【会話で学ぶ】静かな伴奏に大太鼓とシンバルを使うには?『アンタール』の弱奏リズム

クマニコル:静かな伴奏にリズムを付けたいのですが、大太鼓やシンバルを入れたら、急に大げさになりませんか?

リムコフ博士:楽器名だけで大げさになるとは決められん。大太鼓とシンバルを pp で使い、別の打楽器と発音する位置を分担する実例がある。周囲も弱いピッツィカートや持続音にしている。強い一撃を足す場面とは、強さもリズムの仕事も違うのじゃ。

『アンタール』では4種類の打楽器にppを指定する

『管弦楽法の基本』第1巻は、第2巻No.73『アンタール』第3楽章40をホルンの旋律の例として挙げています。ここでは同じ譜例を、旋律の下で刻まれる弱い打楽器のリズムという観点から読みます。

第2巻No.73『アンタール』。ppのトライアングル・タンバリンとシンバル・大太鼓が異なるリズムを奏し、弦のピッツィカートと低音の持続を伴う。
『管弦楽法の基本』第2巻 No.73『アンタール』第3楽章40、原書75頁上部。(画像を押すと拡大)(画像を押すと拡大)

クマニコル:打楽器の段が四つ並んでいます。上から何の楽器ですか?

リムコフ博士:Triang. がトライアングル、Tamb-no. がタンバリン、Piatti がシンバル、Cassa が大太鼓じゃ。この四つに pp が付いている。まず、名前の強そうな印象ではなく、実際の強弱と音符を読もう。

クマニコル:弱く鳴らせば、4種類とも同じリズムにしてよいのでしょうか?

リムコフ博士:この譜例はそうなっていない。上の二つが同じリズム、下の二つが同じリズムを奏する。その二組は発音する場所が異なる。四つの楽器を一つの大きな打点へまとめず、二つの動きに分けているのじゃ。

上の二つが休むところで、下の二つが動く

クマニコル:休符まで見た方がよさそうですね。

リムコフ博士:最初の小節を横に追ってみよう。トライアングルとタンバリンが短い2音を鳴らしたあと、そちらが休むところでシンバルと大太鼓の2音が入る。二組の音色が、違う位置を受け持つことがわかるじゃろう。

クマニコル:シンバルと大太鼓は、曲の山場で一度だけ強く打つものと考えていました。

リムコフ博士:ここでは、休符を含む弱いリズムを繰り返している。大きな一撃とは別の使い方じゃ。ただし、この配分をそのまま forte にすれば、同じ表情が保たれるという意味ではない。pp という条件と、二組に分けた発音位置を一緒に読むのじゃ。

組み合わせ掲載譜例での仕事
トライアングル+タンバリン同じ短い音型。発音と休符を組み合わせる。pp。
シンバル+大太鼓上の組とは異なる位置の音型を、2種類でそろえる。pp。
第1・第2ヴァイオリン+ヴィオラdivisiのピッツィカートで動く。pp。
ハープ音を上下に分けて動かす分散した伴奏。p。
チェロ+コントラバス長い低音をつなぐ。pp。

弦はピッツィカートでも、低音まで全員が刻むわけではない

クマニコル:打楽器の下では、弦も短く刻んでいますか?

リムコフ博士:ヴァイオリンとヴィオラには div. pizz. があり、弱いピッツィカートで動く。しかし、一番下の V-c. e C-b.、チェロとコントラバスは長い音を保っている。上の弦の刻みと、低音の持続を分けているのじゃ。

クマニコル:大太鼓も、その長い低音と同じように鳴り続けるのですか?

リムコフ博士:違う。掲載部分の大太鼓は、音符と休符を組み合わせた打点の列じゃ。低音弦が持続する中で、大太鼓は別の時間の形で動く。低い楽器どうしだから、必ず発音も持続も同じにするわけではない。

打楽器の数より、旋律・刻み・持続の役割を確認する

クマニコル:ホルンのほかにフルートやクラリネットも動いていて、かなり多くの楽器がありますね。

リムコフ博士:そうじゃ。フルートの細かな動き、クラリネットの動く線と長い音、ファゴットの持続、ハープの分散した動きがある。その中で、打楽器は四つの旋律を増やすのではなく、二組の発音のまとまりを作っている。何種類あるかだけで密度を判断しないことじゃ。

クマニコル:自分の静かな伴奏にも、この4種類を全部入れればよいですか?

リムコフ博士:まず、弱い音のまま二つの位置に違う色を付けたいのかを考えよう。その目的があるなら、この分担が参考になる。一か所のアクセントだけが必要なら、この4種類とリズムを一式そのまま写す理由はない。必要な仕事がある楽器を選ぶのじゃ。

試す順番は「二組の位置を決める→周囲との釣り合いを聞く」

クマニコル:実際に書いたあと、どのように確認するとよいでしょう?

リムコフ博士:まず二組のリズムだけを見て、どこで鳴り、どこで休むかを確かめる。次に、ピッツィカートやハープの動きと合わせる。最後に旋律へ戻り、弱い打楽器がその流れを支えているか、意図せず注意を奪っていないかを聞こう。

クマニコル:大太鼓とシンバルを使うかどうかより、弱さと発音する場所、その周りの伴奏を一緒に考えるのですね。

リムコフ博士:その通り。pp と書くだけで、どんな編成でも同じ釣り合いになるわけではない。しかし、この実例は大太鼓とシンバルにも、静かなリズムを担わせられることを具体的に示している。楽器の強い印象だけで、使い道を狭めなくてよいのじゃ。

出典:『管弦楽法の基本』第1巻「金管楽器によるメロディ」、第2巻No.73。打楽器二組のリズムと伴奏の役割は実際の譜例の分析です。選択・確認の手順は、その実例から整理した学習上の補足です。図の音符・強弱・奏法指定は改変していません。

打楽器をほかの楽器へなじませる一般的な条件は、打楽器を加えると浮いてしまうのは、なぜ?をご覧ください。

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