パートが8本あれば、8声の和声ということ?

総譜に八本のパートが並び、それぞれに音符が書かれている。これを見て「八声の和声だ」と数えてしまうと、音楽の仕組みを必要以上に複雑に捉えることがあります。楽器の段数と、和声を構成する声部の数は、必ずしも一致しません。

八本のパートがあっても、基本は四声で、その一部を別の高さや別の楽器で重ねている場合があります。何人が鳴らしているかと、いくつの独立した線があるかを分けると、厚い総譜の中にも、明確な和声の骨組みを見つけられます。

パートは演奏の担当、声部は音楽の線

パートを見ると、どの楽器が何を演奏するかが分かります。一方、声部を見ると、その音がどの線に属し、前後の和音へどう進んでいるかが分かります。演奏の分担と、和声の構成は、別の角度から同じ譜面を見ているのです。

たとえば、一つの旋律をヴァイオリンとフルートが同じ高さで演奏しているなら、楽器のパートは二つあります。しかし、同じ線を重ねている限り、それだけで独立した旋律が二つ生まれるわけではありません。

和声でも同じことが起きます。一つの声部を別の楽器へ重ねたり、一オクターブ離して写したりすれば、鳴っている音やパートは増えます。それでも、基本の進行を構成している線が増えたとは限らないのです。

四声を土台として見る

オーケストラの和声を考える際には、四声を基本として捉える場面が多くあります。この「四声」は、必ず四つの楽器だけで演奏する、という意味ではありません。和声の要素を四つの声部へ整理できるという意味も含みます。

そのため、五本から八本のパートで書かれているように見えても、上三声の一つ、あるいは複数を一オクターブ上で重ねた形かもしれません。バスについては、一オクターブ下で重ねる方向になります。

もちろん、四声より複雑な要素が加わる場合もあります。どんな音楽でも無理に四本へ押し込むのではなく、まず基本の声部を見つけ、追加された要素が何をしているかを確認します。四声という見方は、複雑な響きを理解するための土台です。

原図を、左から右へ読んでみる

次の図は、四声の和声に重複を加えた例です。上の「A. 密集配置」と、下の「B. 解離配置」を分けて見てください。それぞれ最初に四声の形があり、その後に、重複する声部を増やした形が並んでいます。

四声の和声から一声部、二声部、三声部を重複した密集配置と解離配置の比較
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』より。Aは密集配置、Bは解離配置。各組の最初にある四声を基準に、増えた音を比較します。

まず上段の「四声の和声」を見ます。ここが基本となる形です。その右の「一声部の重複」では、元の声部の一つが上へ重ねられています。新しい和音を別に作ったのではなく、基本の和声を保ちながら、その一部を別の高さにも置いています。

次の段では「二声部の重複」「三声部の重複」へ進みます。音符の数は増えていますが、同じ和声の進み方が繰り返されています。見るべきなのは、増えた音符をすべて別の独立した線として数えることではなく、どの元の声部に対応するかです。

図の「一声部」は、全体が一声という意味ではない

図の見出しを読む際にも注意が必要です。「一声部の重複」と書かれているのは、一つの声部を追加で重ねたという意味です。和声全体が一声になったという意味でも、独立した五声へ書き替えたという意味でもありません。

「二声部の重複」「三声部の重複」も同じです。元の四声を土台にして、そのうち何声を重ねているかを示しています。見出しの数は、基本声部の総数ではなく、重複している部分の数なのです。

この読み方を総譜へ持ち込むと、音が多くても整理しやすくなります。まず元の線を見つけ、その線を共有するパートをまとめます。そのうえで、独自の進み方をする線が本当に増えているかを確かめます。

密集配置と解離配置では、重ね方が違う

図の下半分「B. 解離配置」も見てみましょう。こちらにも四声の和声があり、一声部、二声部を重複した例が続いています。上の密集配置と同じように、どの声部でも同じ感覚で上へ写せるわけではありません。

解離配置では、ソプラノ声部とアルト声部のオクターブ重複を基本として考えます。テナー声部を上へ重ねると、もとの開いた配置の中に密集した部分ができてしまいます。バスの重複も、響きを重くすることに注意が必要です。

つまり、重複は和声の骨組みを保つ方法であっても、配置への影響がないわけではありません。同じ音名を一オクターブずらしただけだから無条件に安全、とは考えず、その場所へ新たに音が置かれた結果を見ます。

バスだけは、方向にも気を付ける

上三声の重複は上側へ、バスの重複は下側へ、という方向の違いを押さえてください。バスは和声の低い支えとなる線であり、上三声の中へ無造作に混ぜることとは役割が違います。

また、バスを下で重ねていても、元のバスが上三声と交差すれば、その進行が不明瞭になります。低いところにコピーがあるから、元の線はどこへ進んでもよい、というわけではありません。

この問題は、総譜を単に低い音から高い音へ並べて見るだけでは、見落としやすいところです。元の声部と重複を区別したうえで、バスの線を横に追います。詳しい見方は、バスと上声部の交差についての記事で扱います。

一時的に同じ音へ集まっても、直ちに誤りではない

正しい進行の結果、複数の声部が一時的に同じ高さへ集まり、ユニゾンになることがあります。この場合、完全に均一な音色にはならなくても、各声部が正しく進んでいる限り、それだけで違和感が生じるとは限りません。

したがって、すべての瞬間で四つの声部を別々の高さに分離しようとして、音を動かす必要はありません。声部は、常に異なる音高を保っていなければ存在しない、というものではないのです。

この点でも、縦の音数だけを数えると判断を誤ります。ある瞬間に音が重なっていても、前後へ追うと別々の線である場合があります。反対に、異なる高さで鳴っていても、オクターブで同じ線を重ねている場合があります。

重複と独立した声部では、進行の見方が違う

オクターブで写された音は、元の線と同じ動きをすることが目的です。その並行した動きと、独立した声部同士の進行を、同じ意味で扱わないようにします。重複なのか独立声部なのかを先に区別する必要がある理由です。

一方、重複なら何をしてもよいわけではありません。扱いの繊細な音を重ねすぎれば、進行がぎこちなくなったり、意図しないアクセントが付いたりします。重複する音の和声上の役割を確認する必要があります。

とくに、ある一音だけを見て「和音の中にあるから増やせる」と判断すると、次の和音への関係を見落とします。重複も、前後を含めた線として考えることが大切です。音符のコピーと、和声として適切な重複は、同じではありません。

リズムが少し違っても、関係を調べる

重複されたパートが、すべて完全に同じリズムとは限りません。たとえば、チェロの動きが速く活発なとき、重複するバスを単純化する場合があります。細かな音をすべて追わなくても、基本の関係を保つ書き方です。

そのため、音符が一つずつ一致しないという理由だけで、すぐ独立声部と断定しないようにします。元の形と、単純化された形としての関係があるかを確認します。どの線を支え、どこで同じ進行を共有しているかを見るのです。

ただし、単純化された形と元の形を同時に鳴らす場合には、音の衝突や音色の違いも関わります。この問題は、装飾した旋律と基本形の重複で詳しく扱います。ここでは、表面の音符だけでなく、役割を読む必要があると押さえてください。

八本へ配る前に、四本で説明できるか

自分で編曲するときにも、この読み方を逆向きに使えます。まず基本の四声を決め、追加するパートがそのどれを重ねるかを説明できるようにします。八本の空欄を先に埋めてから、後で和声のつながりを探す順序にしないことが大切です。

たとえば、ある上声を一オクターブ上に置くなら、元の線と一緒に前後へ追います。そのパートだけ途中で別の進み方にしたくなった場合は、単なる重複のままなのか、新しい要素を加えたのかを考え直します。分類は楽器名ではなく、実際の音の役割によって決まります。

また、基本の四声へ戻して読めることは、追加パートが不要だという意味ではありません。重複は、音域を支え、響きの厚さや色を作るために働きます。構造上は同じ線でも、オーケストラとしての効果は異なります。骨組みの役割と、音色を作る役割を両方認めることが重要です。

総譜を整理して読む順序

まず、一番上から楽器名を数えるのではなく、基本の和声の線を探します。上声、内声、バスがどのように進んでいるかを見て、同じ線を共有するパートをまとめていきます。

次に、同じ高さのユニゾンなのか、一オクターブ離れた重複なのかを区別します。そのうえで、配置が過度に密集していないか、低音が重くなりすぎていないか、元の声部の進行が明確かを確認します。

最後に、本当に新しく加わっている線を見ます。もし独立した声部が途中から登場するなら、その入り方と続き方を考えます。フレーズ途中の声部追加は、一声足すと不自然になる理由で説明しています。

八本のパートは、八つの独立した声部とは限りません。基本の線を見つけ、その線がどこで、どの楽器に、どの高さで重ねられているかを読む。 この習慣を持つと、厚い響きの中にも、和声の明確な構造を見通せるようになります。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:管弦楽法の基本 第三章「和声」 概論、声部数について、和音構成音の配置。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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