ヴィオラとチェロを同じ旋律に重ねると、どちらの色が残る?

ヴィオラの旋律へチェロを同じ高さで重ねたら、ヴィオラがそのまま大きくなるのでしょうか。それとも二つの楽器の色が半分ずつ聞こえるのでしょうか。弦どうしのユニゾンでも、組み合わせによって中心に残る音色は違います。

ヴィオラとチェロの場合は、その違いを知ってから重ねると、欲しい響きと結果を結び付けやすくなります。

ヴィオラとチェロを同じ音で重ねると、チェロの色を中心にした豊かな響きになります。ヴィオラをそのまま大きくしたい場合と、チェロらしい充実した色を求める場合では、選ぶ理由が違います。

何を加えるかと同時に、何の色を残したいかを考えましょう。

ユニゾンでは、同じ音高に二つの色が集まる

ここで扱うのは、ヴィオラとチェロが同じ音高で同じ旋律を演奏するユニゾンです。一方を一オクターブ下へ置く配置ではありません。耳に届く旋律の高さは一つでも、それを鳴らす楽器が二種類になるため、響きの充実と音色の関係が変わります。

同じ弦楽器だから、どの組み合わせも同じように足し算できると思うと、この変化を見落とします。第一・第二ヴァイオリンなら基本的な色を保って充実させられますが、ヴィオラとチェロではチェロの色が主となります。

同じ「弦を重ねる」でも、中心に残る色の説明は異なるのです。

この区別は、重複の目的を言葉にする際に役立ちます。ヴィオラの旋律の輪郭をそのまま保ちたいのか、チェロらしい色を持つ豊かな旋律にしたいのか。後者なら、この組み合わせの性質が目的に合います。

前者なら、チェロを足す前に、ヴィオラが単独で聞こえる配置を検討する余地があります。

第一・第二ヴァイオリンのユニゾンは「第一・第二ヴァイオリンをユニゾンにすると、何が変わる?」で扱っています。比較して読むと、同じ楽器を二つのセクションで支える場合と、異なる弦のセクションを混ぜる場合の違いを整理できます。

ヴィオラとチェロは、それぞれどんな旋律を担うか

ヴィオラは、アルトからテノール、さらに少し高い範囲の旋律を担えます。少し鼻にかかったような色は短く特徴的なフレーズに生きますし、長いcantabileを歌わせることもできます。

ヴィオラを短い音型専用の楽器と理解する必要はありません。

チェロはテノールからバス、さらに高い領域の旋律を担当し、とくに情熱的なcantabileによく合います。このような旋律は、豊かな胸声のような性質を持つA弦で演奏されるように書かれることが多いとされます。

二つの楽器が同じ音高を担当できても、そこへ持ち込む音色の特徴まで同一ではありません。

この説明を踏まえると、ヴィオラとチェロのユニゾンは、単に人数を集めること以上の選択だと分かります。共通して演奏できる範囲に置いた旋律を、異なる弦楽器の性格で支え、チェロを中心にした響きとして聞かせる。

何を強めたいのかを考える際には、旋律の性格と、実際に使う音域を一緒に見ます。

ただし、ここからヴィオラは歌えない、チェロならどこでも同じように歌える、と一般化することはできません。音域や、実際に使う弦によっても響きは変わります。

組み合わせの名前を覚えるだけでなく、どの高さで何を演奏させるのかを確認して初めて、具体的な響きの判断になります。

イングリッシュホルンを足しても、チェロが中心になる例

『雪娘』には、ヴィオラとチェロにイングリッシュホルンを加えて、cantabileの旋律を演奏する場面があります。この組み合わせでは、イングリッシュホルンが加わっても、チェロが中心となる混合音色の性格は保たれます。

楽器を一つ足せば、その楽器の色が必ず新しい主役になるわけではないという例です。

その旋律は、別の登場箇所より三度高くなり、より明るい調性で、輝かしい音色を生んでいます。楽器の組み合わせに加えて、旋律の高さや調性も印象を変える条件になるのです。

同じメロディであっても、配置と文脈によって印象を変えられます。

この作例を、ヴィオラ、チェロ、イングリッシュホルンという楽器名の組だけとして覚えるのはもったいないでしょう。チェロの色を中心に保ちながら、ほかの楽器を加えて響きを充実させる、と捉えると、この組み合わせの狙いが分かります。

追加した楽器が個別に目立たなくても、組み合わせの働きがなくなるわけではありません。

自分の旋律に使うときにも、チェロの色を保って豊かにしたいのか、イングリッシュホルン自体を主役として聴かせたいのかを分けて考えましょう。後者を狙うなら、三者に同じ旋律を与えるだけで目的を果たせるとは限りません。

どの音色を中心に聞かせたいかが、配分を決める基準になります。

隣り合う音域の弦を重ねる、自然な組み合わせ

似た音色の楽器を重ねるときには、隣り合う音域の声部から組み合わせると、自然な響きを作りやすくなります。その例が第一・第二ヴァイオリンや、ヴィオラとチェロです。

楽器の性質と担当する音域の近さが、組み合わせを考える手がかりになります。

反対に、離れた声部を重ねると、片方が出せる範囲の端に近付き、より特徴的な色が出てきます。これは、その組み合わせが使えないという意味ではなく、特有の音色を理解し、前景のパッセージなどで意図して用いる必要があるという注意です。

したがって、ヴィオラとチェロを選ぶ理由には、自然な近さを生かして充実させるという面があります。珍しい組み合わせを探すことだけが色彩を作る方法ではありません。

比較的素直な組み合わせの中でも、どちらの色が中心になるかを理解すれば、必要な性格を選ぶことができます。

ただし「自然」という言葉を、無条件に何を書いてもよいという意味にはしません。実際の旋律がそれぞれの楽器のどこに置かれているかは、依然として重要です。隣り合う声部という大きな見通しと、具体的な音域の点検を組み合わせることで、説明を実際の譜面へ生かせます。

ヴァイオリンとチェロへ替えると、何が違うか

ヴァイオリンとチェロのユニゾンも、ヴィオラとチェロに似てチェロの色が中心となり、さらに充実した響きになります。ヴィオラを別の弦へ替えれば、必ず中心の色まで入れ替わるわけではありません。

チェロを含む重複の中で、何が主要な特徴として残るかを見ています。

同じ『雪娘』の旋律を、第一・第二ヴァイオリン、チェロ、イングリッシュホルンで奏する例では、イングリッシュホルンは全体へ溶け込み、チェロを主体とした、さらに力強い響きになります。

先ほどのヴィオラとチェロの例と比べると、弦の配分を変えながら、中心の色を保って充実させる考え方が見えます。

一方、ソロのチェロとヴァイオリンを合わせ、ヴァイオリンの音へチェロの質感を加える使い方もあります。したがって、節の一般的な説明を、奏者の配分や場面を問わない絶対的な規則へ変えるのは避けたいところです。

一般的な傾向を知り、個々の例の条件も読む必要があります。

比較の目的は、より多くの弦を足せば上位の響きになると考えることではありません。どの色を中心にし、どれほどの充実が必要かに応じて配分を選ぶことです。ヴィオラとチェロで必要な働きが得られるなら、さらにヴァイオリンを足す理由があるかを考えます。

ヴィオラそのものを聴かせたいなら、重ねる前に周囲を見る

出発点がヴィオラ独自の色を聴かせたいという希望なら、チェロを加えることを最初の解決にしない方がよい場合があります。チェロを足して補強すると、聴かせたかったヴィオラの色が変わる可能性があるためです。

ヴィオラだけでも、旋律を十分に担当できます。バランスを整えるなどの理由がなければ、必ず重ねる必要はありません。また、ヴィオラが動き、ほかの弦が長い音で支えるときには、音域の重なりへ注意すればヴィオラが目立つ例も示されています。

周囲との関係によって、単独の色を前へ出す方法があります。

そこで、ヴィオラが埋もれたら、まず伴奏の音域と動きを見直す案を考えます。それでも充実が必要で、チェロを中心とする混合の色が曲に合うなら重ねる。この順序にすれば、補強が必要なのか、混合音色が欲しいのかを分けて判断できます。

中音域の配置は「中音域のメロディが目立ちにくいのはなぜ?」で詳しく扱っています。

同じ旋律でも、オクターブに離せば別の選択

ヴィオラとチェロが同じ旋律を演奏すると聞いたとき、同じ高さか、一オクターブ違うかも確認します。同じ高さのユニゾンと、オクターブ重複では狙いが違います。

ユニゾンでは一つの高さに色を集めますが、オクターブでは上下の二つの領域を使います。

ヴィオラとチェロのオクターブ重複は、ヴァイオリンを別の用途へ使っているときなどに検討する配置です。ユニゾンで自然な組み合わせとされることを、そのまま別の音程関係の推薦へ読み替えないことが大切です。

旋律の充実を求める際には、音域を広げる必要があるか、それとも今の高さに響きを集めたいかを考えます。その違いを決めてから楽器の組み合わせを見ると、単に同じ旋律を写す操作でも、何を変えているかが明確になります。

同じ楽器名が並んでいても、音程関係が違えば音楽上の働きは同じではありません。

重複の目的を、残したい音色から決める

ヴィオラとチェロのユニゾンを選ぶときは、まず、チェロを中心にした豊かな響きが欲しいかを確認します。次に、旋律の実際の音域と性格が両者に合うかを見ます。

そして、二つのセクションを同じ線へ集めた後、ほかの声部を誰が担当するかまで総譜で確かめます。これで、音色の選択と全体の配分がつながります。

重複全般の注意は「楽器を足したのに、旋律の個性が薄くなるのはなぜ?」でも扱います。音を増やすことには、単純な強化だけでなく、どの個性を前へ残すかという選択が含まれます。

ヴィオラとチェロの組み合わせは、そのことを学ぶ分かりやすい例です。厚さを求めるだけでなく、厚くなった後にどんな色を聴かせたいかまで考えて選びましょう。


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この記事は『管弦楽法の基本』の記述・補足に基づく解説です。参照:複数弦楽セクションのユニゾン、弦楽器のオクターブ重複。併せて第二章の弦楽器の旋律とオクターブ重複に関する説明・補足を参照しています。Amazonへのリンクにはアソシエイトリンクを使用しています。

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