでも、その直前や直後へ続けて演奏できる形になっているかは別に考えなければなりません。

二台のハープを交互に使うという方法もありますが、まず一台の準備と進行を明確にすることが先です。人数を増やせばすべて解決すると考えるより、どの変化が問題になっているかを見極め、その必要に応じて分担を考えます。

長さを変えると、効果の性格も変わる

グリッサンドは短く終えるより、長くした方が派手でよく響く場合があります。一方、長くすれば、その間にほかの楽器と異なる音が鳴る時間も増えます。長さは単なる飾りの大きさではなく、周囲との関係を変える条件です。

ここで、ぶつかる音があるから必ず短くする、という判断だけにしないことが大切です。華やかさのために、その関係を承知で長く使うこともあります。大事なのは、偶然の不一致なのか、狙った装飾なのかを区別できることです。

逆に、長い方が華やかだからと毎回長くすると、主旋律の区切りや和声の変化より、グリッサンドばかりが目立つことがあります。どこから始め、どこで止めると句の形に合うかを読み直しましょう。

装飾した音と和声の骨格を同時に置く問題は、装飾した旋律を、元の形でも重ねると音がぶつかる?とも関係します。音色の違いは助けになりますが、それだけであらゆる不一致が問題なくなるわけではありません。

同じ上昇でも、二つの案は別の役割になる

ある和音が持続している場面で、上昇するグリッサンドを置くと考えてみましょう。一つ目の案は、高い音域の弱い音階です。ここでは、伴奏の上に浮かぶ細かな動きが中心になります。音の一つ一つが長く混ざりすぎないことが、狙いに合う条件です。

二つ目の案は、その場の和声に合わせて準備した和音的なグリッサンドです。こちらでは、音が重なった結果も和音の広がりとして扱います。同じ上昇する身振りでも、線の透明さを聞かせる案と、和音の響きを増す案では、成功の基準が違います。

この二つを比べるときは、単に後者の方が大きい、前者の方が静か、という印象だけで判断しないでください。主旋律が何をしているか、伴奏がすでにどれほど厚いかに対して、どちらの役割が必要かを考えます。欲しい役割を先に決めれば、音階のまま残すか、和音的な準備を選ぶかにも理由が生まれます。

書き終えたら、四つの条件を順番に見る

最初に、通過する音の並びを確かめます。音階を聞かせたいのか、和音の広がりが欲しいのかをはっきりさせ、伴奏と重なる音を確認します。

次に、音域と残響を見ます。高い方の透明さが必要なのか、低い方からの密集した勢いが必要なのかを選び、その性格に強弱が合っているかを考えます。

さらに、ペダルの準備を含めて前後の進行を見ます。一つの効果だけが成立しても、曲の流れの中で無理があれば配分を見直します。最後に、長さが主旋律や和声の区切りに合っているかを確かめます。

この順に考えると、グリッサンドを何となく足した華やかさから、和声と音域に根拠を持つ表現へ変えられます。一本の線の見た目ではなく、その線が生み出す音の重なりを設計することが、ハープの響きを生かす鍵になります。


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