【会話で学ぶ】盛り上がりでピッコロを休ませてもいい?高い旋律を弦に残す方法
クマニコル:盛り上がる旋律にピッコロを重ねました。派手さを保つには、フレーズの最後までずっと吹かせた方がよいですか?
リムコフ博士:ずっと重ねる必要はない。第1ヴァイオリンが高い旋律を続けるなら、その途中でピッコロだけを休ませることもできる。高い音域の線を残すことと、ピッコロの音色を鳴らし続けることを分けて考えるのじゃ。
『不死身のカシチェイ』の強奏で、ピッコロの休符を見る
『管弦楽法の基本』第1巻「弦と木管の重複」は、第2巻No.87『不死身のカシチェイ』105を、多くの楽器で旋律をオクターブ重複する実例として挙げています。今回は、重なる楽器の一覧だけでなく、途中で重複が途切れる箇所を読みます。

クマニコル:いちばん上の Fl. picc. がピッコロですね。105のところに ff があります。
リムコフ博士:そうじゃ。下の Viol. I、第1ヴァイオリンにも ff がある。ところが、ピッコロの段を右へ追うと、中央付近に一小節の休符があり、次の小節も途中までは休んでいる。その間、第1ヴァイオリンは旋律を続けているぞ。
クマニコル:ピッコロが消えると、高い旋律そのものもなくなると思っていました。
リムコフ博士:この配分では、その高さを弦も受け持っている。だからピッコロを休ませても、高い線をまるごと取り除くことにはならない。残る声部を確認してから、重複する一員を休ませるのじゃ。
同じ高さの弦があるか、実音で確かめる
クマニコル:ピッコロとヴァイオリンの音符は、譜面では同じ高さに見えません。どこを比べればよいでしょう?
リムコフ博士:ピッコロは書かれた音より1オクターブ高く鳴る。総譜の見た目だけでなく、実際に鳴る高さへ直して比べる必要がある。原典が示すこの重複の骨格では、最上段を第1ヴァイオリンとピッコロが担う。
| 旋律の高さの層 | 原典が挙げる組み合わせ |
|---|---|
| 上 | 第1ヴァイオリン+ピッコロ |
| その1オクターブ下 | 第2ヴァイオリン+フルート+オーボエ |
| さらに1オクターブ下 | ヴィオラ+チェロ+クラリネット2本+イングリッシュホルン+ファゴット |
これは重複の基本的な組み合わせを整理したものです。全員が掲載部分の最初から最後まで、すべての音を同時に演奏するという意味ではありません。
クマニコル:ピッコロだけを抜く場合と、第1ヴァイオリンまで抜く場合では、残るものが違うのですね。
リムコフ博士:その通り。ピッコロだけを休ませるなら、高い線は弦に残せる。両方を休ませるなら、上の層そのものがなくなる。音色の重複を減らす操作と、旋律の音域を狭める操作は別なのじゃ。
休符のあとには、ピッコロが途中から戻る
クマニコル:いったん休んだら、次の大きな区切りまでピッコロを入れない方がよいですか?
リムコフ博士:この譜例では、休符のあと、小節の途中から細かな上向きの動きに加わる。高い弦の旋律が続いているところへ、ピッコロが再び重なるのじゃ。必ず小節頭から全員をそろえる、という書き方ではない。
クマニコル:最初に重ねる、途中で抜く、また加わるという流れですね。
リムコフ博士:そうじゃ。参加する位置を音型に合わせて読むとよい。なお、この休符を作曲者が置いた理由を、ここだけで「息継ぎのため」「音量を下げるため」と断定することはできない。譜例から確実に分かるのは、弦が続ける間にピッコロの参加が変わっていることじゃ。
チェロ全員も、同じ旋律に参加しているわけではない
クマニコル:重複の表にはチェロとありますが、総譜にはチェロの段が二つありますね。
リムコフ博士:上は V-c. I、下は V-c. II e C-b. とある。旋律を動かすチェロと、コントラバスと一緒に低い支えを受け持つチェロを分けている。楽器名だけを覚えて、全員へ同じ旋律を書けばよいわけではないぞ。
クマニコル:高いピッコロの休符だけでなく、下に何が残るかも確認するのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。旋律は複数の高さで動き、金管の長い音や低い支えもある。ピッコロ一つを休ませることと、合奏全体を静かにすることを同じに考えないようにしよう。
自分の曲では「抜いたあとに残る線」を先に読む
クマニコル:ピッコロがずっと鳴っている編曲を直すなら、どこから考えればよいでしょう?
リムコフ博士:まず、ピッコロを休ませたい箇所で、同じ高い旋律を他の楽器が続けているかを確認する。続いているなら、高い線を残して色を変える案を検討できる。ピッコロしかその高さを担っていないなら、休ませたときに音域も変わることを織り込む必要がある。
クマニコル:同じ高さにヴァイオリンがあれば、どこで休ませても大丈夫ですか?
リムコフ博士:そうとは限らない。弦がその旋律を必要な表情で奏せる音域か、伴奏の中で役割を果たせるかは残る。譜例の組み合わせを写すだけでなく、弦だけになる部分と、ピッコロが戻る部分を続けて確かめるのじゃ。
クマニコル:派手にしたいから全部の楽器を最後まで重ねる、と考えていました。高い旋律を保ちながら、参加する音色を変える方法もあるのですね。
リムコフ博士:その通り。山場の中にも、重複を変える余地がある。どの音域の線を残すかを決めたうえで、ピッコロの参加する場所を選ぼう。
出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦と木管の重複」、第2巻No.87。オクターブごとの楽器の組み合わせは原典本文に基づきます。ピッコロの休止・再参加とチェロの役割分担は実際の譜例の分析で、作曲者の意図を断定するものではありません。自作へ適用する際の確認順序は学習上の補足です。
木管同士の上下関係は、ピッコロとフルートのオクターブが自然なのはなぜ?で整理しています。
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