【会話で学ぶ】ピアノとハープを一緒に使うとき、同じ音型を重ねるべき?

クマニコル:静かな伴奏にピアノとハープを両方入れたいです。二つとも同じアルペジオを弾けば、まとまるでしょうか?

リムコフ博士:同じ音型を重ねる以外にも方法がある。ピアノには細かな動き、ハープにはそれより少ない発音の音型を任せ、それぞれを別の楽器と組み合わせる書き方じゃ。二台を使う目的を、同じ音を厚くすることだけに限らなくてよい。

『五月の夜』では、ピアノとハープの動きが違う

『管弦楽法の基本』第1巻「ピアノとチェレスタ」は、ピアノを音色のために使い、ハープと組み合わせる方法にも触れています。第2巻No.80『五月の夜』第3幕Bbには、ピアノとハープを同時に使った総譜が掲載されています。

第2巻No.80『五月の夜』。ピアノがフルートと第1クラリネットの細かな動きを重ね、ハープとグロッケンが八分音符の音型を奏する。
『管弦楽法の基本』第2巻No.80『五月の夜』第3幕Bb、原書83頁。画像下端には次の譜例の見出しの一部が写っています。(画像を押すと拡大)

クマニコル:Piano と Arpa の二段ずつを比べればよいのですね。

リムコフ博士:まず最初の小節を見よう。ピアノの両手には八分音符と十六分音符を組み合わせた動きがある。一方、ハープには四つの八分音符による上下の動きがある。どちらも音を順番に鳴らしているが、発音の細かさは同じではないのじゃ。

クマニコル:同じ和声の中でも、二台に同じリズムを書いてはいないのですね。

リムコフ博士:そうじゃ。ピアノは p、ハープも p と指定されている。両方を大きく鳴らして競わせる場面ではない。そのうえで、音型の違いを持たせている。

ピアノの両手は、フルートとクラリネットにつながる

クマニコル:ピアノの上の段は、いちばん上のフルートと似ています。

リムコフ博士:ピアノの上声は第1フルートの動きを重ねている。下声は第1クラリネットの細かな音型に対応する。ピアノだけが独立した伴奏を弾くというより、木管の二つの線に鍵盤の音を加えていると読めるのじゃ。

クマニコル:クラリネットの音符は、ピアノと少し違う高さに見えますね。

リムコフ博士:譜例のクラリネットは B、変ロ調の楽器じゃ。書かれた音より長2度低く鳴るので、実音に直して比べる。総譜の音符の位置だけで同じか違うかを判断すると、重複を見落としてしまうぞ。

クマニコル:ピアノの両手を一つの伴奏として見るだけでは、木管との関係が分かりませんね。

リムコフ博士:上声と下声を別々に追うと、組み合わせが見える。ピアノに何を弾かせるかを決めるときも、両手それぞれがどの声部に関わるのかを考えるとよい。

ハープの八分音符は、グロッケンの動きと対応する

クマニコル:ハープの四つの音は、Glock. のリズムと同じですね。

リムコフ博士:その通り。グロッケンにも、四つの八分音符で上がって戻る形がある。ピアノと木管の細かな動きに対して、ハープとグロッケンには別の発音の並びがある。全員を同じ細かさにそろえていないのじゃ。

クマニコル:ピアノとハープの二台だけを比べるより、それぞれの相手まで見るのですね。

リムコフ博士:そうじゃ。グロッケンは pp、フルートと第1クラリネットも pp である。楽器の種類が多いからといって、全部を強奏させる書法ではない。音色を組み合わせることと、音量を大きくすることを分けて読むのじゃ。

旋律と低音まで、同じアルペジオにはしない

クマニコル:伴奏がいろいろ動いていますが、ほかの楽器は何をしていますか?

リムコフ博士:第2クラリネットとヴィオラは、ピアノの細かな動きとは別の線を一緒に奏している。第1巻がNo.80を挙げているのは、このヴィオラとクラリネットのユニゾンの実例としてじゃ。上には Alti と記された歌の声部もある。

クマニコル:ピアノやハープの音型だけで、曲の全部ができているわけではないのですね。

リムコフ博士:下ではチェロが arco で長い低音を保ち、コントラバスが pizz. で短い発音と休符を置いている。ヴァイオリンにも長い音がある。細かく動く層、別の線を歌う層、長く保つ層が並んでいることを見よう。

同じ音型を重ねる案とは、目的が違う

クマニコル:では、ピアノとハープに同じ音型を書くのは避けるべきですか?

リムコフ博士:そういう禁止ではない。一つの音型を二台で重ねたいのか、それともこの例のように異なる動きを同時に置きたいのかを選ぶのじゃ。二台使うという理由だけで、両方に同じ伴奏を配る必要はないということだよ。

クマニコル:違う音型にする場合、自由に動かしてよいのでしょうか?

リムコフ博士:別の動きでも、同じ場所で鳴る音の関係は確かめる。ピアノの上下声、ハープの上下声、それぞれが和声のどの音を受け持ち、旋律とどこで重なるかを見る。リズムを違わせることは、和声の確認を省く理由にはならない。

編曲では、二台の役割を一文ずつ書いてみる

クマニコル:自分の編曲で試すなら、どう整理すればよいですか?

リムコフ博士:「ピアノは木管の細かな二つの線を重ねる」「ハープは別の八分音符の音型を奏する」というように、仕事を一文ずつ書いてみよう。二つが同じ文になるなら、本当に同じ仕事を二台へ頼みたいのかを考える。

クマニコル:役割を決めたら、それぞれに合う音型を作るのですね。

リムコフ博士:そうじゃ。ハープには残響やペダルの準備があるから、ピアノで弾ける細かい動きが、そのまま適切とは限らない。この譜例の音を丸ごと移すより、二台を別の音型と別の相手へ結び付ける考え方を学ぶとよい。

クマニコル:ピアノとハープを使うかどうかだけでなく、どの動きを誰と重ねるかを決めるのですね。

リムコフ博士:その通り。二台が同時に鳴っていても、同じ役割である必要はない。それぞれの線と、周囲の楽器との関係まで決めれば、配分が具体的になる。

出典:『管弦楽法の基本』第1巻「ピアノとチェレスタ」「弦と木管の重複」、第2巻No.80。原典本文はNo.80をヴィオラとクラリネットの重複例として挙げています。ピアノ・ハープ・木管・グロッケンの音型比較は実際の譜例に基づく分析であり、この曲で民族楽器を模倣したという意図を断定するものではありません。編曲の整理手順は学習上の補足です。

ハープへの音型の移し替えについては、ハープにピアノの和音を、そのまま渡していい?も参照してください。

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