【会話で学ぶ】二つの旋律が入れ替わる境目だけ、和音が濁るのはなぜ?
前の旋律が消え切らないうちに、次の旋律が始まる。別々に聴くと自然なのに、重なる境目だけ和音が濁る。その問題を、旋律だけでなく伴奏の音色も含めて考えます。
クマニコル:博士、前の旋律を小さくしながら次の旋律を出したいんです。でも、その境目だけ伴奏が濁ってしまいます。
リムコフ博士:クマ君、二つの旋律だけを見ていないかな。それぞれの旋律に伴奏が付いていれば、境目では異なる和音も同時に鳴り得るね。まず、前の旋律に属する伴奏と、次の旋律に属する伴奏を分けて見よう。
クマニコル:旋律をなめらかに交代させても、伴奏の方で別の和音が重なっているんですね。
リムコフ博士:そう。一本の旋律を別の楽器へ渡すときとは、考える対象が違う。ここでは異なる二つの音楽が、短い間だけ同居する。その時間に何が残っているかが問題になるんだ。
旋律の交代時に、前の伴奏の和音が残っていないか確認する
クマニコル:旋律の受け渡しを考えて、前の音を少し長く残しました。それと同じように伴奏も伸ばしたのですが。
リムコフ博士:その伸ばした和音と、新しく入る和音を一緒に読んでみよう。前半と後半を別々に見ると自然でも、重なるところには両方の構成音がある。旋律に付いていた休符や減衰だけを見て、伴奏の持続を見落とさないことだ。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 前の音楽 | 消えていく旋律と、それに属する和音。 |
| 次の音楽 | 現れる旋律と、それに属する和音。 |
| 重なる時間 | 両方の旋律だけでなく、異なる和音も同時に鳴り得る。 |
| 音色の見直し | 旋律の交代に合わせ、伴奏の音色も切り替える方法を検討する。 |
クマニコル:伴奏を全部同じ楽器にしておけば、つながりは自然になると思っていました。
リムコフ博士:同じ音色を保つことが役立つ場面もあるね。ただ、今回のように異なる音楽が交代するときには、伴奏の音色も同時に変える方法がある。和音同士のぶつかりが、一つの色に固まって聞こえるのを避ける手掛かりになる。
旋律だけ替えず、伴奏との組を考える
クマニコル:メロディの楽器を替えたら、伴奏も必ず全部替えるのですか?
リムコフ博士:毎回そうする規則ではないよ。今扱っているのは、二種類の旋律が交代し、その伴奏も重なってしまう場面だ。その交代に合わせて伴奏の色も変えると、音楽の切り替わりと音色の切り替わりを対応させられる。
クマニコル:同じ旋律の続きなのか、別の旋律への交代なのかを、最初に分けるんですね。
リムコフ博士:その通り。前の旋律と前の伴奏、次の旋律と次の伴奏。この二組として読めば、旋律のパートだけを直しても解決しなかった理由が見えてくる。
原典は、休符を挟む交代や、一方が小さくなり他方が大きくなる場面での伴奏の音色変更を説明しています。作例には『サルタン皇帝の物語』No.272–274などを挙げています。付されたCOMMENTでは、音の距離感と和声の聞こえ方の関係にも触れています。
違う音色なら、どんな和音でも重ねてよい?
クマニコル:それなら、二つの伴奏の音色さえ違えば、不協和は気にしなくてよいのでしょうか?
リムコフ博士:そこは慎重に考えよう。音色が異なることは、不協和音をなくすことではない。別々にはよい音楽でも、一緒に鳴らした結果まで必ずよいとは限らないんだ。
クマニコル:どれくらい短く重ねれば大丈夫、という目安はありますか?
リムコフ博士:すべての場面に通用する長さの規則はないよ。音域、音色、強さ、実際に重なる時間を一緒に見て、音楽として判断する必要がある。音色を替えたという理由だけで、長く残る衝突を放置しないことだ。
クマニコル:濁りを消す魔法ではなく、二つの音楽を聞き分けるための工夫なんですね。
リムコフ博士:うん。まず重なった音を確認し、そのうえで色の違いを使う。鳴っている音を調べず、楽器名だけ交換する順序にはしないようにしよう。
境目の前・途中・後を続けて確かめる
クマニコル:自分の編曲を直すときは、三つの場所に分けて見ればよさそうです。前の旋律だけのところ、重なるところ、次の旋律だけのところ。
リムコフ博士:よい整理だね。それぞれで旋律と伴奏の組がどう変わるかを追おう。とくに重なるところでは、前の和音がいつ終わり、次の和音がいつ入るかを確かめる。
クマニコル:音色を替えたら、前後のつながりまで聴き直すんですね。
リムコフ博士:そう。境目だけの不協和が目立たなくなっても、新しい旋律の入り方が場面の意図から離れたら、別の問題ができてしまう。切り替わりを一つの時間の流れとして考えよう。
クマニコル:今までは旋律を交代させることだけに集中していました。伴奏まで二組として読み直してみます。
リムコフ博士:それが今回の答えだよ。別の旋律へ移る境目では、和音も交代しているかもしれない。音の重なりを確かめ、必要なら旋律と一緒に伴奏の色も変える。それで修正すべき場所が具体的になる。
出典:『管弦楽法の基本』第4章「管弦楽法の実践」各声部の取り扱い・和声骨格の装飾(付されたCOMMENTを含む)。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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