概論

 オーケストラの和声というものは、まず一つ一つの和音がバランスの取れた美しい配置になっていなければなりません。そして良い響きを得るためには、これに加えて各声部の進行が正しいこと、つまり濁りや禁則進行がないことも不可欠です。声部進行に誤りがある限り、完璧な響きを作り出すことはできません。

COMMENT: 言い尽くされてきたことですが、書いておきましょう。和声をきちんと習得していなければ、自信をもってオーケストレーションすることはできません。和声の習得は連続する和音を均等に書くことから始まるからです。和声の規則は元々は歌のために作り上げられてきたものですが、楽器の場合にも全く同じようにあてはまります。楽器の場合は楽器特有の手法がありますが、いずれにせよ基本原則が変わることはありません。

注:人々の中には、オーケストレーションというものを単に楽器や音色の選択の問題であると考えている人がいるようです。そのような人たちはあるスコアが今一つよく響かない時、その原因の全てを単に楽器の選択を誤ったためであると考えるようですが、これは誤りです。うまく響かないことの原因が各声部の扱い方の悪さにあるということが往々にしてあるのです。このような場合、どんな楽器を選択したとしても響きが改善することはありません。また同じように、一つ一つの和音のバランスや各声部の進行が適切な場合、そのパッセージは弦であれ木管であれ金管であれ同じようによく響きます。

 オーケストレーションにあたって、作曲家はラフスケッチの段階から明確な和声構造を意識しておかなければなりません。もしラフの段階で和声進行や声部数が曖昧なのであれば、直ちに曖昧な個所をなくさなければなりません。この作業は、曲の構成や要素を自分の中で明確にしたり、また自分が使おうとしているテーマやフレーズの正確な形やそこからくる制限をわかりやすくしたりするという意味においても重要なことです。和声進行に関わる声部数を変える、つまり4声を3声にしたり5声からユニゾンにしたりするのは、新しいテーマやフレーズを導入するタイミングに合わせなければなりません。これを破ってしまうと、思いもよらない難しい問題に出くわすことでしょう。例えば、4声で書かれたパッセージで途中から5声部に変えたりすると当然この第5声部のために楽器を追加しなければなりませんが、和音の響きというのはこのような安易な楽器の追加によって簡単に汚されてしまうのです。また、楽器を追加したことによって不協和音の解決や各声部の正しい進行が不可能になってしまうこともあります。


中略


木管楽器による和声

 木管楽器による和声について考える前に、この章の始めに書いた基本原則をもう一度確認しておきましょう。

 和声というものは、それが単純なものであれ装飾に溢れたものであれ、また対位法的に複雑に書かれたものであれ、常に全体を通してバランスの取れた響きを維持しなければなりません。具体的には以下のようにします。

COMMENT: RKが“バランスの取れた響き”と言っているのは、和音の溶け合いを意味しています。木管の場合は音色が一つ一つ異なるため、和音を溶け合わせて一体化するためには耳を「だます」必要があります。これは、特に小規模なオーケストラでは難しくなります。各楽器が二つしかなければ、同じ楽器だけで三和音すら鳴らすことができないからです。

1. 和声に参加する楽器は、常にそのパッセージの各声部を平等に演奏する。つまり、重複させるならどの声部も等しく重複させ、重複しないならどの声部も重複させない。ただし和声のうちの一声部を突出させたい場合は構わない。

COMMENT: これは、声部数を変えるとそこに注目が集まってしまうためです。

2. 各楽器の音域順に従う。ただし後で述べる交叉と囲い込みは問題ない。

3. 音色の特殊効果を狙うのでない限り、それぞれの楽器にとっての高音域同士や中音域同士のように、対応する音域を一致させて組み合わせる。隣接した音域でも可。例えば下の例だと第二フルートが弱すぎ、オーボエが鋭すぎる。

COMMENT: 以前に述べた通り、一つの木管楽器には3つの楽器(低音、中音、高音)が備わっていると思って扱うのは非常に役に立つ考え方です。各音域の境界はそこまではっきりしているわけではありませんが、音域によって扱い方が異なるのは事実です。例えば高音域のフルートとオーボエは良く溶け合いますが、低音域のフルートとオーボエではうまくいきません。

4. 協和音(オクターブ、三度、六度)は同じ楽器(あるいは同族楽器)に割り当て、不協和音(五度、四度、二度、七度)は別の楽器に演奏させる(ただし不協和音を目立たせたい場合は別)。この規則は特に良く通る音域でオーボエを使う時に注意しなければならない。


第三章の内容を目次から紹介

第三章 和声
 概論
 声部数について:重複
 和音構成音の配置
 弦楽器による和声
   短い和音
   持続またはトレモロによる和音
 木管楽器による和声
   4声及び3声の和声
   多声部に渡る和声
   重複による音色の混合
   その他補足
 金管楽器による和声
   4声の書法
   3声の書法
   多声部に渡る和声の書法
   金管の重複
 複数の楽器群による和声
   木管と金管の組み合わせ
   弦と管楽器の組み合わせ
   三群の組み合わせ

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