打楽器を加えると浮いてしまうのは、なぜ?
打楽器を足したら華やかになったけれど、音楽とは別の音が上から乗ったように聞こえる。そんなとき、打楽器の音量を下げるだけでは、つながりが生まれないことがあります。
打楽器をなじませるには、どの楽器の、どの動きを強めるのかを決めます。 音域、リズム、発音する位置、続く響きの形を合わせて見ると、ただ音を加える段階から、合奏の一部として配分する段階へ進めます。
音程のない打楽器にも、高低の性格がある
特定の音名を持たない打楽器でも、響きには高い、低いという性格があります。トライアングルのような高い響きと、大太鼓やゴングの低い響きでは、組み合わせたときに結び付きやすい場所が異なります。
音符に明確な音高が書かれていないからといって、総譜のどこにでも同じようになじむわけではありません。旋律の上の方を飾るのか、低音を支えるのかを考え、その役割に音域の感覚を合わせます。
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』の本文と付された解説では、この音域をそろえる視点が示されています。高い楽器と低い打楽器を合わせると、二つの音色が混ざらず、別々のものとして聞こえやすくなります。
これは、高低の異なる組み合わせを禁止する規則ではありません。対比を作りたいなら、その離れ方を意図的に使えます。なじませるつもりなのに離れて聞こえる場合と、分離した対照を狙う場合を区別することが大切です。
細かいリズムと、大きな打点では候補が変わる
ちょっとした細かなリズムを加えたい場合には、トライアングル、タンバリン、カスタネット、小太鼓などが候補になります。短い動きの形を、打楽器の発音で際立たせる考え方です。
一方、強烈で単純なリズムでは、大太鼓、シンバル、ゴングなどの強い響きが関わります。ここでは、細かなすべての動きを追うことより、どこを大きな支点として聞かせるかが重要になります。
したがって、リズムがあるから打楽器を加える、という一段階の判断だけでは足りません。そのリズムが細かい運動なのか、大きなアクセントの並びなのかを読み取ります。
同じ楽節の中でも、伴奏に細かな動きがあり、旋律には大きなアクセントがあるかもしれません。どちらへ参加するのかを決めないまま打楽器を書くと、独立した第三の動きが生まれ、全体の焦点が曖昧になります。
強い打点は、拍の位置ではなく重心を読む
強い打楽器の打点は、強拍、シンコペーションの強いアクセント、飛び飛びに現れるスフォルツァンドなどへ結び付けると、音楽の重心と関係を持たせられます。
ここで、強拍だから機械的に鳴らすと考えないでください。シンコペーションでは、譜面上の拍の位置と、実際に強く聞かせたい場所がずれることがあります。音楽がどこへ力を置いているかを確認します。
打点が主旋律のアクセントと一致している場合は、その輪郭を強められます。反対に、主旋律が別の場所へ向かっているときに強い打点を置けば、聴き手の注意をそちらへ引くことになります。
何を強調したかは、何を鳴らしたかよりも、どこで鳴らしたかによって変わります。 打楽器のパートを独立して読むだけでなく、同じ瞬間の旋律と低音に目を移してみましょう。
トリルに重ねるなら、持続の形もそろえる
木管やヴァイオリンのトリルに、トライアングルやタンバリンのトレモロを重ねる組み合わせがあります。ここでは高い方の音域だけでなく、細かく動きながら続く響きの性格も結び付いています。
始まりの音だけを同時にしても、その後に一方が止まり、もう一方が続けば、フレーズの形は変わります。どこまで共に続け、どこで音を離すのかを考える必要があります。
また、トレモロを長く伸ばせば、それだけ長い時間その色が前に出ます。トリルに色を添えたいのか、打楽器の持続を一つの背景として聞かせたいのかを区別すると、終わり方も選びやすくなります。
「同じ音型をなぞっていないから関連がない」と考える必要はありません。旋律と打楽器では音の作り方が異なっていても、時間的な形と音域がそろうことで、一つの効果として結び付けられます。
金管の和音を支える場合は、硬さと持続に注目する
トランペットやホルンが和音を伸ばすところへ、小太鼓や、バチで打つシンバルのトレモロを合わせる方法もあります。一撃を加える場合と違い、持続している和音そのものに打楽器の色が加わります。
この配分では、和音の最初の瞬間だけが問題ではありません。金管の強弱が変わる途中で打楽器がどのように続くか、終止まで同じ色を保つかを見ます。
金管は発音の輪郭がはっきりしており、リズミカルな場面でも候補になります。ただし、金管の明瞭さと打楽器の明瞭さを重ねることが、いつも柔らかい混合音を作るとは限りません。強い性格を望むのか、色だけを加えたいのかを確認します。
金管の短い動機そのものの性格は、金管が短いリズムだけでも活き活き聴こえるのは?で扱っています。音型を選ぶ問題と、そこへ打楽器を重ねる問題を分けて考えると整理しやすくなります。
低い持続音では、大太鼓やゴングとの関係を見る
トロンボーンの和音や、チェロとコントラバスによる低い持続音には、大太鼓やゴングのトレモロを重ねる例が挙げられています。低い響きどうしを結び付け、その持続に色を加える考え方です。
ここでも、バスの動きに打点を付けるのか、伸びている低音を支えるのかを区別します。前者ではリズム上の一致、後者では続く時間と強弱の変化がとくに重要になります。
低音楽器が休む場所で打楽器だけが長く残れば、その残り方が別の効果を作ります。それが意図した余韻なのか、低音の区切りを曖昧にしているのかを考えます。
音の高さが近いという理由だけで自動的によい組み合わせになるのではなく、何の役割を共有しているかまで見て初めて、低い打楽器を合奏の中へ位置付けられます。
強い打楽器は、全奏の中でも支配的になり得る
大太鼓、シンバル、ゴング、小太鼓のトレモロは、フォルティッシモではオーケストラの全奏さえ上回るほどの存在感を持ち得ます。全楽器が鳴っているから打楽器も最大の強さでよい、とは考えないでください。
すでに十分な大きさのある和音に、さらに強い打点を加えると、和音の色より打楽器の衝撃が印象に残ることがあります。その効果を望むのか、和音の到達点だけを明確にしたいのかで、必要な強さは違います。
また、音量を下げても、打点の位置が不適切なら音楽との関係は改善しません。逆に、位置が適切でも強すぎれば、旋律や和声を覆うことがあります。強弱と位置の両方を別々に点検します。
全奏は全員を同じ強さで鳴らすことではありません。tuttiは、本当に全楽器を鳴らすという意味?と合わせて、打楽器を加えた結果、何が主役として聞こえるかを確認しましょう。
独立したリズムにするなら、独立する理由を持たせる
打楽器が、ほかの楽器群とは異なるリズムを自由に打つこともあります。必ず全員と同じリズムでなければならないわけではありません。
ただし、同じ動きを強める配分と、別の動きを重ねる配分では、点検すべきことが違います。後者では、二つのリズムが同時にあることが、音楽の表情にどう働くかを考えます。
たとえば、旋律の句を区切りたい場所でも打楽器が動き続ければ、全体としては連続感が強まります。そこで流れを止めたいなら、その継続が意図に反していないかを見ます。対照的な運動を保ちたいなら、そのまま続ける理由があります。
独立していること自体を問題とせず、関係が分からないまま偶然重なっている状態を避けましょう。合わせる場所と離す場所が明確なら、異なるリズムも構成の一部になります。
足す前と足した後を比べて、役割を確かめる
打楽器のパートを書き終えたら、いったんその音がない場合を考えてみます。何が弱くなるでしょうか。リズムの輪郭なのか、持続する響きの色なのか、山場の打点なのかを言葉にします。
次に、打楽器を加えた状態で、別の何かが隠れていないかを確認します。旋律のアクセント、低音の区切り、和音の色など、本来聞かせたかったものが変わっていないかを見ます。
この二つを比べると、必要なのは楽器の変更なのか、音域の関係の修正なのか、打点の移動なのか、強弱の調整なのかが分かりやすくなります。「打楽器が浮く」という一つの印象を、いくつかの具体的な条件へ分けられるわけです。
最後に、使い続ける長さにも目を向けます。特徴的な響きを休ませる時間があれば、再び参加したときの色が際立ちます。鳴らす場所だけでなく、鳴らさない場所を決めることも、打楽器を音楽へなじませる作業の一部です。
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