ホルン4本の和音に、低音楽器を足す必要はある?
ホルン四本で和音を書いたとき、いちばん下が少し心細く見えて、ファゴットやテューバを加えたくなることがあります。オーケストラのバスはオクターブで重ねることが多いので、ホルンにも同じ補強が必要だと思うかもしれません。
しかし、ホルン四本による四声の和声は、それ自体で釣り合いの取れた組み合わせです。バスを下オクターブで重ねることは、初めから必須ではありません。 足す前に、四本だけでどのような和声を作っているかを確認しましょう。
四本が、四つの声部を受け持つ
ホルン四重奏では、四本がそれぞれ一声を担当して、四声の和声を作れます。同じ種類の楽器によるまとまりがあり、各声部のバランスを考えやすい編成です。
ここで「四本」と「四声」を区別しておきましょう。四本を二本ずつ同じ音へ重ねれば、基本の線は二声になります。一方、四本が別々の線を奏すれば、四声としての和声を作れます。
今回の出発点は後者です。四本を使って一つの和声を構成しているのであって、ほかの強い金管に対抗するために二声を補強しているのではありません。
原図を、低音の追加なしで読む
次の図は、ホルン四本による和声の例です。「4 Corni」はホルン四本を意味します。この節のホルンは実音で示されているため、図に書かれた高さを、実際の和音の配置として読むことができます。

四つの声部を、下から上へ確認してみてください。さらに低い楽器の段を加えなくても、この四声で和声を構成しています。バスの一オクターブ下に音符がないことを、欠落と考える必要はありません。
もちろん、この図だけで、どの旋律や進行でも無条件にうまくいくという意味ではありません。実際のフレーズでは、音域や低音の動きも考えます。それでも、低音の追加を前提にしない基本形を知っておくことには意味があります。
金管では、隙間の少ない配置を基本にする
金管の和声では、音と音の間に大きな隙間を作らず、密集した配置を基本に考えます。金管同士の音色の溶け合いは、木管の場合ほど問題になりませんが、広く離した配置には別の響きの難しさがあります。
金管は豊かな音色を持つため、音の間隔が強く感じられると考えられます。そのため、同じ音色だから、どれほど離しても一つにまとまるとは考えないことが大切です。
ホルン四本の和声も、まずまとまった配置を出発点にします。低い音が欲しいからといって、四声のうち一つを極端に遠くへ離せばよいわけではありません。和声全体の間隔を見ます。
全体を、テナーからアルトの範囲で考える
ホルンの四声を書く際には、全体をテナーからアルトの音域に合わせることが基本になります。どの声部も、ホルンのよく働く範囲を使って、まとまった和声を作ります。
高い音や低い音が出せるというだけで、四声を両端まで広げないようにします。旋律の一瞬に使う特殊な高さと、均衡した和声を保つ範囲は、同じ判断ではありません。
したがって、バスが弱いと感じたときには、さらに低い楽器を足す前に、もとのホルンの配置を確認します。全体が適した範囲にあり、各声部が無理なく役割を果たしているかを見ることが必要です。
低いホルンへ、急速なバスを任せすぎない
ホルンの四声では、バス声部があまりに急速に動くことにも注意が必要です。低音域の動きは、ゆっくりした書法を基本に考えます。和音の一つ一つが演奏できても、その間をどう動くかは別の問題です。
ここで、低音の響きが足りない問題と、低音の運動が書法に合っていない問題を分けます。速いバスの動きをそのままにして下へ音を重ねても、ホルン自身が受け持つ線の条件は変わりません。
まず、バスの動きがこの編成に適しているかを確認してください。四本の和音としてのよさを生かすには、縦の配置だけでなく、低い声部が前後へ自然に進むことも大切です。
それでも低音を補強したいとき
特定の場面で、バスをオクターブで補強する必要があるなら、ファゴットを使う方向で考えます。ホルンの和声へ、トロンボーンやテューバを機械的に足すのが基本ではありません。
トロンボーンやテューバは響きが強いため、低音を支えるつもりが、ホルン四声の釣り合いを変えてしまう場合があります。補強の目的が、元の柔らかなまとまりを保つことなのか、別の重い響きへ変えることなのかを区別します。
低い楽器を足すことは、深さだけでなく、音色と力の関係も変えることです。必要な低音を得る一方で、何が変わるかまで含めて選ぶ必要があります。
テューバを使えない、という意味ではない
テューバには、ホルンと同じように丸みを帯びた音色があり、ホルンに加わったり、バスを単独で受け持ったりできます。また、低音の動きでは、ホルンより機敏に働けます。
したがって、テューバをホルンと合わせること自体を禁じる必要はありません。ただし、ホルン四重奏に何も考えず低い補強を足す場合と、テューバに適したバスを役割として与える場合は分けます。
全体が強めのパッセージでは、テューバをホルンより一段弱く指定する考え方があります。同じ金管でも、同じ強弱記号で釣り合うとは限らないことを示しています。
「補強」と「担当の変更」を区別する
ホルンのバスをそのまま残し、下に同じ線を加えるのは重複です。一方、別の楽器がバスそのものを受け持つなら、役割の配分が変わります。この違いは、総譜の音数だけでは見えにくいところです。
たとえば、テューバへ低音の動きを任せるなら、ホルン四本だけで完成した和声をそのまま補強した場合とは、全体の設計が異なります。どの楽器が基本のバスの線を持つかを明確にします。
この区別をしないまま足していくと、同じ低音の線へ不要な力が集中する場合があります。どの音が基本で、どれが重複なのかを整理することが、釣り合いの点検につながります。
ほかの金管の低音配置を、そのまま移さない
トロンボーンとテューバを含む金管の和声では、第三トロンボーンとテューバでオクターブのバスを作り、上三声を別に組み立てる配置があります。これは、その金管群に合う釣り合いを作るための方法です。
しかし、その低音の厚さを、ホルン四本の和声にも必ず持ち込む必要はありません。楽器の力や色が違えば、適切な声部の配分も変わります。
「金管のバスはいつもオクターブ」という形で覚えるのではなく、どの金管が全体を構成しているかを見てください。ホルン四声は、低い重複を足さなくても釣り合う出発点を持っています。
木管との組み合わせを選ぶ場合
ホルンの和声へ木管を組み合わせると、響きの性格は変わります。ファゴットとホルンは、柔らかな和声を作るためにも用いられる組み合わせです。
ただし、ファゴットを加える方法にも、ホルンのバスを重ねる場合と、別の和声音を分担する場合があります。低音補強と、四声を複数の音色で作ることを混同しないようにします。
ファゴット二本とホルン二本で、四つの別の音を作る考え方は、柔らかい混合和音の記事で詳しく扱います。ここでは、木管の追加も目的に応じて役割を決める必要があると押さえてください。
二本ユニゾンの原則とは、条件が違う
トランペットやトロンボーンと強奏で釣り合いを取るため、ホルンを二本ずつ重ねることがあります。しかし、これは、ほかの強い金管と一声ずつを分担する場面の考え方です。
ホルンだけの四声に、そのまま二本組を当てはめれば、使える独立した声部数が変わります。ホルンの人数だけでなく、その編成が何を作っているかを先に見ます。
いつ二本のユニゾンが必要かは、ホルンは常に二本ずつ重ねるべきかで説明しています。四本だけの和声と、混合した金管の中での補強を分けると、配置の判断が整理できます。
追加する前に、四本だけの役割を確認する
まず、四つの声部が適した音域で、まとまった配置になっているかを見ます。次に、低いホルンの動きが速すぎないかを確認します。音の配置と、前後の進行を合わせて点検します。
そのうえで、さらに低い重複が本当に必要かを考えます。必要なら、ファゴットによる補強などを検討します。テューバを使うなら、その力と動きに応じた役割や強弱を考え、単なる追加と区別します。
最後に、追加後の響きが、最初に欲しかったホルンの和声の性格を保っているかを確かめます。音が厚くなったことだけで、改善したと判断しないことが大切です。
ホルン四本の和音は、低音を足して初めて完成するものではありません。まず四声そのものの釣り合いを生かし、追加が必要な理由があるときに、適した楽器を選ぶ。 この順序を持つと、柔らかくまとまった響きを、不要な重さで覆わずに使えます。
金管の四声配置と他の楽器による補強は、『管弦楽法の基本』の書籍版・PDF版で学べます。
この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:金管楽器による和声。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

