ホルンは、いつも2本ずつ重ねた方がいい?

金管の和音で、ホルンだけが二本ずつ同じ音を吹いている。こうした楽譜を見ると、「ホルンは常に二本で一声を作るもの」と覚えたくなります。しかし、それをどの場面にも当てはめる必要はありません。

二本のユニゾンが必要になるのは、主に大音量の金管の中で、ホルンの声部にも等しい力を持たせたい場合です。強弱と声部の役割を見ずに、いつも二本へ増やすのではありません。 なぜ重ねるのかを理解すると、一本でよい場所も選べるようになります。

トランペットやトロンボーンと、最大の力が違う

ホルンの出せる最大音量は、トランペットやトロンボーンより弱いため、強奏の金管の中では、一本ずつ同じ条件で配るだけでは釣り合わない場合があります。

そこで、ホルン二本を同じ音に重ね、一つの声部を支える方法を使います。声部を二つへ増やすのではなく、一つの線に二本を集める補強です。

ここで大切なのは、最大音量の違いに対応しているという点です。全体が弱く奏される場合まで、同じ補強が必ず必要になるわけではありません。強く鳴らす条件と、静かな条件を分けます。

原図で、二本のトロンボーンと四本のホルンを比べる

次の図は、高い二声をトランペットが受け持つ四声の和声です。低い二声を、左では二本のトロンボーン、右では四本のホルンで作っています。

上二声のトランペットに対し下二声をトロンボーン二本またはホルン四本で支える比較
リムスキーコルサコフ著『管弦楽法の基本』より。右のホルン四本は、二本ずつで二声を作ります。実音表記。

左では、下の二声をトロンボーンが一本ずつ担当します。右では、下の二声へホルンを二本ずつ割り当てています。ホルンは四本ありますが、四つの別々の音を奏しているわけではありません。

図の「4 Corni」はホルン四本、「2 Tr-be」はトランペット二本を示します。この節の譜例では、ホルンとトランペットも実音で表されています。移調譜の見た目の高さではなく、実際の和音の配置として読めます。

ここから覚えたいのは、ホルンを使う場合に声部の支え方を変えていることです。ただし、図の人数を、そのまま弱奏にも必須の条件として持ち込まないでください。

弱奏なら、一声一本でよい場合がある

全体が弱く奏されているなら、強奏時の最大音量の差が、そのまま補強の必要性になるわけではありません。ホルンを二本ユニゾンにしなければならない、という決まりはなくなります。

たとえば、トランペットやトロンボーンと混ざる和声でも、静かな場面では、ホルン一本が一声を受け持つ形を考えられます。二本を使えるからといって、必ず同じ音へ集める必要はありません。

この判断には、ホルンの声部をどれだけ目立たせたいかも関わります。音量を抑えたまとまりの中で必要な役割を果たしているなら、さらに補強する理由があるかを確かめます。

すべての声部が等しく重要な場合

各声部が対位法的に動き、どの線も同じように聞こえる必要がある場合には、ホルンのユニゾン補強が重要になります。一つの声部だけが弱くなると、その線の役割が伝わりにくくなるからです。

この場合、単に和音の厚さが足りるかどうかだけでは判断できません。各声部がそれぞれ音楽の動きを担っているため、線ごとの釣り合いを考える必要があります。

反対に、ホルンの声部がほかより重要でない場合には、一声一本でも問題ないことがあります。声部数が同じでも、役割の重みまで同じとは限りません。 どの線を等しく聞かせたいかが、補強を決める条件になります。

和音の間隔を埋める役割なら

広い音域にわたる和音で、ホルンが音の間隔を埋める役割を持つ場合には、一声一本で十分なことがあります。ホルンの丸みを帯びた厚い音色が、この働きに役立ちます。

ここでは、各声部が独立した線として同じ力で前へ出ることより、広い響きの中をつなぐことが目的です。対位法的な等しい声部の補強とは、求めている仕事が異なります。

そのため、全金管を使っているという理由だけで、ホルンをすべて二本組にする必要はありません。密集した和声を等しい力で鳴らす場合と、広い音域の間を埋める場合を分けて考えます。

ホルンだけの四声は、別の出発点

ホルン四本で四声の和声を作る場合には、それぞれが一声を受け持つ形が適しています。同じ音色で釣り合いの取れた和声を作れるため、二本ずつにして二声へ減らすことが基本ではありません。

つまり、「ホルン四本」という編成から、二声を作るべきか、四声を作るべきかは決まりません。ほかの金管と合わせて二声を補強する場合と、ホルンだけで四声を作る場合では、役割が違います。

ホルン四重奏の低音をさらに補強する必要があるかは、ホルン四本の和音に低音を足す記事で詳しく扱います。ここでは、同じ四本でも、和声の構成によって配分が変わると押さえてください。

三声の金管でも、強奏の条件を忘れない

三声の和声を、トロンボーン、ホルン、トランペットのうち一種類の三本で作れば、同種の楽器によるまとまりを考えられます。一方、複数の金管を混ぜる場合には、力の違いに注意が必要です。

強奏でホルンがほかの金管と一声ずつを分担するなら、二本のユニゾンで釣り合いを取る考え方が使えます。ただし、この場合も、弱奏まで二本を必須とするわけではありません。

四声か三声かという数の違いよりも、どの楽器と、どの強さで、どの役割を分担しているかが重要です。声部数ごとの図を覚える際にも、その条件を一緒に読みます。

二本ずつへ分ける余裕がない場合

編成や和声の声部数によっては、ホルンを二本ずつユニゾンにできないことがあります。四本を四つの音へ使う必要があれば、二本組の補強とは両立しません。

その場合、ホルンの強弱を、ほかの金管より一段強く指定する方法が考えられます。次の図では、トランペット、トロンボーン、テューバがフォルテ、ホルンがフォルティッシモになっています。

ほかの金管がフォルテのときホルンをフォルティッシモとする例
『管弦楽法の基本』より。ホルンを二本ずつ重ねられない場合の、強弱指定による調整例。実音表記。

ホルン四本はそれぞれ別の音を担当しており、二本ずつのユニゾンではありません。その代わり、強弱指定によって、必要な釣り合いを取ろうとしている例です。

ここでも、人数を増やす方法と、同じ人数で強弱を調整する方法を区別します。使える楽器の条件の中で、その声部をどう支えるかを考えることになります。

強弱指定だけを、万能の解決にしない

一段強い指定は、二本のユニゾンを使えない場合の具体的な方法です。しかし、どんな音域や編成でも、記号を変えれば必ず同じ釣り合いが得られる、という意味ではありません。

まず、ホルンに与えている音域と役割が適切かを確認します。そのうえで、必要な補強を人数で行うのか、強弱で調整するのかを考えます。音量の問題を、楽器の配置から切り離さないことが大切です。

また、ホルンの柔らかく丸い色を生かしたい場面と、ほかの金管に並ぶ力を求める場面では、補強の目的が違います。何を保ちながら強めたいかを明確にしてください。

和音を重ねて和らげる使い方とは区別する

ホルンを、トランペットやトロンボーンの和音へ重ねる方法もあります。この場合、ホルンは音を強めながら、突き抜けるような性格を柔らかく、丸い方向へ変える働きを持ちます。

これは、ホルン自身の一声を二本で補強する話とは別です。どちらも重複ですが、一つはホルンの線の力を補うこと、もう一つはほかの金管の和音へホルンの色を加えることが中心になります。

総譜を見るときは、ホルン同士が同じ音を重ねているのか、別の金管が奏している和音をホルンが重ねているのかを確認します。「重複」という一語で、役割の違いをまとめないようにしましょう。

二本にする前の確認順序

まず、全体が強奏なのか弱奏なのかを確認します。次に、ホルンの声部が、ほかの声部と等しく聞こえる必要があるかを考えます。独立した動きを持つ線なのか、中間を埋める声部なのかを区別してください。

そのうえで、使えるホルンの本数と必要な声部数を見ます。二本で一声を作る余裕があるか、一本ずつへ配る必要があるかを判断します。二本組にできない場合には、図のような強弱の調整を検討します。

最後に、前後のフレーズで役割が変わっていないかを見ます。強く等しい声部を作る場面から、静かな背景へ移るなら、同じユニゾン補強を続ける必要があるかも考え直せます。

本数を決めるのは、響きの中での仕事

ホルン二本のユニゾンは、強奏する金管の中で必要な力を得るための、大切な方法です。しかし、弱奏、重要度の低い声部、広い和音の間を埋める役割では、同じ条件を一律に求める必要はありません。

ホルン四本を二声にするか四声にするかは、人数の定型ではなく、和声の仕事によって選びます。強さと役割を先に見れば、重複を増やす理由も、増やさない理由も説明できるようになります。

ホルンは常に二本で一声、と覚えるのではなく、二本にすることで何を補うのかを考える。 その視点が、金管全体の釣り合いを、必要な場面で必要なだけ整えることにつながります。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:金管楽器による和声。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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