合唱の旋律を太くするには、ユニゾンとオクターブをどう選ぶ?
合唱の旋律に厚みが欲しいとき、同じ音を歌う人数を増やすか、オクターブで上下に広げるかは大きな分かれ道です。どちらも旋律を補強しますが、声部の組み合わせまで同じにしてよいわけではありません。
ユニゾンでは近い声域を重ね、オクターブでは声域の離れた組み合わせを生かす。まずこの違いを押さえると、単に人数を増やす以上の判断ができます。リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』の合唱の扱いをもとに、旋律のまとめ方を考えてみましょう。
同じ旋律でも、同じ高さとは限らない
ユニゾンとは、ここでは二つ以上の声部が同じ高さで同じ旋律を歌うことです。オクターブ重複では、旋律の動きをそろえながら、一方を一オクターブ上または下に置きます。譜面の線が増えても、異なる旋律が増えるわけではありません。
この区別は、合唱に何を担当させるかを決める際にも役立ちます。旋律を一本に集中させたいのか、和声の各音を分担させたいのか。それによって、同じ四つの声部の使い方が変わります。四部合唱だから常に四つの異なる音を出す、という考え方から離れてよいのです。
まず旋律をどこに置くかを決め、その高さで無理なく働ける声部を選びます。そのうえで、同じ高さを厚くするか、上下の広がりを加えるかを考えましょう。最初に全員参加を決めてから音域を合わせると、旋律の動きが窮屈になりやすくなります。
ユニゾンはソプラノとアルト、テノールとバスから
自然なユニゾンの組み合わせとして考えやすいのは、ソプラノとアルト、あるいはテノールとバスです。同じ音に声を集めることで、密度のある大きな響きを作り、旋律を目立たせられます。
ここで大切なのは、旋律が高いからソプラノだけ、低いからバスだけ、と名前で判断しないことです。二つの声部が同じ旋律を共有できる音域に収まっているか、フレーズ全体で確かめます。一つの音が重なるだけでは、ユニゾンの旋律を最後まで自然に運べるとは限りません。
ソプラノとアルトを旋律に集めたら、残る声部には和声を任せることができます。必要に応じて残りを分割すれば、旋律を太くしたために和声の声部数が不足する問題にも対処できます。旋律の補強と和声の充実は、同じ人たちに全部を負担させる必要がありません。
ただし、分割すれば一つの声部を歌う人数は減ります。旋律側だけを大きくし、支える和声の均衡を失っていないかも確認します。合唱の分割と和音の配置については、三声・四声の和音のバランスの記事で詳しく扱います。
アルトとテノールは、隣り合うから自然とは限らない
声部の並びを見ると、アルトとテノールも隣同士です。それならユニゾンに向いていそうですが、ソプラノとアルト、テノールとバスと同じ感覚では扱えません。
この組み合わせのユニゾンには特異な音色が生まれ、通常の自然な混声合唱の響きを目指す場合には使いどころが限られます。音域が重なることと、組み合わせとして望む響きになることは別の問題です。
したがって、音が出せるかどうかだけでなく、そこで特別な色合いを求めているかを考えます。なめらかに旋律を補強したい場所で、声域が近いという理由だけからこの組み合わせを選ばない、という判断ができます。
これは禁止事項を覚えるための注意ではありません。ユニゾンは音高を一つにする方法ですが、声の組み合わせによる色の違いまで消してしまう方法ではない、と理解すると応用しやすくなります。
オクターブではソプラノとテノール、アルトとバス
一オクターブの重複で自然に響くのは、ソプラノとテノール、アルトとバスの組み合わせです。それぞれの声域の違いを生かしながら、同じ旋律の輪郭を上下でそろえられます。華やかで力のある旋律を考える際の基本になります。
ユニゾンに向いた組み合わせを、そのままオクターブに開けばよいわけではありません。ソプラノとアルト、テノールとバスは、互いの声域の隔たりが比較的小さいため、一オクターブ離すと動ける範囲が狭くなります。
ある和音の一瞬では収まっても、旋律が上昇したり下降したりしたところで、一方の声部だけが厳しい位置に入る可能性があります。重複の可否は、出発点の音ではなく、旋律の行き先まで含めて判断します。
女声だけ、男声だけの合唱では、その限られた組み合わせでオクターブを作ることもあります。ただし混声のソプラノとテノール、アルトとバスほど自由に長く続けられるとは考えず、使う長さと音域をよく見ます。
同じパートを二分しても、音域の問題は残る
ソプラノを第一・第二に分ければ、オクターブで重ねる自由が大きく増すように思えるかもしれません。しかし、同じ種類の声を二群に分けても、声域の性質まで別物になるわけではありません。
そのため、同じ声種の第一と第二をオクターブで動かす扱いは一般的な出発点にはなりません。分割できることと、広く離れた二本の旋律を自然に保てることを分けて考える必要があります。
バスでは、声部の進行によって第一と第二のオクターブが現れる場合や、低い声部をオクターブで補強する場合があります。この例も、どの声部でも同様にできるという意味ではなく、低音の進行や補強という目的と結びつけて理解しましょう。
声域の上限・下限そのものについては、合唱の音域をソロと同じに考えないための記事も参考になります。ここでは、その音域を複数の声部でどう共有するかが中心です。
合唱全体で同じ旋律をユニゾン・オクターブで歌う
合唱全体を一つの旋律に集中させるなら、ソプラノとアルトをユニゾンにし、その一オクターブ下をテノールとバスのユニゾンにする方法があります。上にも下にも同じ高さに集まる組み合わせを作り、それをオクターブで結ぶわけです。
この配置では、四声が別々に和音を作る場合とは違い、旋律の輪郭が前に出ます。丸みのある響きを目指せる一方、合唱の中だけで四声の和声を同時に作っているわけではないことにも注意しましょう。
もう少し和声的な動きを含めたい場合には、ソプラノとアルトを三度で重ね、その二本をテノールとバスがそれぞれ一オクターブ下で重複する方法があります。上の三度の組を下にも写す形で、華やかで活気のある響きにつながります。
この二つは、全員が参加する点では同じでも、一本の旋律を上下で共有するか、三度の二本を上下で共有するかが違います。人数だけでなく、耳に届く線の数を意識すると選択の理由が明確になります。
二オクターブに広げる前に確かめたいこと
合唱全体で二オクターブにわたる重複を作る方法もあります。たとえばソプラノとアルトを上に集め、その下にテノール、さらに下にバスを置く形です。別の形として、上をソプラノ、中をアルトとテノール、下をバスにする配分もあります。
ただし、二オクターブに広がること自体を目標にする必要はありません。上下の距離が増えるほど、それぞれが自然な位置を保ったまま同じ旋律を動けるかを確かめる必要があります。とくに中間に声を集める形では、組み合わせによる音色の性質も忘れないようにします。
旋律の幅、使いたい音量、どこを頂点にするかを先に見て、必要な範囲だけを選ぶのが考えやすい順序です。一本の線の充実が欲しいのに、広げることに気を取られて各声部の響きを失っては目的に届きません。
旋律そのものを、合唱向けに見直す
重ね方が適切でも、独唱を想定した旋律をそのまま渡せばよいとは限りません。合唱では音域と機敏さを慎重に扱い、短いフレーズの反復や、まとまりのあるリズムが有効な出発点になります。ソロの自由で長いフレーズとは、書き方の重心が異なるのです。
一方、複数の歌い手がいるため、全員がまったく同じ場所で息を継ぐ必要はありません。一人のソロでは切れ目が必要になる長さでも、合唱では各人が別々に息を継いで線を保てる場合があります。人数が増えることで難しくなる面と、可能になる面の両方があります。
音節の置き方や短い音からの跳躍にも注意が必要です。オクターブの上と下が歌える高さに入ったら終わりにせず、言葉と旋律がまとまりとして扱いやすいかまで確認しましょう。歌詞と息継ぎの関係は、音節を旋律に乗せるための記事で取り上げています。
旋律を重ねたあと、伴奏も自動的に重ねない
合唱の中で旋律を十分に補強したなら、次はオーケストラに何をしてもらうかを考えます。歌に参加している声部数と同じだけ、楽器の重複まで増やす必要があるとは限りません。
歌の旋律を楽器でなぞるかどうかは、合唱の内部でユニゾンにするか、オクターブにするかとは別の判断です。合唱をいつも楽器で重複しなくてもよい理由で、その関係を整理しています。
まず歌だけの配分を見て、旋律の密度と音域の広がりを確認する。それから伴奏を加える。この順番なら、重複の数を増やすことよりも、旋律が望む形で届くことを目標にできます。
体系的に学びたい方へ
合唱の旋律の重ね方を、ほかの楽器の性質や旋律・和声の配分とつなげて学びたい方には、『管弦楽法の基本』の書籍版・PDF版をご案内しています。
本文は『管弦楽法の基本』の該当箇所に基づく解説です。Amazonへのリンクにはアフィリエイトリンクを使用しています。

