【会話で学ぶ】チェロに別の旋律を任せたら低音はどうする?ヴィオラとコントラバスの分担

クマニコル:チェロに、低音の伴奏とは別の旋律を弾いてもらいたいです。でも、いつもチェロとコントラバスを一緒にしているので、低音の上側を誰に任せるか迷います。

リムコフ博士:一つの選択肢は、ヴィオラをコントラバスの上のオクターブへ組ませ、チェロを別の線へ回すことじゃ。常用する組み合わせというより、チェロにほかの仕事があるときの配分として考えるのじゃ。

『キーテジ』では、チェロを別の線へ残している

『管弦楽法の基本』第1巻の「ヴィオラとコントラバスのオクターブ」は、この組み合わせを、チェロが別の役割に使われているときのまれな配分として説明しています。実例が第2巻No.31『見えざる町キーテジの物語』223です。

第2巻No.31『キーテジ』223。下の組段後半でヴィオラとコントラバスが低音線をオクターブで支え、チェロは別の線を演奏する。
『管弦楽法の基本』第2巻 No.31『見えざる町キーテジの物語』223、原書39頁。下の組段の後半に注目。(画像を押すと拡大)(画像を押すと拡大)

クマニコル:最初から最後まで、ヴィオラとコントラバスが同じ動きなのでしょうか?

リムコフ博士:そうではない。まず下の組段の最後の3小節を見よう。V-le. がヴィオラ、C-b. がコントラバスじゃ。長く保つ音から、そのあとの動きまでを見比べると、同じ低音線を二つの高さで支えているのがわかる。

クマニコル:その間の V-c.、チェロの段は、別の形になっていますね。

リムコフ博士:そうじゃ。とくに最後の小節では、チェロが細かく動く一方、ヴィオラとコントラバスは同じ形の線を保つ。チェロの音符を、そのままコントラバスへ全部渡す書き方ではない。

「チェロが低音楽器」という分類と、その瞬間の仕事を分ける

クマニコル:チェロとコントラバスは、いつも一組だと思っていました。

リムコフ博士:低音をオクターブで重ねる組として、よく使われるのは確かじゃ。しかし、楽器の名前と、その瞬間の声部の役割は同じではない。チェロが別の線を担う必要があるなら、低音を支える上側の担当を選び直せる。

クマニコル:それなら、コントラバスだけで低音を弾けば済みませんか?

リムコフ博士:低音を単独の線として置くか、上のオクターブも必要とするかは、曲の配分で考えよう。今回の実例では、上側も残しながらチェロを自由にするために、ヴィオラとの組み合わせを読むのじゃ。コントラバスだけが正解とも、必ずヴィオラを足すべきとも決めつけない。

ヴィオラを低音へ回すと、別の内声には使えなくなる

クマニコル:チェロを自由にできるなら、いつもこの組み合わせにすると便利そうです。

リムコフ博士:その前に、ヴィオラの仕事を確かめよう。ヴィオラで必要な内声や動く伴奏を作っているなら、それをそのまま残して低音も弾かせることはできない。低音の担当を変えるのは、和声全体の担当を変えることでもある。

クマニコル:どんな条件なら、この案を検討しやすいですか?

リムコフ博士:チェロに別の線が必要で、低音は上のオクターブも欲しい。そして、その上側の音がヴィオラの使える音域にあり、ヴィオラをそこへ回せる場合じゃ。チェロのパートを丸ごとヴィオラへ移すのでなく、必要な低音線を誰が支えるかを考えるのじゃ。

確認すること今回の配分での考え方
チェロを何に使いたいか低音と別の線を残す。譜例では、その動きをコントラバスが全部なぞっていない。
低音に何を残すかコントラバスと、その上のオクターブ。
上側を誰が受け持つかヴィオラ。音域と、ほかの内声の必要性を確認する。
全体の声部が足りるかヴィオラを移したあとも、旋律と必要な和声が残るかを見る。

音符の高さは、コントラバスの実際の響きで比べる

クマニコル:ヴィオラとコントラバスは音部記号も違います。二つの段の音符が近く見えても、同じ高さとは限りませんね。

リムコフ博士:その通り。ヴィオラはハ音記号、コントラバスはこの譜例ではヘ音記号で、さらにコントラバスは書かれた音より1オクターブ低く響く。譜面の上下の見た目でなく、実際に鳴る高さに直して比べるのじゃ。

クマニコル:同じ低音線を支えるというのは、全員が同じ実音を弾く意味ではないのですね。

リムコフ博士:そうじゃ。ここではオクターブで支える関係じゃ。同じ動きの線でも、同音のユニゾンか、オクターブかは分けて読む。そのうえで、チェロの別の動きがどの高さにあるかを確かめるのじゃ。

チェロの自由さと、低音の連続性を一緒に確かめる

クマニコル:書き終わったら、何を見ればよいでしょう?

リムコフ博士:まず、ヴィオラとコントラバスだけを追って、低音としての進み方を確認する。次にチェロを戻し、低音へ戻すためにチェロのフレーズを不自然に中断していないかを見る。最後に他の旋律と和声を合わせ、担当を移したことで必要な音が抜けていないかを確かめよう。

クマニコル:いつものチェロとコントラバスの組を守るより、必要な線を先に決めるのですね。

リムコフ博士:その通り。この配分は、低音を強くするために楽器をむやみに足す話ではない。低音の上側をヴィオラへ任せることで、チェロに別の仕事を続けさせる選択肢なのじゃ。

出典:『管弦楽法の基本』第1巻「弦楽器のオクターブ重複」のヴィオラとコントラバスの項目、第2巻No.31。下の組段の声部比較は掲載譜例の分析です。担当を移す際の確認手順は、原典の条件から整理した学習上の補足です。図の音符・強弱・奏法指定は改変していません。

弦のオクターブ配置を体系的に比較したい方は、弦のオクターブは、二つのセクションとdivisiをどう使い分ける?をご覧ください。

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