【会話で学ぶ】オーケストラで鐘や大砲の音を表すには?打楽器の選び方

クマニコル:博士、音楽の途中で、遠くの鐘や大砲が鳴るような場面を作りたいんです。大きな打点なら、大太鼓とシンバルを一緒に鳴らせばよいですか。

リムコフ博士:クマ君、まず何の音を表したいのかを決めよう。オーケストラの和音を華やかに強めたい場合と、物語の中で鳴っている音を示したい場合とでは、楽器を選ぶ理由が違うからね。

クマニコル:同じ大きな音でも、音楽のアクセントなのか、場面の中の出来事なのか、という違いですか。

リムコフ博士:その通り。劇中の大砲を表す実例には、シンバルを伴わない大太鼓がある。大きな音だからといって、いつもの組み合わせを全部加える必要はないんだ。

大砲の例では、大太鼓にシンバルを加えない

クマニコル:どの場面で使われていますか。

リムコフ博士:『サルタン皇帝』の練習番号139とその後だよ。舞台袖から演奏する楽器の例として、大砲の音を模す大太鼓が挙げられている。ここでは「シンバルなし」という条件まで含めて、配分を見ておきたい。

クマニコル:大太鼓だけでは物足りない、と考えてシンバルを足したら、その実例とは違う選択になってしまうんですね。

リムコフ博士:そうだね。組み合わせを変えれば、響きの性格も変わる。この例を参考にするなら、まず大太鼓が担う大砲の効果を理解しよう。合奏を派手にするための金属的な響きまで、自動的に足さないことだ。

教会の鐘の音を、ゴングで表す原典の実例

クマニコル:鐘の音なら、ベルを用意しなければいけませんか。

リムコフ博士:鐘を表す選択も一つに限られない。『イワン雷帝』第一幕の練習番号57とその後では、ゴングが教会の鐘を模して使われる。一方、『見えざる町キーテジの物語』の練習番号181とその後などには、ベルの例があるよ。

クマニコル:ゴングとベルは、どちらも鐘の場面に使えるなら、同じ音だと考えてもよいんでしょうか。

リムコフ博士:そこは分けよう。劇中で何を表すかが共通でも、使っている楽器まで同じではない。ゴングの例を知る意味は、「鐘という言葉から一種類の楽器へ即決しなくてもよい」と分かることだ。同じ響きの代用品として無条件に交換できる、という意味ではない。

役割・位置楽器と鳴らし方
大砲の音を模す大太鼓。シンバルなし。『サルタン皇帝』139以降。
教会の鐘を模すゴング。『イワン雷帝』第一幕57以降。
ベルを使う例『見えざる町キーテジの物語』181以降など。鐘を表す手段を比較する手がかり。

効果の楽器を選んだら、伴奏も見直す

クマニコル:担当楽器が決まったら、あとは普通のオーケストラの上へ、その音を重ねれば完成ですか。

リムコフ博士:実際に舞台袖へ楽器を置く場合には、伴奏の力強さを、その楽器に合わせて調整する必要があるよ。どの楽器を使うかだけを決めて、ピットの伴奏を無関係に書き進めてはいけない。

クマニコル:鳴らす場所まで含めた役割なんですね。大きな打楽器だから、どんな伴奏にも勝つだろうとは考えない。

リムコフ博士:そうだね。このような場面では、音楽全体に厚みを足すことより、劇中の音がどのように聞こえるかを考える。伴奏との関係を整えることも、楽器の選択に続く仕事なんだ。

クマニコル:舞台の演出を伴わない曲で参考にするなら、何を持ち帰ればよいですか。

リムコフ博士:まず「この音は何のために鳴るのか」を分けて考えることだね。和音を強める音なのか、鐘や大砲という出来事を示す音なのか。後者を考える際には、実例の楽器と組み合わせを手がかりにしよう。ただし、舞台袖の配置による効果まで、楽器名だけで同じになるとは考えないことだ。

迫力を増やす前に、表したいものを絞る

クマニコル:迫力が欲しいから全部重ねるのではなく、まず大砲なら大太鼓だけの例を確かめる。鐘も、ベルという名前だけで決めず、ゴングを使った場面と比べる。そう考えると選び方が具体的になりますね。

リムコフ博士:うむ。音を増やす前に、その一音が場面の中で何を意味するかを決めよう。楽器の選択、重ねる音の有無、伴奏との釣り合いを、その目的から考えるとよい。

ここで挙げた楽器と参照箇所は、原典の舞台上・舞台袖の配置に関する実例です。現在の上演一般の慣行や、録音上の距離感を作る処理の方法を示すものではありません。

出典:『管弦楽法の基本』第五章「歌」楽器の舞台上・舞台袖への配置、Ivan the Terrible 第一幕57以降、Tsar Saltan 139以降、Legend of Kitesh 181以降。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。

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