【会話で学ぶ】チェロの旋律にフルートを加えるなら、旋律と和音のどちらを任せる?

クマニコル:博士、チェロが歌う場面にフルートを加えたいんです。チェロと同じ旋律を吹かせれば、編曲が豊かになりますか。

リムコフ博士:クマ君、フルートに参加してもらう方法は、旋律の重複だけではないよ。チェロを歌の担当に残し、フルートをホルンとともに和声の側へ置く実例を見てみよう。

クマニコル:旋律の色を混ぜるのではなく、旋律の周りの響きを作るんですね。

リムコフ博士:そうだね。管楽器を加えるとき、主旋律を一緒に演奏させるか、和声の骨格を担わせるかを分けて考えると、配分の選択肢がはっきりする。

『アンタール』56:チェロの旋律とフルート・ホルンの和音

クマニコル:具体的には、どの楽器が何をしているんですか。

リムコフ博士:『アンタール』の練習番号56では、チェロがA弦でcantabileの旋律を奏する。同じ箇所の和声骨格には、フルート3本とホルン4本が使われているんだ。まずはこの二つを、歌う線と和声を形作る響きとして整理しよう。

役割・位置楽器と鳴らし方
歌う線チェロ。A弦によるcantabile。
和声骨格フルート3本とホルン4本。
配分の着眼点フルートを加えることを、チェロの旋律の重複と同一視しない。

クマニコル:チェロだけを見ていたら、歌い方の例。管楽器だけを見たら、和音の組み合わせの例。でも同じ場面として読めるんですね。

リムコフ博士:その通り。誰が旋律を担い、誰が和声を担うのかを合わせて読むと、楽器名の一覧から編曲の姿が見えてくる。チェロの旋律にフルートを足したいと思ったときにも、まず何の役を加えたいのかを問えるようになるよ。

同じ旋律を重ねる案とは、結果が違う

クマニコル:では、フルートをチェロと同じ旋律へ置く案は、間違いでしょうか。

リムコフ博士:その案の良否を、この例だけで決めることはできない。ただ、旋律を重複すれば、その線の響きや色を変えることになる。一方、この例のように和声骨格へ参加させるなら、担当する音楽的な仕事が違う。何を豊かにしたいのかを先に決めよう。

クマニコル:「フルートを加える」だけでは、まだ編曲の方針になっていないんですね。旋律を補いたいのか、和声の響きを作りたいのかを決めないと。

リムコフ博士:うむ。チェロの歌を中心にしたいなら、まずその歌の性格を確認する。そこから、管楽器には同じ線を歌ってほしいのか、別の役割で支えてほしいのかを選んでいくんだ。

本数だけを自分の曲へ移さない

クマニコル:自分の曲でも、チェロに旋律を書いて、フルート3本とホルン4本へ和音を配れば、同じように成立しますか。

リムコフ博士:本数の組み合わせだけでは、和声の配分は完成しないよ。どの高さにどの声部があり、それぞれがどう進むかを見る必要がある。フルートとホルンが参加しているという事実と、個々の音の配置まで決まっていることは別だ。

クマニコル:四本のホルンが四つの音を担当して、フルートが上から三つを重ねる、と決めてしまうのも早いですか。

リムコフ博士:その通り。この整理で確認したのは、使われる楽器と和声骨格という役割だ。それだけから、各楽器の具体的な音や重複の仕方を作ってしまってはいけない。実際の配分を調べるなら、その箇所の総譜で上下関係と進行を確かめよう。

チェロの色を選ぶ判断と、伴奏を選ぶ判断

クマニコル:A弦のチェロの歌を考えることと、フルートやホルンの伴奏を選ぶことは、関係しながらも別の判断なんですね。

リムコフ博士:そうだね。まず欲しい旋律の声を選び、その声との関係で和声を考える。伴奏を立派に作ってから、チェロの強弱を無理に変えて聞こえるようにする、という順序にしない方がよい。

クマニコル:この例を、自分の編曲を見直すときの問いにするとしたら?

リムコフ博士:「追加するフルートに、主旋律を補強させたいのか、それともホルンと和声を形作らせたいのか」と問うてみよう。後者を選ぶなら、チェロの歌が前景として聞こえるように、その周囲の和声を配分する。楽器を足すという曖昧な判断を、役割を選ぶ判断へ変えるんだ。

クマニコル:チェロの歌を残したまま、管楽器が別の仕事で参加する姿が分かりました。全員に旋律を重ねる前に、誰に和声を任せるかを考えてみます。

第二章と第三章が同じ練習番号56について示す記述を合わせ、旋律と和声骨格の役割を整理した記事です。上の表は全パートの総譜や具体的な和音構成を再現するものではありません。

出典:『管弦楽法の基本』第二章「メロディ」弦楽器によるメロディ c) チェロ(Antar 56)、第三章「和声」A. 木管と金管の組み合わせ(No.152 Antar 56)。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。

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