【会話で学ぶ】弦の主旋律を保ったまま盛り上げるには?オクターブ重複と金管の和声
クマニコル:博士、歌うような弦の旋律を、そのまま大きな頂点へ持っていきたいんです。盛り上げるなら、主旋律をトランペットへ渡すしかありませんか?
リムコフ博士:クマ君、弦が歌い続ける形でも力強い響きは作れるよ。まず、旋律を誰に渡すかと、その旋律をどう広げるかを分けよう。第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、その下のヴィオラやチェロへ、一オクターブずつ離して旋律を配る方法がある。
クマニコル:主役の楽器群を変えずに、旋律そのものを高低へ広げるのですね。
リムコフ博士:そうだ。この二オクターブにわたる重複は、緊張感を伴う豊かなカンタービレに使える。基本的にはフォルテの場面を考える配分だよ。小さく繊細な歌へ、いつでも同じ厚さを加えるという意味ではない。
『アンタール』No.32:弦の旋律を三つの音域へ重ねる
クマニコル:具体的に、どの楽器をどこへ置くのですか?
リムコフ博士:『アンタール』の練習番号65では、上から第一ヴァイオリン、その一オクターブ下に第二ヴァイオリン、さらに一オクターブ下にヴィオラとチェロを置く。ヴィオラとチェロは同じ高さを受け持つんだ。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 上の旋律 | 第一ヴァイオリン |
| 一オクターブ下の同じ旋律 | 第二ヴァイオリン |
| さらに一オクターブ下の同じ旋律 | ヴィオラとチェロがユニゾン |
クマニコル:四つのセクションを使うけれど、旋律の高さは三段なのですね。
リムコフ博士:その通り。四声の和音を作っているのではないよ。同じ旋律が三つの高さで鳴り、最も下の段には二つのセクションが参加する。人数の重なりと、音高の段数を区別して読むと分かりやすい。
クマニコル:ヴィオラやチェロを使うのなら、これは低音を大きくする配分ですか?
リムコフ博士:ここでは弦が歌う旋律の配分を見ているんだ。低い楽器が参加したというだけで、すべてを伴奏のバスとして読むのは早い。どの線を受け持っているかが大切だよ。
金管は、旋律を奪わずに和声を担える
クマニコル:これだけ弦を旋律へ回したら、和音はどうするのですか?
リムコフ博士:同じ練習番号65には、トロンボーンの和音の上でホルンと木管が交互に演奏する配分もある。弦の旋律だけを切り離さず、管楽器が和声にどう参加しているかも一緒に見よう。
クマニコル:力強くするために金管を使うことと、金管に主旋律を任せることは、別なのですね。
リムコフ博士:そうだね。弦の歌を中心にしたまま、トロンボーンの和音や、その上のホルンと木管の受け渡しを組み合わせられる。全員が弦の旋律を同じようになぞることだけが、大きな響きの作り方ではないんだ。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 歌う旋律の高低の広がり | 第一ヴァイオリン/第二ヴァイオリン/ヴィオラ+チェロ |
| 和声の支え | トロンボーンによる和音 |
| その上で交替する響き | ホルンと木管 |


リムコフ博士:弦の入りを追うと、第一、第二、ヴィオラとチェロの三つの高さが見える。同時に、トロンボーンの持続する和音と、ホルンや木管の動きも見よう。旋律を広げる仕事と和声を支える仕事が、同じ譜面の中で分かれているんだ。
上の表は『アンタール』練習番号65について本文に記された役割の整理です。各楽器の実音、和音の構成音、リズムを再現した譜例ではありません。
弦を旋律に集めた分、伴奏の担当も考える
クマニコル:自分の曲でも、この三段の弦だけを先に作ればよいでしょうか?
リムコフ博士:その前に、いま第二ヴァイオリンやヴィオラが何をしているか見てごらん。内声や伴奏を担当しているなら、それを旋律へ参加させた後、和声がどうなるかを考える必要がある。旋律の配分だけを移しても、同じ全体像にはならないよ。
クマニコル:弦の旋律を太くしたら、もともとの和音の支えがなくなった、ということも起こるわけですね。
リムコフ博士:そう。だから、この例では、旋律の広がりと和声の支えを結び付けて考えるとよい。弦の歌を広げる工夫と、管が受け持つ仕事を一緒に読む。自分の曲では、必要な声部が残っているかを確かめながら配分するんだ。
さらに低く重ねれば、もっとよい頂点になる?
クマニコル:コントラバスにも同じ旋律を足せば、さらに立派になりそうです。
リムコフ博士:広げるほど必ずよくなるとは考えないようにしよう。三、四オクターブへ及ぶ重複は別の重さをもたらす。いま必要なのが豊かに歌う旋律なのか、非常に重い響きなのかを確かめてからだね。
クマニコル:まず三段の弦で歌を作り、管には和声の仕事を考える。大きくしたいからと、全部を同じ線へ集めないようにします。
リムコフ博士:それがよい。主旋律を弦に保ちたいという目的から、誰が歌い、誰が和音を支えるかを決めよう。金管の参加は、弦の歌をやめる合図である必要はないんだ。
全セクションとdivisiの選択は、弦のオクターブの配分を扱う通常解説をご覧ください。
出典:『管弦楽法の基本』第二章「2オクターブ重複によるメロディ」No.32と第三章「木管と金管の組み合わせ」のAntar 65。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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