【会話で学ぶ】ヴァイオリンにチェロ1人だけを重ねるには?残りのチェロは低音へ
クマニコル:ヴァイオリンの旋律にチェロの質感を加えたいです。でも、チェロ全員を旋律へ回すと、低音の伴奏がなくなってしまいます。
リムコフ博士:チェロ1人を独奏としてヴァイオリンの旋律へ重ね、残りのチェロには低音を続けてもらう方法がある。独奏だから必ず独立した主旋律を弾く、とは限らない。同じセクションの中で、音色を添える役と低音を支える役を分けるのじゃ。
『五月の夜』では「Vc. Solo」と「Altri V-celli」を分ける
『管弦楽法の基本』第1巻「ヴァイオリン+チェロ」は、第2巻No.18『五月の夜』第3幕Lを、独奏チェロとヴァイオリンを組み合わせ、ヴァイオリンの音色にチェロの質感を加える実例として挙げています。

クマニコル:チェロが二段ありますね。上が Vc. Solo、下が Altri V-celli です。
リムコフ博士:Solo が独奏の1人、Altri が残りの奏者じゃ。上のチェロは、第1ヴァイオリン Viol. I の旋律を重ねる。下のチェロは長い低音を保っている。二段あるから人数を半分ずつに分ける、という指定ではないぞ。
クマニコル:上の旋律をチェロ全員で重ねる場合とは、人数の配分が違うのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。旋律へ回すのは1人で、低音を弾く奏者を残している。同じチェロのセクションに、同時に二つの仕事があることが、この例の要点じゃ。
独奏チェロは、新しい旋律を増やしていない
クマニコル:独奏パートには、ヴァイオリンと違う旋律を書いた方がよいのでしょうか?
リムコフ博士:この例では、第1ヴァイオリンと独奏チェロが同じ高さで同じ旋律を弾いている。この組み合わせでは、ヴァイオリンの音色にチェロの質感が加わる。新しい対旋律を増やすこととは目的が違う。
クマニコル:ソロと書いてあっても、チェロだけが前へ出る見せ場とは限らないのですね。
リムコフ博士:その通り。独奏という人数の指定と、音楽の主役を単独で担うことを分けて考えよう。ここでは、ヴァイオリンと一緒に一つの線を作るために1人を選んでいるのじゃ。
残りのチェロが持続し、コントラバスはピッツィカートで添える
クマニコル:低音はチェロとコントラバスが同じように弾き続けますか?
リムコフ博士:Altri V-celli の長い音に対して、その下の Cb. は pizz.、ピッツィカートじゃ。掲載部分では、コントラバスは発音のあとに休符を置き、残りのチェロは低音を持続する。低音の中でも、短い発音と長い支えを分担しているのじゃ。
クマニコル:チェロの1人を上へ出しても、下の響きはコントラバスの短い音だけにならないのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。上の独奏チェロだけを見るのでなく、残りのチェロを何に使っているかまで読む。旋律の重複と低音の持続が、一つの配分として成り立っている。
| 担当 | 掲載譜例での役割 |
|---|---|
| 第1ヴァイオリン | 歌う旋律を担当。 |
| 独奏チェロ1人 | 第1ヴァイオリンと同じ線を重ね、チェロの質感を添える。 |
| 残りのチェロ | 長い低音を持続する。 |
| コントラバス | ピッツィカートの発音と休符で低音を添える。 |
| ヴィオラ | ピッツィカートで上下に動く伴奏。 |
周囲は「全員で旋律をなぞる」伴奏になっていない
クマニコル:木管もヴァイオリンの旋律を重ねていますか?
リムコフ博士:掲載部分では、クラリネットが細かな分散した動きを続け、イングリッシュホルンとファゴットは長い音を受け持つ。ヴィオラはピッツィカートで動く。旋律の重複、動く伴奏、持続する和声を分けているのじゃ。
クマニコル:チェロ1人の追加も、周囲の仕事が整理されている中で考えるのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。この例の旋律の入りには p の指定がある。1人を足したから、どんな厚い強奏の中でも同じ音色の効果が出ると考えてはいけない。独奏チェロが加わる余地を、実際の編成と強さで確かめるのじゃ。
この分け方が向く条件は?
クマニコル:自分の編曲では、どんなときに検討すればよいでしょう?
リムコフ博士:ヴァイオリンの線にチェロの質感を添えたい一方で、チェロの持続低音も必要なときじゃ。まず旋律が独奏チェロで無理なく奏せる高さか確かめる。次に、1人を旋律へ出したあと、低音に何人残るかを確認する。
クマニコル:チェロが1人しかいない小さな編成なら、そのままは使えませんね。
リムコフ博士:その場合は「残りのチェロ」がいない。旋律と低音の両方を同じ方法で同時に任せることはできん。低音を別の楽器へ移すか、旋律の重複を見送るか、必要な役割から選び直す。Solo と Altri の文字だけを写さず、実際の奏者を割り当てるのじゃ。
クマニコル:チェロ全員を上へ動かすか、全員を低音に残すかの二択ではないのですね。
リムコフ博士:そうじゃ。1人を旋律の音色へ、残りを低音の支えへ。この配分なら、ヴァイオリンの質感を変えることと、チェロによる低音を保つことを一緒に考えられる。
出典:『管弦楽法の基本』第1巻「複数弦楽セクションのユニゾン」のヴァイオリン+チェロの項目、第2巻No.18。独奏と残りの奏者、低音の発音・持続の比較は譜例の分析です。小編成へ適用する際の人数確認は、実例から整理した学習上の補足です。図の音符・強弱・奏法指定は改変していません。
ソロそのものの音色とセクションの違いは、弦のソロは、セクションを小さく鳴らすのと何が違う?をご覧ください。
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