【会話で学ぶ】ハープのアルペジオを目立たせるには?持続和音を残す伴奏の作り方
クマニコル:ハープのアルペジオを聴かせたいのですが、その前から鳴っている管楽器の和音は全部切った方がよいですか?
リムコフ博士:全部を同時に切る必要はない。ハープに細かな動きを任せ、周囲には弱い持続和音を残す方法がある。さらに、管楽器を一度に休ませず、弦の持続音へ重なりながら移っていく書き方もあるぞ。
『クリスマス・イヴ』では、ハープの入りに弦も加わる
『管弦楽法の基本』第1巻「弦楽器による和声」は、第2巻No.100『クリスマス・イヴ』161を、弦の各パートを分けて持続和音を作る例として挙げています。ここでは同じ譜例を、ハープが入り始める前後の役割分担から読みます。

クマニコル:Arpe. がハープですね。初めの二小節は休んで、そのあとに上下へ動く音型が始まります。
リムコフ博士:その入りの f に注目しよう。一方、その下のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロには p の長い音が現れる。ハープの動きを弦全体でなぞるのではなく、動くハープと、和音を保つ弦を同時に始めているのじゃ。
管楽器は、ハープの最初の音と同時に全員が休むわけではない
クマニコル:ハープの入りを見ると、上の管楽器にもまだ音が残っていますね。これでハープを聴かせられるのですか?
リムコフ博士:少なくとも、この譜例ではハープを無伴奏にしていない。管楽器側は p の持続音、ハープ側は f の分散した動きという違いがある。音があるかないかだけでなく、強さと動き方の違いを読むのじゃ。
クマニコル:管楽器の和音は、そのままずっと残すのですか?
リムコフ博士:休む時点を分けている。ハープが入る小節で、オーボエ、ファゴット、トランペット、トロンボーンとチューバの持続音は短く終わり、そのあとは休符になる。一方、フルート、クラリネット類、ホルンはさらに長く音を保つ。
クマニコル:ハープに道を譲るにも、管楽器を一斉に消すのではないのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。掲載部分の最後の小節では、残っていた管楽器も短い音のあとに休む。その間もハープは動き、弦の持続音は続いている。新しい響きが入る時点と、前の響きが消える時点をずらしているのじゃ。
| 譜例の時点 | ハープ | 周囲の和音 |
|---|---|---|
| 最初の二小節 | 休符 | 管楽器とコントラバスが弱く持続。 |
| ハープが入る小節 | fで分散和音を開始 | 弦の持続和音がpで加わる。一部の管楽器は短く音を残して休止。 |
| その後 | 上下する音型を続ける | フルート、クラリネット類、ホルンが弦と重なって持続。 |
| 掲載最後の小節 | 動きを続ける | 残った管楽器も休止し、弦の長い音は続く。 |
弦は一つの音ではなく、分けた声部で和音を保つ
クマニコル:下の弦には音符が何段も重なっています。全員がハープの音を伸ばしているだけではないのですね。
リムコフ博士:弦は複数の高さに分かれて和声を保っている。チェロには 3 V-c. soli と altri V-c. の別々の段があり、コントラバスにも div. とある。和音の音数だけでなく、どの奏者にどの声部を担当させるかまで指定している。
クマニコル:チェロの上の段は3人の独奏、下は残りの奏者ですね。
リムコフ博士:そうじゃ。ハープを聴かせる背景だからといって、弦を曖昧な一かたまりとして扱ってはいけない。長く残る各声部を、どの人数と高さで支えるかを決める必要がある。持続和音では、その釣り合いが長く耳に残るからじゃ。
「ハープだけにする案」と、何が違う?
クマニコル:全部休ませてハープだけにすれば、もっと分かりやすいのではありませんか?
リムコフ博士:ハープだけを聴かせたいなら、それも別の選択になる。ただし、この例にある弦が長く保つ和音や、管楽器との重なりは失われる。ここで学べるのは、背景の響きを残しながら、動きをハープに集中する配分じゃ。
クマニコル:弦にも同じ速さのアルペジオを加えたらどうでしょう?
リムコフ博士:それでは動く音型に参加する楽器が増え、この例の「ハープが動き、弦が持続する」という区別が変わる。より多くの楽器で音型を鳴らしたいのか、それともハープの動きそのものを聴かせたいのか、目的から決めよう。
自分の編曲では、入りと終わりを別々に決める
クマニコル:この方法を試すとき、最初にどこを決めればよいでしょう?
リムコフ博士:まず、ハープの動きが始まる位置を決める。次に、その瞬間にも残したい持続声部を選ぶ。そして残した管楽器をいつ休ませるかを、ハープの入りとは別に決める。全部同時に入って全部同時に終わる、と決め付けないことじゃ。
クマニコル:強弱は、譜例のようにハープf、背景pと書けば完成ですか?
リムコフ博士:それだけで常に同じ結果になるわけではない。持続和音の音域、声部数、弦を分けたあとの人数が変われば条件も変わる。この譜例の強弱を出発点にしながら、ハープの動きが聴こえ、残した和音も役割を果たすかを確かめるのじゃ。
クマニコル:ハープを目立たせるために周囲を全部消すのではなく、動かす担当と伸ばす担当、それぞれの終わり方を決めるのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。ハープの登場を、音の追加だけで考えない。前から残る音、新しく加わる音、先に休む音を分けると、伴奏の組み立て方が具体的になる。
出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦楽器による和声」、第2巻No.100。原典本文はこの例を弦の持続和音と分割の実例として挙げています。ハープの入りと管楽器の休止時点を比較する説明は、掲載譜例に基づく分析です。無伴奏にする案との比較と編曲の確認順序は、学習上の補足です。
分割した弦の声部と低音の人数配分については、上の弦をdivisiにしたら、低音だけ重くなった?も参照してください。
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