【会話で学ぶ】オーケストラの主題を合唱へ渡すとき、和声の担当はそのままでいい?
クマニコル:博士、オーケストラの主題を、次は合唱に歌わせたいんです。合唱はそれまで和音を歌っているのですが、ソプラノだけ主旋律へ替えればよいでしょうか。
リムコフ博士:クマ君、ソプラノへ旋律を渡すと、その声部が以前担当していた和声も変わるね。旋律を誰が歌うかを変えたら、残る合唱が和声をどう支えるかまで合わせて考えよう。
クマニコル:主旋律の受け渡しだけを見ていました。合唱全体の役割も変わるんですね。
リムコフ博士:そうだね。『サトコ』には、音楽として同じものを、オーケストラが旋律を担当する形と、ソプラノ合唱が担当する形で扱った比較があるよ。
先に、合唱を和声だけに使う形を見る
クマニコル:最初の形では、合唱は何をしていますか。
リムコフ博士:練習番号144、第三の絵画の冒頭だ。合唱が解離配置で純粋な和声を形作り、オーケストラがメロディを奏する。合唱に人の声があるからといって、必ず合唱側が主旋律を歌うわけではないんだ。
クマニコル:歌う人が大勢いると、いちばん上のソプラノを主旋律として見てしまいそうです。
リムコフ博士:その思い込みを一度外すとよいね。ここでは合唱の和声と、オーケストラの旋律という役割分担を読む。その関係を押さえてから、次の形へ進もう。
管弦楽からソプラノへ主題を渡し、テノールを二声に分ける
クマニコル:合唱が主題を引き受けるのは、どの箇所ですか。
リムコフ博士:練習番号152だ。音楽としては同じものだが、旋律がソプラノ合唱へ移されている。そして和声を奏するパートのうち、テノールがdivisi、つまり分割されているんだ。
| 役割・位置 | 楽器と鳴らし方 |
|---|---|
| 『サトコ』144/作例No.307 | オーケストラが旋律。合唱は解離配置による和声を担当。 |
| 『サトコ』152/作例No.308 | ソプラノ合唱が旋律を担当。和声側のテノールはdivisi。 |
| 比較する点 | 旋律の受け渡しと同時に、和声を受け持つ合唱の配分も変わっている。 |
クマニコル:ソプラノだけを変更して終わりではなく、別の声部の分け方まで変えているんですね。
リムコフ博士:そうだね。この比較は、旋律を移すときに、残った和声をどう成り立たせるかを一緒に考える手がかりになる。旋律の楽器名や声部名を替えるだけでは、全体の配分を決めたことにはならない。
いつもテノールを二つに分ければよい?
クマニコル:では、オーケストラからソプラノへ旋律を渡すときは、テノールを分けるのが決まりですか。
リムコフ博士:この実例を、すべての曲に当てはまる決まりにはしないことだね。大切なのは、和声のどの線が残り、どの線を新たに受け持つ必要があるかだ。テノールを分けたという結果だけでなく、役割の変更が和声の配分に及ぶという点を読むんだ。
クマニコル:自分の曲で、ソプラノが歌っていた和声音を別の誰が受け取るのかも見ます。
リムコフ博士:うむ。ただし、前の音を全部、別の声部へ機械的に押し込めばよいわけでもない。新しい旋律の位置と、残る各声部の進行を合わせて考える必要がある。合唱の分割を増やすなら、一つの線を歌う人数が減ることも判断に含めよう。
旋律を持つ側が変われば、聞かせる関係も変わる
クマニコル:和音として正しければ、伴奏の響きは以前のままでも構いませんか。
リムコフ博士:以前はオーケストラの旋律が前に出ていた。次はソプラノ合唱の旋律を聞かせたい。その役割が変わったことを前提に、周りの和声との関係を確かめよう。同じ音楽を使うことと、同じ配分を保つことは一つではないよ。
クマニコル:もとのオーケストラの旋律を残して重ねるのか、合唱へ任せるのかも、別の選択になりますね。
リムコフ博士:そうだね。ここで比較した説明から、元の旋律楽器が全部休むとか、全部重複する、といった細かな配分までは決められない。まず確認できる役割の移動を読み、それ以上の具体的な動きは総譜で確かめるんだ。
クマニコル:主題を合唱へ渡すときは、ソプラノの旋律だけで完成と考えない。残る合唱の和声も、必要に応じて分け直す。受け渡しの前後をひとまとまりで考えてみます。
表は原典の二つの作例について明記された役割を比較したものです。全楽器の配分や、分割後のテノールの具体的な音名を再現したものではありません。
出典:『管弦楽法の基本』第六章「歌声の扱い」コーラス、歌声の分割と混声合唱の和声的用法、No.307 Sadko 144 と No.308 Sadko 152。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。
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