金管が短いリズムだけでも活き活き聴こえるのは?

金管に活気のあるフレーズを書きたいとき、たくさんの音や複雑な旋律が必要とは限りません。数個の音をはっきりしたリズムで並べるだけで、弦や木管とは違う勢いが生まれます。

その理由の一つは、金管の歯切れのよい発音が、リズムの輪郭をはっきり示すことです。さらに、自然倍音列から生まれた音の組み合わせには、ファンファーレに結び付く性格があります。

音を増やす前に、どの音をどんな長さと間隔で鳴らすかを考えてみましょう。金管らしい活気を作る手がかりは、旋律の複雑さだけにあるわけではありません。

自然倍音列から、金管らしい音の並びを見る

バルブ機構が使われる以前の金管では、自然倍音列に含まれる音が旋律や合図の素材になりました。次の図には、その音の並びが示されています。

金管の自然倍音列。低い方では音の間隔が広く、高い方で近付く。
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』第二章「金管楽器によるメロディ」より、自然倍音列。画像を押すと拡大できます。

まず、下の方の音どうしの間隔が広く、高い方へ進むにつれて選べる音が近付くことに注目してください。半音ずつ等間隔に並ぶ鍵盤とは、音の並び方が違います。

この図を、そのまま演奏する一つのメロディとして読む必要はありません。金管のフレーズを形作ってきた音の材料として見ます。離れた音の呼び掛けや、同じ音の繰り返しが、旋律の輪郭を作る出発点になります。

ここへリズムが加わることで、ファンファーレ、トランペット・コール、フローリッシュといったフレーズの性格が生まれます。音高の選び方と、発音するタイミングが結び付いているのです。

二声にしても、素材はむやみに増やさなくてよい

自然倍音列の音を使うと、次のような二声の和声も作れます。上と下がどの音を組み合わせ、上昇してから戻る間に間隔がどう変わるかを追ってみましょう。

自然倍音列を使った二声の和声。上下二つの音の組が上昇し、戻ってくる。
『管弦楽法の基本』より、自然倍音列による二声の和声。上下の音の組み合わせに注目してください。

一つの音の並びだけでなく、二つの声部の組み合わせにも形があります。この段階では、まだ細かなリズムを加えていません。それでも、音高の材料を絞ったまま、上下の動きにまとまりを作れることが分かります。

ここで重要なのは、音を少なくすると表現が乏しくなる、と決めつけないことです。音の材料を絞れば、発音のタイミングや音の長さの違いが、フレーズの性格を担いやすくなります。

たとえば、同じ音の組み合わせでも、短い音を続ける部分と、最後に長く保つ部分では働きが変わります。前者ではリズムの推進力が、後者では音の響きが前へ出ます。音高を追加する前に、この時間の形を選ぶ余地があります。

歯切れのよいアタックが、短い動機を生かす

金管の発音には、リズミカルな動機を明瞭に示しやすい特徴があります。音の始まりがはっきりするため、数個の音だけでも、一つ一つの位置がフレーズの勢いになります。

ここでいう活気は、音量の大きさと完全に同じではありません。大きく伸ばした和音と、短い発音を組み合わせた動機では、耳に届く運動の感じが異なります。強くすることだけを考えず、音の始まりをどう並べるかを見ます。

また、音を切った後の間も、リズムの形に含まれます。音符を増やして隙間を埋めれば必ず生き生きする、というわけではありません。短い動機として何を聞き取ってほしいのかを決め、その輪郭が保たれる長さを考えます。

音の数、音の長さ、発音の位置を分けて考えると、単純な素材でも変化を作れます。音高が少ないことを不足と捉える前に、その音をどう鳴らすかに目を向けましょう。

ただし、低音域のホルンには同じ期待をしない

金管全体にリズミカルな性格があるとしても、すべての楽器の全音域で同じ歯切れを期待することはできません。とくに、低音域のホルンは、この特徴をそのまま当てはめにくい例です。

トランペットでうまくいく短い動機を、そのまま低いホルンへ移しても、同じような輪郭が得られるとは限りません。旋律の音域を変えたことで、楽器の性質も違う部分を使っているからです。

中音域以上のホルンやトランペットには、豊かで澄んだ響きを生かしたファンファーレの使い方があります。楽器の名前だけではなく、どのあたりの音域を受け持たせるかまでが選択になります。

低い場所で鋭いリズムを求めるのか、ホルンの柔らかな歌を求めるのかでも、考えるべき条件が変わります。後者については、ホルンの柔らかい旋律は、どの音域から考える?で扱います。

打楽器を加えるなら、何を強調するかを決める

金管の短いリズムは、打楽器で重ねて強調することがあります。同じリズムを加えることで、フレーズの輪郭をさらに明瞭にする使い方です。

ただし、打楽器を追加することと、金管の旋律そのものを充実させることは同じではありません。発音の瞬間を強めたいのか、長く続く音を支えたいのかを区別します。

金管は音を持続できますが、打楽器には発音の後に減衰するものがあります。したがって、両者を重ねた響きでは、鳴り始めとその後で音の比重が変わります。その違いを、リズムのアクセントとして使えるのです。

たとえば、動機のすべての音を同じように強調したいのか、最後の一音を強く示したいのかを先に決めます。何となく派手にするために重ねるより、どこで発音を際立たせるかが明確になります。

発音と持続を分けて音量を考える方法は、オーケストラの音量は、人数だけで計算できる?でも解説しています。金管と打楽器を足したときも、瞬間の強さだけで全体の支えを判断しないようにしましょう。

全音階的な旋律は、金管の明快さを生かしやすい

ファンファーレに限らず、転調を伴わない全音階的な旋律は、金管の性格を生かしやすい素材です。音の関係が明快で、エネルギッシュなフレーズや、単純でも雄弁な旋律として聞かせられます。

長調では活力や意気揚々とした性格を、短調では暗く悲観的な性格を生かせます。金管の強い響きが、常に明るい気分だけを作るわけではありません。

同じ短い動機でも、旋律や和声の条件によって表情は変わります。音色の印象と曲の感情の関係については、「悲しい旋律だからオーボエ」で決めていい?でも説明しています。金管でも、楽器名だけで曲の性格を固定しないことが大切です。

自然倍音列の図は、このような書き方の背景をつかむ助けになります。ただし、その図にある音だけしか書いてはいけないという意味ではありません。バルブによって同じような音の関係をほかの調でも扱え、フレーズの可能性は広がっています。

半音階を含むことと、動きが無理なことを分ける

金管らしいフレーズを考えるとき、半音階を含むかどうかだけで、適切さを決めないようにしましょう。ファンファーレの形を持つ活力あるフレーズは、半音階を含んでいても金管の性格を生かせます。

注意したいのは、半音階的な動きに大きな跳躍を組み合わせた場合です。音高の変化が細かいことに加えて、遠い音へ飛ぶ条件が重なるため、単純な音型と同じ感覚では扱えません。

ときどき現れる五度やオクターブの跳躍と、大きな跳躍を何度も含む半音階的な旋律も、同じ条件ではありません。跳躍の有無だけを数えるのではなく、フレーズ全体でどのように続くかを見ます。

また、準備なく突然高い音から始まる旋律にも注意が必要です。書きたい音が音域に収まっていても、その音へどう入るかという条件は残ります。到達できる音と、そこでフレーズを始めやすいことは別だと考えましょう。

リズミカルで短い動機を作るなら、複雑な音高の動きを増やす前に、発音の勢いを生かせる形になっているかを確かめることが役立ちます。

楽器を増やす前に、一声で動機が伝わるかを見る

ファンファーレは、ソロでも二声でも三声でも作れます。トランペットやホルンを複数使うこともありますが、人数を増やすこと自体が活気の条件ではありません。

まず一つの線で、音の関係とリズムの形が分かるかを考えます。そのうえで、同じ線を重ねて強めるのか、二声の和声を作るのかを選ぶと、追加する楽器の役割が明確になります。

同じ旋律へ人数を集めるユニゾンと、別の高さで和声を作る二声では、得られる効果が違います。二つの原図も、まず使う音の材料を知り、次に複数の声部へ組み立てる、という順で見ると役立ちます。

金管は少数でも強い存在感を持ちます。フレーズが明瞭に伝わっているなら、さらに重ねる必要があるかを一度考えましょう。響きの重さと、欲しいリズムの軽快さが合っているかも確認します。

音域と役割が決まってから、担当楽器を選ぶ

ファンファーレらしい動機を思い付いても、トランペットへ自動的に割り当てる必要はありません。必要な高さ、力強さ、曲全体の中での役割によって、ホルンやトロンボーンなどを検討することになります。

担当の選び方は、ファンファーレなら、必ずトランペットでいい?で詳しく扱います。ここでは、金管の短いリズムが活気を持つ理由を、音の材料と発音の特徴から押さえておきましょう。

複雑な音を足す前に、少ない音で形が伝わるか、発音の位置が意図に合うか、使う音域がその歯切れを生かせるかを確認します。この三つを結び付けると、短い動機でも金管らしい力を持たせられます。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:金管楽器によるメロディ。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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