【会話で学ぶ】バスクラリネットを低音以外に使うには?暗い旋律の独奏

クマニコル:博士、低音はチェロやコントラバスで足りています。それでもバスクラリネットを使う意味はありますか?

リムコフ博士:クマ君、あるよ。バスクラリネットの役割を、低音が足りないときの補充だけに限らないことだ。普通のクラリネットに似た性格を持ちながら、独自の色を持っている。その色を旋律の主役として選べるんだ。

クマニコル:名前にバスと付いていても、伴奏の低音係と決まっているわけではないんですね。

リムコフ博士:そうだね。楽器の音域が低い方へ広がっていることと、その楽器が曲の中でバス声部を担当することは別だ。いま必要なのが旋律なら、どんな声でその旋律を歌わせたいかから考えよう。

暗さは、最低音を増やすことだけで生まれない

クマニコル:普通のクラリネットと比べると、どんな違いに注目すればよいでしょう?

リムコフ博士:バスクラリネットは低いところで、より暗い響きになる。そして高いところでも、普通のクラリネットにある銀色のように澄んだ質感とは異なる。低音を増やすためだけの選択ではないことが、ここから分かるね。

クマニコル:バスクラリネットを使うなら、必ず旋律をとても低く書かなければならないと思っていました。

リムコフ博士:最低音を使うことを目的にしなくてよいんだ。旋律に合う範囲で、その楽器らしい色を聞かせる。逆に、ただ低くすればどんな旋律でも狙いどおりの暗さになる、という考え方も避けよう。

クマニコル:「暗い音色」と聞くと、悲しい旋律に使えばよいと思ってしまいます。

リムコフ博士:音色は手掛かりだが、悲しさまで自動的に決めるものではないよ。旋律の形、和声、リズム、強弱も表情を作っている。いまの音楽にその色が必要かを確かめて選ぶんだ。

『雪娘』のバスクラリネット独奏から、旋律の役割を読む

クマニコル:バスクラリネットが独奏で歌う例もあるのですか?

リムコフ博士:『雪娘』の練習番号243と246–247が、バスクラリネットのソロの例に挙げられる。低い音を他の楽器へ足すためだけでなく、一つの旋律をその音色で聞かせる使い方に目を向けてみよう。

『管弦楽法の基本』第2巻 No.47:雪娘・練習番号243:歌とバスクラリネットの旋律
『管弦楽法の基本』第2巻 No.47:雪娘・練習番号243:歌とバスクラリネットの旋律(画像を押すと拡大)
『管弦楽法の基本』第2巻 No.48:雪娘・練習番号246:歌とバスクラリネットの異なる動き
『管弦楽法の基本』第2巻 No.48:雪娘・練習番号246:歌とバスクラリネットの異なる動き(画像を押すと拡大)

リムコフ博士:No.47ではCl. bassoの細かく動く旋律の下で、弦が長い音を支えているね。No.48では、歌の動きに対してバスクラリネットが長い音や装飾的な動きを交える。名前に「バス」とあっても、低音の土台をなぞるだけではないことを確かめよう。

クマニコル:独奏に選んだら、普通のクラリネットも同じ旋律へ重ねた方が安心でしょうか?

リムコフ博士:まず、なぜ独奏に選んだかを思い出そう。固有の色を聞かせたいのなら、別の楽器を重ねる前に、そのままの声でどう聞こえるかを考える。混合した響きを作りたい場合と、独奏の色を選ぶ場合では目的が違うからね。

クマニコル:低音を増やしたいのでも、何本も重ねて太くしたいのでもなく、旋律の話し手を変えたいんです。

リムコフ博士:それなら、その目的に合う候補としてバスクラリネットを見るとよい。楽器を増やしたという事実より、今までの旋律と何が違って聞こえるかが大切だよ。

イングリッシュホルンも、低音の補充だけではない

クマニコル:ほかの低い同族楽器にも、同じ考え方が使えますか?

リムコフ博士:イングリッシュホルンやアルトフルートも、元の楽器の低音域を広げるだけの存在ではない。イングリッシュホルンには物憂げで夢見るような甘い質感、アルトフルートにはより冷たい質感と中高音の透き通った性格がある。それぞれ独奏の色として考えられるんだ。

クマニコル:低い同族楽器をまとめて同じ暗い音と扱うのも、大ざっぱですね。

リムコフ博士:その通り。バスクラリネットを選んだ後も、「低いから」という一語で終わらず、その旋律にどの色が欲しいのかを言葉にしよう。音色の形容は比喩だから、固定した感情の札として扱わないことも大切だ。

低音の担当と、旋律の担当を別々に決める

クマニコル:低音の土台が完成していても、バスクラリネットを独奏に選んでよいのですね。

リムコフ博士:もちろんだ。まず低音の不足を補う仕事なのか、独自の旋律を歌う仕事なのかを決める。後者なら、バス声部が足りていることは、使わない理由にはならない。音域の拡張だけでなく、旋律の色を選ぶ楽器として考えてみよう。

各楽器の声区と表現の幅を確認する際は、原典の図を掲載した木管の演奏可能音域と最大表現音域の解説を参照してください。

出典:『管弦楽法の基本』第一章「木管楽器(II)」の特殊楽器の音色と第二章「木管楽器によるメロディ」のソロ作例。作曲場面を設定した会話は、記述をもとに構成しています。

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