弦のオクターブは、二つのセクションとdivisiをどう使い分ける?
弦の旋律を一オクターブ離して重ねるとき、第一・第二ヴァイオリンを使う方法と、divisiで分ける方法は、同じ結果になるでしょうか。譜面に並ぶ音高が同じでも、その音を何人で、どの楽器のどの弦で奏するかによって響きは変わります。
オクターブの配分では、上下の音高、人数、音域の性格を一組として考えます。 とくに高い旋律を支える場合と、薄い背景を作る場合では、同じオクターブでも目的が違います。
同音の補強と、オクターブの補強を分ける
第一・第二ヴァイオリンを同じ高さで重ねれば、同じ音を奏する人数が増えます。一方、一オクターブ離すと、旋律を二つの高さに置くことになります。どちらも重複ですが、増えるものが異なります。
同音ユニゾンでは、一つの高さに集まる充実した響きが中心です。オクターブでは、旋律の音域が広がり、上下それぞれの響きが一つの線を支えます。
したがって、強くしたいから重ねる、という理由だけでは配分を決められません。同じ高さを厚くしたいのか、高い線を下から支えたいのか、二つの音域を一緒に聞かせたいのかを考えます。
同音での重複については、第一・第二ヴァイオリンをユニゾンにすると、何が変わる?で詳しく扱っています。この記事では、高さが異なる二つの線をどう配るかに焦点を当てます。
高い旋律を、下のオクターブで支える
ヴァイオリンの非常に高い音域では、普通の音域にある豊かさが減り、旋律が周囲の合奏から浮いて聞こえることがあります。そこで、下のオクターブを加えると、表情と充実した響きを支えることができます。
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』では、第一・第二ヴァイオリンによるオクターブが、こうした高い旋律で多く使われることを説明しています。上の音をただ強めるのでなく、下の音域と結び付ける考え方です。
このとき、上下を同じように目立たせることだけが目的ではありません。高い線の輝きと、低い方の豊かな表情を、一つの旋律として聞かせることができます。
上の音が甲高く感じられるからと、全員へさらに強く奏するよう求める前に、どの高さが旋律を支えているかを見てみましょう。音量の増加と、音域の補強は別の選択肢です。
全セクションを使う場合と、divisiでは人数が違う
二つのセクションをそれぞれ一つの高さへ割り当てる場合に比べ、divisiした声部を使えば、一つの音を担当する人数が減ります。上下の音名が同じでも、旋律の強さや厚さは同じではありません。
原典では、divisiによるオクターブは、とくに小編成で音量が限られることに注意を促しています。譜面上の声部が二つあることと、十分な人数がそれぞれを支えていることを区別する必要があります。
小さな編成で細かく分けるほど、各線を弾く人数は少なくなります。大きな合奏の中で主要旋律を担わせるなら、どの程度の支えが必要かを確認します。
一方、人数が減ることは、いつでも欠点ではありません。透き通った薄い音が欲しい場合や、前景へ出てほしくない線では、その性格を目的として選べます。
薄いオクターブを選ぶ場合は、周囲との釣り合いを見る
divisiのオクターブを使うなら、何の助けによって旋律が聞こえるかを考えます。木管が重ねられている場合や、十分に高い音域の場合など、ほかの条件が関わります。
また、全体が弱い響きなら、少ない奏者による上側の線も聞こえる余地があります。原典には、上側をヴァイオリンのソロ二人、下側を残りの第一ヴァイオリンとフルートに分ける例が示されています。
この例を、上側はいつも少人数でよいという一般則にしないでください。全体がピアニッシモであることを含めて成立する配分です。人数だけを抜き出すと、別の場面では必要な線が埋もれる可能性があります。
少ない人数で成立する理由は、人数以外の条件にもあります。 強弱、音域、伴奏の厚みを一緒に読むことで、薄い配分を意図的に選べるようになります。
超高音を全員へ任せない配分もある
原典の超高音の作例には、第一ヴァイオリンの一つか二つのプルトだけが上のオクターブを奏し、ほかの奏者は下を担当してよい、という説明があります。上の難しい音を全員が担当することだけを成功の条件にせず、上下の響きの組み合わせとして考えています。
この配分では、高い音の甲高さを抑えながら、低い方の表情豊かな質感を強調できます。上の人数を減らすことが単なる妥協ではなく、響きの質を整える選択にもなるわけです。
ただし、この例は極端な高音という条件に結び付いています。普通の音域の主旋律まで、理由なく同じ少人数へ替えるものではありません。何の問題を解決するための人数配分なのかを確かめると、全セクション、divisi、少人数の上声という違いを目的に合わせて使い分けられます。
下側が低くなったら、ヴィオラを候補にする
下のオクターブがヴァイオリンの最低音を越える場合には、ヴィオラが候補になります。上をヴァイオリン、下をヴィオラへ渡すことで、旋律を必要な高さに置けます。
ここで、第二ヴァイオリンをどちらへ重ねるかによっても性格が変わります。第一・第二ヴァイオリンを上側、ヴィオラを下側にすれば、上声をより輝かしくする配分になります。
反対に、第一ヴァイオリンを上側、第二ヴァイオリンとヴィオラを下側に置けば、低い方へ豊かで歌うような質感を加える方向になります。
この二案は、同じ三つのセクションを使っていても同一ではありません。上を明るく聞かせたいのか、下の歌い方を充実させたいのかが、第二ヴァイオリンの置き場所を決める理由になります。
チェロを下に置く場合は、使う弦の色も考える
ヴァイオリンとチェロによるオクターブは、表情豊かな旋律で使われます。チェロが高い方のA弦やD弦を用いるような配分では、その歌う性格が重要になります。
チェロは低い楽器だから低音の支え、とだけ考えると、この配分の意味を見落とします。下側のオクターブであっても、チェロ自身にとっては高い方の弦を使い、表情を担う場合があります。
そのため、上下のどちらが低いかという相対的な関係と、それぞれの楽器にとってどの音域かという関係を、両方確認します。
ヴィオラとチェロのオクターブもありますが、ヴァイオリンが別の役割を担っている場合など、編成全体の事情が関わります。音色だけでなく、ほかの声部へ誰を残しておきたいかも配分の条件になります。
同じ楽器を分けても、音色が均一とは限らない
ヴァイオリン以外の弦をdivisiして、同じ楽器の上下でオクターブを作る場合には、使う弦が異なり、音色の均質性が損なわれる点に注意が必要です。
同じ楽器名だから上下の色がそろう、という判断はできません。ヴィオラ、チェロ、コントラバスでも、どの弦のどの位置を用いるかが響きに関わります。
ここでは、原典の基本的な配分を学ぶ出発点として、安易に同じセクションを上下へ分割することを避け、別の組み合わせを考えます。必要な音域に自然な楽器を置いた方が、狙った均質さを得やすい場合があります。
例外的な混合配置も示されていますが、例外があることを理由に音域の性格を無視しないでください。その配分が何を補い、どの色を得ているかまで読むことが大切です。
上下それぞれを重ねると、別の充実感が生まれる
中音域の旋律では、上側を第一・第二ヴァイオリン、下側をヴィオラとチェロで重ねる配分があります。上下の各声部をそれぞれユニゾンで支えながら、全体としてオクターブを作ります。
この場合、単に音域を広げるだけでなく、上下の両方に混合した充実感が加わります。原典では、どこか厳粛な雰囲気の美しい音質として説明されています。
ただし、四つのセクションが旋律へ参加すれば、その分、別の伴奏や内声を担う余地は変わります。旋律の充実と、全体の配分を同時に考える必要があります。
一つの線を豊かにしたい場合と、複数の独立した線を聞かせたい場合では、同じ人数の使い方でも目的が違います。旋律を重ねる前に、曲の中で必要な声部を整理しましょう。
二オクターブ以上へ広げる前に、何を増やすかを決める
さらに高低を広げると、緊張感のある豊かな旋律や、重く荒々しい響きなど、別の性格を作れます。しかし、広くするほど常に豊かになると考えて、際限なく重ねるべきではありません。
とくに低音を何オクターブにも重ねると、バスを必要以上に重たくすることがあります。中声部の楽器まで低音の複製に使えば、その楽器が担うはずの別の役割も失われます。
この問題は、低音を厚くしたいとき、何オクターブも重ねていい?で詳しく扱っています。ここでは、まず一オクターブの上下で欲しい関係を作れるかを確かめましょう。
上下の音域、各声部の人数、使用する弦、周囲の伴奏。この四つを照合すると、二つのセクションを使うか、divisiで薄くするか、別の弦楽器へ渡すかの理由が明確になります。同じ音符の配列でも、誰がどう支えるかまで決めることが、オクターブの響きを作る作業です。
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