【会話で学ぶ】チェロとヴァイオリンの二声は、チェロを上に置いてもいい?
二声の旋律を弦へ配るとき、上はヴァイオリン、下はチェロと決めていませんか。六度で進む二声について、チェロを上へ置く原典の例から、楽器の順番と音色の選択を考えます。
クマニコル:博士、六度で動く二声を書いています。チェロに上の旋律を任せたいのですが、ヴァイオリンより上に出ると変でしょうか。
リムコフ博士:クマ君、楽器の普段の上下だけで、すべての声部の位置が決まるわけではないよ。《スペイン奇想曲》のDには、上声部をチェロ、下声部をヴァイオリンのG弦へ置く例がある。
クマニコル:ヴァイオリンが低い方を弾くんですね。それも、チェロを上から重ねるのでなく、別の声部なのですか。
リムコフ博士:そう。チェロと、第一・第二ヴァイオリンの間が六度になる配置だ。ヴァイオリン二部は下の線を同じ高さで奏し、チェロが上の線を持つ。全員が同じ旋律をユニゾンで鳴らす場合とは分けて考えよう。
低い楽器を下へ置くことより、残したい色を考える
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 高い方の声部 | チェロ。二声の上側を担当。 |
| 六度下の声部 | 第一・第二ヴァイオリン。G弦で同じ線を担当。 |

リムコフ博士:V-c.の段はテナー記号、Viol. I e IIの段はト音記号だね。冒頭ではチェロが上のD、ヴァイオリンが下のFを奏して六度になる。五線の上下ではなく、音部記号を読んで実際の高さを比べよう。
クマニコル:このように上下を逆にするのは、珍しい響きで驚かせるためでしょうか。
リムコフ博士:珍しさだけが目的ではない。この例では、それぞれの音質をはっきり残せることが大切なんだ。六度の二声では音色が異なっていてもよいので、その違いを配分へ生かせる。
クマニコル:二声を一色に溶かすことだけを目指していないんですね。
リムコフ博士:うん。上と下にどの色を置きたいかを考える。チェロを低音の支えへ固定すると、チェロが上声として歌う選択を、最初から失ってしまうね。
ヴァイオリンの「低い方」ではなく、G弦を見る
クマニコル:下の線をヴァイオリンへ渡すだけでは、まだ足りませんか。
リムコフ博士:この例ではG弦という条件まで読むことが大切だよ。ヴァイオリンの高いE弦の華やかさと、巻線のG弦の少しざらついた性格は同じではない。楽器名だけで想像した色と、実際に使う弦の色を区別しよう。
クマニコル:同じヴァイオリンでも、上で輝く役と下の声部を作る役では、使う性格が変わるのですね。
リムコフ博士:そう。次の図では、各弦の一般的な範囲を実線で示している。ヴァイオリンのG弦と、チェロの範囲を見比べると、楽器全体の上下だけでは配分を決められないことがわかる。

チェロを上にする六度の配置を、三度へそのまま使わない
クマニコル:では、三度で寄り添う二声でも、同じ配分にできますね。
リムコフ博士:そこは同じ条件ではないよ。弦の三度では、二声の音質をそろえることが基本になる。一方、六度では異なる音色を使える。六度で色の違いを生かした例を、そのまま三度の一般的な配分へ置き換えないようにしよう。
クマニコル:二声あることだけでなく、二声がどんな間隔で関わっているかを見るんですね。
リムコフ博士:そのとおり。また、上下を逆にすればいつでも良いというわけでもない。それぞれの音域、声部の進み方、欲しい響きが合っているかを、フレーズ全体で確認する必要がある。
譜面の並びと、実際に鳴る上下を分ける
クマニコル:総譜ではチェロの段が下にあるので、音も下にあるような気がしていました。
リムコフ博士:実際に鳴る音高を見よう。総譜の段の順番は、その瞬間の声部の上下を保証しない。上声と下声をそれぞれ追ってから、誰がその音を持つかを読むと、今回の配分を理解しやすいね。
クマニコル:チェロを上、第一・第二ヴァイオリンのG弦を六度下。二つの色を残したいときの、具体的な候補として考えてみます。
リムコフ博士:うん。チェロがヴァイオリンを超えること自体を誤りにしない。二声の関係と、使う弦の性格から、その配置を選ぶ理由を確かめよう。
同じ高さで弦を重ねる場合は、ヴィオラとチェロのユニゾンを扱う通常記事で、異なる判断として説明しています。
出典:『管弦楽法の基本』第二章「弦楽器によるメロディ」三度または六度による重複(《スペイン奇想曲》D)、第一章「弦楽器」。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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