【会話で学ぶ】和音の前に駆け上がる装飾を付けるには?弦の重音を全員に書くべきか

クマニコル:博士、目立たせたい和音の直前に、短い駆け上がりを付けたいんです。華やかにするなら、弦の全員に三音や四音の和音で動いてもらえばよいでしょうか?

リムコフ博士:クマ君、その書き方では、勢いを付けたいところが弾きにくくなりかねない。短い装飾音から和音へつなぐ場合、各奏者へ三音、四音の重音を持たせるのは避けたいんだ。まず各セクションを一音ずつの線として考えよう。

クマニコル:音を増やした方が、勢いも増すと思っていました。

リムコフ博士:和音を一度強く鳴らすことと、そこへ素早くつなぐことでは条件が違う。重音には発音の準備が必要で、単音と同じ軽快さを期待できない。華やかさを求めた変更が、動きそのものを重くしていないかを見るんだ。

装飾音は、着地点へ向かうために付ける

クマニコル:どんな形で書くことから始めればよいでしょう?

リムコフ博士:主となる音へ向けて、三つか四つの装飾音を付ける方法がある。基本は音階的に駆け上がり、着地点の音へスラーでつなぐ形だ。装飾だけを独立して派手にするより、どの音へ勢いを集めるのかを先に決めよう。

クマニコル:到着する和音が主役で、その前の短い音は助走なのですね。

リムコフ博士:そうだね。この方法は弦にも木管にも使える。何拍にもわたる別の主旋律を足すというより、ある一音や和音が現れる瞬間を強調する書き方として考えるとよい。

駆け上がり付きの和音は、弦の各セクションで分担する

クマニコル:一人ずつは単音でも、着いたところでは和音にしたいです。それは可能ですか?

リムコフ博士:もちろんだ。各セクションが一音を受け持てば、合奏全体では和音になる。ここでの強調の書法は、各セクションをdivisiしたり全員に重音を弾かせたりせず、セクションごとの単音を合わせる考え方なんだ。

役割・位置楽器と鳴らし方
各奏者へ三音・四音の重音を持たせて、短い装飾から接続する案装飾と重音の接続が技術的に難しくなり、欲しい勢いを得にくい。
各セクションが一音を担当し、合奏全体で和音を作る案個々の線は単音として扱い、群の組み合わせで和音を作る。
装飾音の方向三つか四つの音を音階的に上げ、主要な音へスラーで結ぶ形を基本にする。

クマニコル:和音の厚さを、一人の指に全部集める必要はないのですね。

リムコフ博士:その通り。何人が一度に何音を持つかと、オーケストラ全体で何音が鳴るかを分けて考えよう。全員が同じ和音を丸ごと持たなくても、和音としての強調はできる。

普通の短い和音と、駆け上がり付きの和音を区別する

クマニコル:でも、弦の重音は強いアクセントに向いているのですよね?

リムコフ博士:そうだよ。重音は強いアクセントに役立つ。けれども、その長所をどんな直前の動きへも持ち込めるわけではない。今回は短い装飾音を経て、滑らかに主音へ着く条件が加わっている。

クマニコル:和音だけならよい書き方でも、前の音とのつながりで難しくなるのですね。

リムコフ博士:よく分かったね。着地点の和音だけを切り取って演奏可能かを確認しても十分ではない。直前の装飾を含めた動作として読むことが必要なんだ。

重音の強い発音と、divisiで薄くする場合の基本的な違いは、弦の和音におけるdivisiと重音の使い分けを参照してください。

『皇帝の花嫁』の例では、弦が装飾を担う

クマニコル:こうした強調は、実際の作品にもありますか?

リムコフ博士:『皇帝の花嫁』の練習番号142には、弦楽器による装飾音の例が挙げられている。どれほど多くの音を詰めたかではなく、装飾が次の音へどう勢いを付けるかに注目して読もう。

参照作例:The Tsar’s Bride(『皇帝の花嫁』)、142、No.254。ここでは本文が説明する装飾と強調の考え方を扱っています。具体的な音名やセクション別の旋律を創作して作例の再現とはしていません。

クマニコル:その前から全員をずっと細かく動かしておけば、もっと派手になりますか?

リムコフ博士:いまの目的は、一つの着地点を強調することだったね。全体をいつも同じ細かさにすると、その場所へ向かう短い装飾としての役割が曖昧になる。どこを強めたいかに戻って、必要なところへ付けよう。

クマニコル:着地点を決め、短い単音の動きでそこへ向かい、和音はセクション同士で分担する。これなら「華やかにしたい」と「弾きやすい」を一緒に考えられます。

リムコフ博士:そうしよう。音の数を増やす前に、勢いをどこへ集め、誰に何音ずつ任せるかを決める。それが、短い装飾を生き生きした強調へ変える配分だよ。

出典:『管弦楽法の基本』第四章「ある音や和音の強調」と第一章「弦楽器」の重音奏法に関するCOMMENT。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。

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