一つのパッセージやフレーズ中における楽器の移り変わり

 一つのフレーズやモチーフの途中でそれを演奏する楽器が移り変わっていくというのは、よく見かけるものです。この時、可能な限り自然につながるように楽器を切り替えるため、前半を鳴らしていた楽器の最後の一音と、後半を鳴らす楽器の最初の一音を重ねるようにします。この手法は、あるパッセージの音域が広くて一種類の楽器では全てを演奏できない場合や、一つのフレーズの途中で音色を変えたい場合に用います。

COMMENT: このような「接ぎ木」のようなアレンジは移り変わりをスムーズにするものであり、対話のような効果を得るものではありません。またテンポが極めて速い場合には、2つ以上の音を重ねる事もあります。

 オーケストラの音域全てをカバーするような音域の広いフレーズに対しても同様の手法を使うことができます。つまり、ある楽器が自分の担当部分を弾き終わるところで別の楽器が1つか2つの音だけ重ねてフレーズを受け継ぐ、という方法です。ただし、このように音色を分割する際には、パッセージ全体のバランスを崩さないように注意しなければなりません。

和音を異なる音色で交互に演奏

1. 最もよく使われる手法は、異なる楽器群に属する楽器を交互に使って和声を構築することです。音域の異なる和音を使う場合でも、各声部の進行には注意を払う必要があります。この場合、一見すると異なる楽器群に移るときに和声の流れが切れてしまうように思えますが、あたかもオクターブ単位の跳躍が無いかのように考えて各声部を正しく進行させる必要があります。特に半音階的なパッセージではこれが重要になります。

COMMENT: 交互に和声を演奏する目的として、次の2つの場合が考えられるでしょう。1つ目は、2つの楽器群による対話のような効果を得たい場合。2つ目は、エコーのような効果を得たい場合です。対話のような効果を得たい場合には、2つの楽器群がある程度同じくらいの力強さ(音色の厚み)でなければなりませんし、エコーの効果が欲しい場合には片方をもう一方より明確に小さな音にしなければなりません。エコーの演出には単に音量記号で音を小さくするだけでは不十分で、適切なダイナミクスが得られるようにオーケストレーションしなければなりません。

2. 同じ和音のまま(あるいは転回して)ある楽器群から別の群に移行するのも非常に良い方法です。この場合、各声部の進行は完璧でなければならず、また音域の跳躍も許されません。または、ある楽器群が和音を短時間打ち鳴らして、別の楽器群で同じ和音を重ねるという方法もあります。この場合は重ねる和音がオクターブ単位でずれていても良く、また2つの楽器群で音量に差があっても構いません。

COMMENT: このテクニックは、短くリズミカルに鳴らす楽器群を大きい音にして、(より音量の小さい)息の長いフレーズにアクセントを付加するために使うことが多いです。やはり、オーケストレーションでダイナミクスをコントロールすることでアクセントを作り出します。

リズムの強調や色彩感を増すための打楽器の使用

 オーケストラの一部がリズミックなフレーズを演奏しているのであれば、そこには必ず打楽器も加えてやるべきでしょう。ちょっとした細かいリズムであれば、トライアングル、タンバリン、カスタネット、小太鼓が適していますし、強烈でシンプルなリズムであれば、大太鼓、シンバル、ゴングが適したものになるでしょう。これら強い打楽器の打点は、必ず1. 強拍、2. (シンコペーションであれば)アクセントの強い部分、3. (飛び飛びの)sfz、のどれかに重ねるようにします。トライアングル、タンバリン、小太鼓は様々なリズムを打つことができます。また、他の楽器群とは無関係に打楽器が自由にリズムを打つこともあります。

 音色の色彩感という意味では、打楽器と最も相性がいいのは金管と木管になります。

COMMENT: リズミカルなパッセージでは、アタックのはっきりした金管(特にトランペットとトロンボーン)が候補に挙がってきます。弦のpizzicatoも非常によいリズム楽器と言えます。一方、打楽器(ヴィブラフォンやベル等)を弦と合わせて色彩感を高めるというのも、今日では非常に一般的です。

トライアングル、タンバリン、小太鼓は高音域と相性が良く、シンバル、大太鼓、ゴングは低音域と良く交ざり合います。

COMMENT: つまり、打楽器の音域はその音楽の音域に合わせるべきだということです。高音楽器を低音打楽器と合わせたり、その逆をやったりすると、変わった音になってしまいます。ただし、それがコントラストを得るために意図したものであれば、こうした組み合わせも問題ありません。

最も良く用いられる組み合わせとして、1. 木管とヴァイオリンによるトリルにトライアングルとタンバリンのトレモロを重ねる、2. トランペットとホルンが和音を伸ばしているところに小太鼓かシンバル(バチで打つ)のトレモロを重ねる、3. トロンボーンによる和音かチェロとコントラバスによる低音を伸ばしているところに大太鼓かゴングのトレモロを重ねる、というものが挙げられます。また、大太鼓、シンバル、ゴング、トレモロの小太鼓は、ffで演奏するとオーケストラのtuttiすら凌駕してしまうということを覚えておきましょう。

COMMENT: トランペットとティンパニの組み合わせも古くから用いられています。


第四章の内容を目次から紹介

第四章 オーケストレーション実践
同じ音楽の様々なオーケストレーション
Tutti
  管楽器によるTutti
PizzicatoによるTutti
弦楽器のsoli
音域についての原則
一つのパッセージやフレーズ中における楽器の移り変わり
和音を異なる音色で交互に演奏
楽器の追加と削減
フレーズの繰り返し:模倣とエコー
和音のsfz → p及びp → sfz
ある音や和音の強調
和声の音域拡大と収束
各声部の取り扱い –和声の構成要素としての声部-
人為的な装飾効果
リズムの強調や色彩感を増すための打楽器の使用
音色の節約:各音色の使用頻度

(目次に戻る)

(管弦楽法の基本トップに戻る)


全体を通して読みたい方へ:書籍版をAmazonで見るPDF版を見る

管弦楽法の基本 購入案内

続きは書籍版またはPDF版でお読みいただけます。紙の本と手頃なPDF版からお選びください。