【会話で学ぶ】弱音器付きヴィオラの旋律を目立たせたいとき、別の楽器へ替える?

クマニコル:博士、短い舞曲の主題を、弱音器付きのヴィオラに任せました。この色は好きなのですが、別の場面では、もう少し通る感じにしたいんです。人数を増やすべきでしょうか。

リムコフ博士:クマ君、人数を考える前に、担当を替えた姿を比べてみよう。短い舞曲の主題なら、弱音器付きヴィオラとイングリッシュホルンを比べる、興味深い実例があるよ。

クマニコル:弦から木管へ、同じ主題を渡すんですね。旋律を書き直して派手にする方法ではないんだ。

リムコフ博士:そうだね。ここで考えるのは、同じ旋律にどんな声を与えるかだ。音の数を増やすことと、声の質を選び直すことは、別々に判断できる。

『サトコ』の同じ主題を、ヴィオラとイングリッシュホルンで比較する

クマニコル:どの曲を見ればよいですか。

リムコフ博士:交響的絵画の『サトコ』、練習番号12だ。変ニ長調の短いダンスの主題を、弱音器付きヴィオラが弱奏する。その後に作られたオペラ版の第6場では、同じ旋律をイングリッシュホルンが奏する。後者の方が、わずかによく通る音になっているんだ。

役割・位置楽器と鳴らし方
交響的絵画『サトコ』練習番号12弱音器付きヴィオラ。変ニ長調、弱奏の短いダンスの主題。
後のオペラ版『サトコ』第6場同じ旋律をイングリッシュホルンが担当。比較すると、わずかによく通る音。
『管弦楽法の基本』第2巻 No.6:交響的絵画サトコ:弱音器付きヴィオラの舞曲
『管弦楽法の基本』第2巻 No.6:交響的絵画サトコ:弱音器付きヴィオラの舞曲(画像を押すと拡大)
『管弦楽法の基本』第2巻 No.6(b):交響的絵画サトコ:弱音器付きヴィオラの舞曲
『管弦楽法の基本』第2巻 No.6(b):交響的絵画サトコ:弱音器付きヴィオラの舞曲(画像を押すと拡大)

リムコフ博士:こちらは交響的絵画の方の譜面だ。「V-le. con sord.」が弱音器付きヴィオラで、短い舞曲の旋律を受け持つ。クラリネットやハープの和音、チェロの伴奏と役割が違うね。オペラ版の譜面を示した図ではないので、両者の伴奏が同じだとは読み取らないようにしよう。

クマニコル:それなら、この旋律は最初からイングリッシュホルンにした方がよかった、ということですか。

リムコフ博士:よく通ることだけで優劣は決められないよ。クマ君も、最初のヴィオラの色が好きだと言ったね。その色を生かしたい場面と、少し通る別の声がほしい場面とでは、選ぶ理由が違う。

重ねる案と、任せ直す案を混同しない

クマニコル:ヴィオラを残して、イングリッシュホルンも一緒に吹けば、両方のよさが手に入りそうですが。

リムコフ博士:それは重複による混合音色を選ぶ案になる。この比較で示されているのは、弱音器付きヴィオラによる主題と、イングリッシュホルンによる同じ旋律だ。二つを同時に重ねた効果まで、そこから同じものとして扱ってはいけない。

クマニコル:担当を替えるつもりだったのに、いつの間にか足し算で考えていました。

リムコフ博士:まずは二つの声を別々に考えよう。もとの弦の色を残したいのか、木管の声へ任せ直したいのか。その選択ができてから、重ねる必要があるかを考えればよい。ヴィオラの旋律だからといって、自動的に他の楽器で補強する必要もないんだ。

「少し通る」を「いつでも強い」に読み替えない

クマニコル:イングリッシュホルンは、弱音器付きヴィオラより必ず目立つ、と覚えてよいですか。

リムコフ博士:そこまで広げないことだね。ここでは、同じ短い舞曲主題を扱った具体例を比べている。「わずかによく通る」という違いを手がかりにするのであって、どんな旋律、どんな周囲の響きでも同じ結果になるという規則ではない。

クマニコル:ほかの曲でも、イングリッシュホルンへ替えれば全部解決、と決めつけてはいけないんですね。

リムコフ博士:その通り。旋律の担当を選んだら、その声を邪魔しない伴奏との関係も確かめよう。通りをよくするために強弱を上げ続ける前に、どの音色でその主題を聞かせたいかをはっきりさせるんだ。

クマニコル:自分の編曲では、何を比べれば判断できますか。

リムコフ博士:まず、弱音器付きヴィオラのまま主題を聞かせたい案と、イングリッシュホルンに任せ直す案を分ける。前者では残したい弦の色、後者では少し通る別の声という目的を確認する。旋律を変える判断と、担当を替える判断を一度に混ぜないことだね。

クマニコル:短い主題の音を増やさなくても、どの声に任せるかで次の場面を考えられますね。よく通る方をいつも選ぶのではなく、残したい色から選んでみます。

作例の比較で原典が説明している範囲に絞っています。両作品の伴奏がすべて同一であることや、具体的な和音配置を示すものではありません。ヴィオラの重複を必須としない点は、同節の補足(COMMENT)によります。

出典:『管弦楽法の基本』第二章「メロディ」弦楽器によるメロディ b) ヴィオラ、作例 No.6 Sadko(交響的絵画)12 とオペラ版第6場。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。

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