ファンファーレなら、必ずトランペットでいい?

ファンファーレと聞くと、まずトランペットを思い浮かべるかもしれません。その方向は自然でも、「ファンファーレだからトランペット」と決めたところで、楽器選びが終わるわけではありません。

旋律の高さ、必要な力強さ、伴奏との関係、曲の中での役割まで確かめて、初めて配分が決まります。 同じ性格の短い音型でも、トランペットに適さない高さなら、別の楽器や組み合わせを考えます。

まず、音型の性格と実際の音域を分ける

弦のトレモロの上でファンファーレが鳴る場面を想像してみましょう。トレモロを弦、ファンファーレをトランペットへ振り分けるという大きな方向は、すぐに思いつきます。

けれども、実際の旋律がどこに置かれているかを確かめなければ、その方向が具体的な譜面に合うかはわかりません。ファンファーレらしいリズムであることと、トランペットがその高さで望む表情を出せることは、別の条件です。

たとえば、旋律が低く置かれているなら、トランペットという名前にこだわるより、その音域でファンファーレの性格を生かせる楽器へ移す方が自然です。音型を担当させたい楽器に、譜面を無理に合わせないようにします。

ここで一度、音型を「高い・低い」という大まかな印象だけでなく、最低音から最高音までのまとまりとして見ます。頂点の一音だけで決めず、フレーズ全体がどの範囲で動くのかを確かめることが大切です。

トランペットには低すぎる場合

トランペットには低すぎるファンファーレなら、ホルンやトロンボーンが候補になります。音の高さを保ちながら、金管として近い性格を使う方向の選択です。

これは、トランペットのパートをそのまま別の楽器名に書き換えればよい、という意味ではありません。ホルンとトロンボーンでは音色も力も違います。どちらを選ぶかは、そのフレーズに必要な表情に戻って考えます。

たとえば、低い位置で堂々とした輪郭を持たせたいのか、周囲になじむ性格を含めたいのかによって、候補の見方は変わります。楽器の一般的なイメージだけではなく、その音域と強弱での役割を確かめましょう。

また、ファンファーレを低い楽器に渡したことで、伴奏と同じ高さに集まりすぎていないかも見ます。旋律の担当が自然になっても、伴奏との区別が失われれば、全体としての目的は達せられません。

トランペットには高すぎる場合

高すぎるファンファーレでは、オーボエとクラリネットのユニゾンという選択肢があります。二種類の木管を組み合わせ、音色と力の点でトランペットに近い性格を得る方法です。

ここでの要点は、金管の代わりに木管を一種類だけ選ぶことではなく、二種類を同じ旋律で組み合わせることです。オーボエ単独、クラリネット単独、二つのユニゾンは、それぞれ別の音色の選択になります。

もちろん、まったく同一の音が得られるという意味ではありません。トランペットの名前を保つことより、ファンファーレとして必要な性格を、その高さで実現することを優先しています。

この組み合わせを使ったら、伴奏にも注意を向けます。旋律が木管へ移ったのに、伴奏も同じような木管の色で埋めると、旋律と和声の区別を作り直す必要が生じます。担当変更は、旋律の一行だけで完結しません。

音域を変えるのか、楽器を変えるのか

トランペットに合わない高さの音型を見たとき、旋律をオクターブ移せば済む場合もあるでしょう。しかし、それはもとの高さを保って別の楽器に渡すこととは、別の変更です。

旋律を移すと、伴奏との距離、前後のフレーズとのつながり、音楽全体の高低の印象も変わります。そのため、楽器の都合だけで高さを動かす前に、現在の音域が音楽上どんな意味を持っているかを確認します。

低いファンファーレをホルンやトロンボーンへ渡す、高いものをオーボエとクラリネットへ渡すという考え方は、そうした高さの条件を受け止めて、担当を選ぶために役立ちます。

逆に、反復のたびに音域を変化させる意図があるなら、その変更に合わせて楽器も見直します。同じモチーフだから同じ楽器、という固定から離れると、音域の変化と音色の変化を一緒に設計できます。

一人か複数かは、ほしい強さから決める

トランペットに適した音域であっても、一人で吹くか、複数でユニゾンにするかは別の判断です。力強く堂々とした音が必要なら、二本から四本を重ねる選択が考えられます。

それほど大きな力を必要としない場合には、一本のトランペット、あるいはオーボエとクラリネットの組み合わせを選ぶこともできます。人数は、ファンファーレという名称から自動的に決まるものではありません。

人数を増やすと、音量が人数に比例して増えるわけではありません。 同じ楽器のユニゾンは厚みを増しても、その人数分だけ大きく聞こえるとは限らないため、「二倍ほしいから二人」という計算は避けます。

複数にする前に、必要なのは厚みなのか、堂々とした性格なのか、伴奏から浮かび上がることなのかを分けてみましょう。最後の目的なら、旋律を増やすだけでなく伴奏側の配分も検討する必要があります。

人数と響きの関係は、オーケストラの音量は人数だけで計算できるかで詳しく扱っています。ここでは、編成内のトランペットをすべて使うことを出発点にしない、と覚えておくと判断がしやすくなります。

弦のトレモロに、木管の持続音を加えるか

ファンファーレの下にある弦のトレモロを、木管の持続音で支えるかどうかも、その場面の意図によって変わります。音を足せば必ず完成度が上がる、という話ではありません。

旋律と和声をはっきり分け、ファンファーレの輝きを重視したいなら、木管を加えることより、各楽器の強弱を丁寧に調整する方が目的に合う場合があります。

反対に、和声の骨格を充実させることを重視するなら、木管の持続音を加える方向が考えられます。この場合、旋律だけを際立たせる案とは、求めている全体像が違います。

つまり、同じ旋律に対しても、「旋律の輝きを中心にする案」と「和声の厚みを含めてまとめる案」があります。まずどちらを目指すかを決めれば、伴奏をどこまで支えるかにも理由を持たせられます。

旋律の担当を替えたら、伴奏の色も考え直す

ファンファーレがトランペットやホルンなら、和声を木管に任せることで、旋律と伴奏の音色を分けられます。反対に、旋律をオーボエとクラリネットへ移したなら、和声をホルンへ渡す方向が考えられます。

この交換は、単なる気分転換ではありません。旋律と和声は、強さや厚みだけでなく、音色の面でも区別する必要があるからです。主役の楽器を替えたあと、脇をそのままにしてよいかを点検します。

ただし、役割を反転させればいつでも釣り合うわけではありません。金管と木管の自然な音量差があるため、同じ高さの音符を丸ごと交換するだけでは、伴奏が強すぎる結果にもなります。

この問題は旋律と伴奏を別の楽器群へ分ける意味で詳しく説明しています。ここでは、ファンファーレの楽器選びが、伴奏の楽器選びと一組であることを押さえてください。

楽器を選ぶ前に、短い言葉で意図を書く

迷ったときは、譜面の横に、そのフレーズで欲しい性格を短く書いてみます。「力強く堂々と」「軽く差し込む」「和声を厚く支える」など、何を聴かせたいかがわかる言葉を使います。

強弱記号だけを書くよりも、選択の理由がはっきりします。たとえば同じフォルテでも、旋律の輪郭を立てたいのか、合奏全体を豊かにしたいのかで、木管の支えを加える判断は変わるからです。

次に、その意図に対して、音域、人数、伴奏の三点を照らし合わせます。高い旋律を保つことが必要なら木管の組み合わせを考え、堂々とした厚みが必要なら適切な音域で複数のトランペットを考える、というように候補を絞ります。

編曲の場合には、この意図を原曲の前後の流れから読み取ることになります。自作の場合でも、書き始めたときの印象だけに頼らず、曲の中での役割を改めて言葉にすると、楽器を増やすべきかどうかの迷いを整理できます。

最終的に一つの案を選んだら、採らなかった案よりも、その場面の目的に合う理由があるかを確かめます。楽器の組み合わせを多く知ることが、そのまま適切な選択になるわけではありません。

同じフレーズでも、置かれる場所によって答えが変わる

単独で聴けば堂々として美しい配分でも、曲の途中で毎回その強さを使うと、最後の山場のために残すものがなくなります。そのフレーズが頂点なのか、流れの一部なのかを確かめます。

また、前のフレーズを補うのか、対照を作るのかによっても選択は変わります。直前から同じ金管の色が続いている場面と、しばらく金管が休んでいた場面では、登場の意味が同じではありません。

リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』のファンファーレの例は、こうして一つの音型から、音域、人数、伴奏、曲全体の関係へと判断を広げる入口になります。

ファンファーレの楽器は、名前ではなく、その音型をどう聴かせたいかで選びます。 トランペットを第一候補にしても、音域と強さを確かめ、必要なら別の楽器へ渡す。その柔軟さが、音型の性格をむしろ明確にします。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:管弦楽法の基本 第四章「オーケストレーション実践」。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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