同じ不協和音でも、楽器の割り振りで鋭さは変わる?

同じ音を使った不協和音でも、どの楽器にどの音を担当させるかで、響きの鋭さは変わります。和音の構成音を変える前に、不協和な関係にある二つの音を、同じ種類の楽器が吹いているのか、違う種類の楽器に分けているのかを確かめてみましょう。

不協和音を豊かに溶け合わせたいのか、それとも緊張として前に出したいのか。楽器の割り振りは、この目的から決めます。 不協和音だから必ず柔らかくする、という考え方では、必要な鋭さまで失ってしまいます。

まず、和音の中のどの関係が気になるかを探す

和音全体を聴いて「きつい」と感じたとき、すぐに金管を減らしてしまうと、力強さや厚みまで変わります。まずは和音の中にある二度や七度の関係を取り出し、その二音を誰が受け持っているかを見ます。

たとえば、二つのトランペットが不協和な関係の音を吹いている配置と、その二音をトランペットとホルンに分けた配置は、音名が同じでも同じ響きにはなりません。楽器を分けることで、音のぶつかり方に別の性格を与えられます。

ここで大切なのは、問題を和音全体の好き嫌いで片づけず、具体的な二音の関係にまで戻すことです。バスを変えるべきなのか、音の間隔を直すべきなのか、同じ高さのまま担当楽器を変えればよいのかが、初めて区別できます。

もちろん、一つの二度だけを見て和音全体を判断することもできません。その二音がどの高さにあり、周囲にどのような音が置かれているかも一緒に確認します。割り振りは、和音の配置が整っていることを前提に考えるものです。

溶け合わせたい二音は、異なる楽器に分けて考える

金管の和声で二度や七度を含むとき、それらを異なる楽器に受け持たせることは、豊かで調和した響きを得るための手立てになります。リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』でも、この区別を金管の配分の要点として扱っています。

これは、不協和音を協和音に変えるという意味ではありません。二音の音程関係はそのままです。変わるのは、その関係をどのような音色の組み合わせで聴かせるかという点です。

たとえば、和音全体には厚みがほしいけれど、ある二音だけが鋭く目立つことは避けたい場面を考えましょう。その二音を同種の楽器だけにまとめず、和音に参加している別の金管へ振り分けると、響きの組み立てを見直せます。

ただし、機械的に一音ずつ違う楽器にすればよいわけではありません。楽器を移した結果、重要な内声が弱くなったり、別の声部だけが突出したりすれば、違う問題が生じます。二音の関係を調整したあとに、四声や多声の和音全体へ視点を戻してください。

原図では「音名」と「担当」を別々に読む

トランペット、トロンボーン、ホルン、テューバへ不協和音を配分した二つの譜例
『管弦楽法の基本』より。音程関係と、それを担当する楽器の組み合わせを分けて確認する。

原図には、トランペット、トロンボーン、ホルン、テューバへ音を配分した例が示されています。縦に並んだ音符を一度に眺めるだけでなく、まず不協和な関係の二音を探し、そのそれぞれがどの楽器の段に置かれているかを追ってみましょう。

次に、同じ和音のほかの音がどこへ置かれているかを見ます。不協和な二音の担当だけを決めても、残る構成音が偏れば、和音全体のまとまりは得られません。図は、一つの音程の処理を、金管全体の配置の中に置いて考えるための材料です。

この図を自分の譜面に使うときは、人数も音域も異なるまま外形だけを写さないようにします。「この二音はどの種類の楽器に分かれているか」「下の支えと上の響きはどう受け持たれているか」という関係を読み取る方が役に立ちます。

とくに、複数の楽器が同じ音を重ねている箇所では、五線の本数と和声の声部数は一致しません。一つの音を強めるための重複と、別の音を加えることを区別して読むと、図の情報を整理しやすくなります。

緊張が必要なら、同じ種類の楽器にぶつかりを任せる

反対に、不協和音の鋭さそのものを表情にしたい場面もあります。その場合、二本のトランペットに不協和な音を受け持たせることが効果を持ちます。先ほど避けようとした性質が、ここでは使いたい性質になります。

たとえば、柔らかな和声の流れの途中で、ある瞬間だけ緊張をはっきり示したいなら、その瞬間の不協和を過度に溶け合わせる必要はありません。音を穏やかにまとめることと、音楽の表情を適切に示すことは、いつも同じではないからです。

「よく溶ける配置」が、どの場面にも最良とは限りません。 不協和な関係を聴き手に感じさせたいのか、全体の厚い響きの中に含ませたいのかによって、選ぶ配分は変わります。

ここで「同じ種類なら必ず鋭い、違えば必ず柔らかい」という単純な規則にしてしまわないことも大切です。具体的な楽器、音域、強弱、周囲の配置を含めて考えます。二本のトランペットの例は、その中で緊張を生かす明確な選択肢です。

強弱や人数の問題と混同しない

不協和な二音を違う楽器に分けても、一方だけが極端に強ければ、和音のバランスは変わってしまいます。金管では、ホルンとトランペット、トロンボーンの釣り合いにも注意が必要です。

強い和声でホルンに同等の役割を持たせる場合には、二本をユニゾンにする配分が必要になることがあります。一方、弱い和声や、補助的な声部を埋める場合まで、すべて二本ずつにするわけではありません。

つまり「不協和な二音を異なる種類へ分ける」という判断と、「その声部に何人を配するか」という判断は別です。担当を決めたあとで、意図した二音が実際に釣り合うかを確認します。人数についてはホルンを二本ずつ重ねる条件で詳しく扱っています。

また、和音が鋭いからといって、ホルンを足せば必ず解決するとも考えないようにします。ホルンを重ねることには金管の響きを丸くすると同時に強める働きもあり、単に音量を引き算する操作ではありません。

一つの和音だけで決めず、前後の声部を追う

縦の響きが整っても、次の和音へ進むときに一つの声部だけが不自然に移動していれば、音楽の流れは整いません。担当楽器を変えるときには、その音がどこから来て、どこへ向かうのかも確認します。

たとえば、一つの不協和音だけを別の楽器へ振り替えると、それまで続いていた内声が途切れて聞こえる可能性があります。和音の一瞬の柔らかさを得るために、フレーズのつながりを犠牲にしていないかを点検しましょう。

配分を考えるときは、まず少ない声部の形に戻して進行を確かめ、その上で楽器を割り当てると整理しやすくなります。楽器を変えても和声の進み方そのものは直らない、という話は楽器を入れ替えても響きがよくならない場合につながります。

また、響きに穴があるために二音だけが目立っているなら、不協和の担当変更より配置全体の見直しが先です。金管の豊かな音色を生かすには、音と音の間をどのように満たすかという視点も欠かせません。

配分を変えるときは、ほかの条件を一度そろえる

自分の譜面で考えを確かめるなら、まず音の高さと長さ、和音の構成音を保ったまま、問題の二音の担当だけを見直してみます。音域も強弱も同時に変えてしまうと、響きの違いが配分によるものなのか判断しにくくなります。

たとえば、二本のトランペットに置いた二音のうち、一音をホルンへ移す案を作ります。その際、もともとホルンが担当していた音をどうするかも忘れずに考えます。担当の変更は、空いている楽器へ音符を移すだけでは済まず、和音の残りの声部にも関わるからです。

こうして別案を比べるとき、鋭さが減ったことだけを成功の基準にしないでください。主旋律が聴きやすくなったか、和音の芯は残ったか、前後の流れに合うかまで見ます。もともと緊張が必要な箇所なら、穏やかになった案の方が表情に乏しいこともあります。

最終的には、配分を変えた和音をフレーズの中へ戻して判断します。一つの和音を気持ちよく響かせることと、その瞬間を音楽全体の中で意味のある響きにすることを、切り離さないようにしましょう。

書いた和音を見直すときの順序

最初に決めるのは、柔らかく豊かな和音にしたいのか、緊張を明確にしたいのかです。次に、二度や七度の関係を探し、その二音を同じ種類の楽器が受け持っているかを確認します。

柔らかさを求めるなら、異なる楽器への配分を検討します。緊張を求めるなら、二本のトランペットなど、ぶつかりを積極的に示す組み合わせを考えます。その後で、各声部の人数、音域、強弱、前後の進行を確かめます。

この順序を守ると、和音を丸ごと弱くしたり、構成音を安易に削ったりする前に、配分だけで調整できる部分を見つけられます。変えたかった性格と、保ちたかった厚みを分けて考えられるからです。

不協和音は、隠すべき失敗ではなく、どの程度表に出すかを選べる表情です。 音名だけで和音を決めず、その二音を誰に語らせるかまで考えると、同じ和声にも明確な方向が生まれます。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:金管楽器による和声。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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