【会話で学ぶ】歌に対旋律を付けるには?独奏楽器と和音の担当を選ぶ
歌の後ろに和音を置くだけでは、少し物足りない。歌を厚く重ねるのではなく、もう一本の旋律が寄り添うようにしたい――そんなときの楽器選びを、実際の作品で示される組み合わせから考えます。
クマニコル:博士、ゆったり歌う旋律に、別の旋律を一本添えたいんです。弦も木管も使えますが、どれを選ぶのがよいでしょう。
リムコフ博士:クマ君が欲しいのは、歌の音を補強する楽器ではなく、歌と並んで音楽を進める相手だね。cantabile、つまり歌うようなアリアに、独奏楽器を組み合わせる考え方が役に立つよ。
クマニコル:歌と同じ音をずっとなぞるのではなく、その楽器にも旋律としての流れがある、ということですね。
リムコフ博士:そう。歌と楽器が、それぞれの線を持って関わる。こうした伴奏は対位法的に書かれることも多い。ただし、独奏楽器を一つ選んだだけで、二本の線の関係まで自動的に決まるわけではないよ。
高い歌には、高い楽器だけを選ぶの?
クマニコル:ソプラノの歌なら、相手もヴァイオリンやフルートのような高い楽器に限ったほうがいいですか。
リムコフ博士:その必要はない。ソプラノとオーボエの組み合わせもあれば、ソプラノとヴィオラの組み合わせもある。歌の声種だけから、相手を一つに決めることはできないんだ。
クマニコル:ソプラノとヴィオラも使えるんですね。音を同じ高さでそろえることばかり考えていました。
リムコフ博士:同じ旋律を重ねるときと、別の旋律を受け持つときでは、選ぶ出発点が違う。相手の楽器がどんな線を歌い、声とどんな関係を作るのかを考えよう。
次の表は、原典で独唱とソロ楽器の組み合わせとして挙げられる作品例です。個々の例が全区間で別旋律を奏するという意味ではなく、相手となる音色を検討するための参照先です。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| ソプラノとオーボエ | 《雪娘》練習番号50(原典譜例No.41も参照) |
| アルトとイングリッシュホルン | 《雪娘》練習番号97 |
| バリトンとバスクラリネット | 《雪娘》練習番号243・246(原典譜例No.47–48も参照) |
| ソプラノとヴィオラ | 《金鶏》練習番号163(原典譜例No.226も参照) |



リムコフ博士:No.41では、歌が言葉を伸ばしている間のオーボエの動きを見よう。No.47・48では、バスクラリネットと歌のリズムがいつ一致し、いつ離れるかを比べる。楽器名の組み合わせだけでなく、二つの線の関わり方を読むんだ。
クマニコル:この組み合わせから、歌の声種に合うものを選べばよいですか。
リムコフ博士:候補にはなるけれど、一覧を当てはめるだけでは十分ではないね。その楽器は旋律を主導することもできる。小さな飾りとして加えたつもりでも、音楽の性格や方向を決める大きな役になるんだ。
クマニコル:歌の後ろへ何か足す、というより、もう一人の歌い手を選ぶように考えるんですね。
歌と独奏楽器が旋律を担うとき、和音の担当を分ける
クマニコル:独奏楽器に動きがあると、和音を支える役が足りなくなりませんか。ほかの楽器にも、その旋律を重ねておきたい気がします。
リムコフ博士:和声を支えることと、動く線を重ねることは別だよ。歌の伴奏には、持続和声と旋律的な動きを、違う楽器へ配分する方法がある。たとえばヴィオラとチェロのdivisiを和声にし、クラリネットを動く線にする組み方だ。
クマニコル:クラリネットの旋律を弦に重ねなくても、弦は弦で和声を支えられるんですね。
リムコフ博士:逆向きの配分もできる。クラリネットとファゴット、あるいはファゴットとホルンで持続和声を作り、ヴァイオリンやヴィオラに旋律的な動きを任せる。まず役割を分けると、何を増やす必要があるのかを判断しやすい。
次は、原典が独唱伴奏の配分として示す組み合わせです。上の作品例の伴奏を再現した表ではありません。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 動く線をクラリネットへ | 和声:ヴィオラとチェロのdivisi/旋律的な動き:クラリネット |
| 動く線を弦へ | 和声:クラリネットとファゴット、またはファゴットとホルン/旋律的な動き:ヴァイオリンまたはヴィオラ |
別旋律なら、自由に増やしても大丈夫?
クマニコル:声部を分ければ、歌の邪魔をせずにいろいろ動かせそうですね。もう一つ別の楽器にも旋律を足してよいですか。
リムコフ博士:役割を分けられることと、何本でも増やしてよいことは違う。伴奏が複雑になるほど、同時に鳴る楽器も増えやすい。歌の言葉と独奏楽器の線が聴き取れるかを、まず二者の関係で確かめよう。
クマニコル:足りない気がするたびに別の旋律を足すと、最初に選んだ相手が誰だったのか、わからなくなりそうです。
リムコフ博士:そうだね。とくに音量を抑えた優美な歌では、伴奏もシンプルにし、音色を重ねて複雑にしすぎないことが大切だ。独奏楽器の個性を使うつもりなら、その個性が聴こえる余地を残そう。
「誰を足すか」の前に、その人に何を歌わせるか
クマニコル:まず、歌とは別に聴かせたい線を考える。その線の相手として楽器を選び、和音は別の役割として配分する。こうすれば、楽器の名前だけで迷わずにすみますね。
リムコフ博士:うん。歌にもう一本の旋律を添えるなら、声種だけから相手を固定しない。作品で使われる組み合わせを手掛かりに、その旋律が音楽をどちらへ進めるのかまで考えて選ぼう。
歌と同じ旋律を重ねる場合の判断は、「歌の旋律を楽器でなぞれば、歌いやすくなる?」で解説しています。
出典:『管弦楽法の基本』第五章「歌声とオーケストラの組み合わせ」独唱の伴奏、ソロ楽器との組み合わせ。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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