三和音による反復進行(転調なし)

四度と五度による反復進行

§43. 2つ以上の和音からなる特定の進行(ドミナント→トニック、など)を、ある調の中で様々な度数に移高して繰り返すと、「反復進行」と呼ばれる進行になります。このような反復によって、ある調の全ての度数の和音を使用することができます。次の例は四度と五度による反復進行です。

長調

短調

短調の場合は、増二度進行を避けるために自然短音階を使います。ただし、反復進行の最初と最後にあるV度のみ和声的短音階とします。

四度と五度による反復進行は、転調を伴わない進行のうち最も自然なものと言えるでしょう。この進行では、和声的連結と旋律的連結が交互に現れます。減三和音は反復進行でないところでは六の和音でしか使用できませんでしたが(§28)、反復進行の中では基本形で使うことができます。

【演習】

1.六の和音と基本形からなる次の反復進行を完成させよ。

2. 同じ反復進行を短調で書きなさい。

二度と三度による反復進行

§44. IV→Vの進行を元に移高しながらつなげていくことで、低音が二度および三度で動いていく反復進行を作ることができます。短調の場合は最後のV以外はすべて自然短音階とし、最後のVのみ和声的短音階を用います。

長調

短調

二度と三度による反復進行では、二度のところが旋律的連結、三度のところが和声的連結になります。この反復進行は四度と五度による反復進行と同じくらい多く見かけます。

【演習】

1. 六の和音を含む次の反復進行を完成させなさい。

(長調)

2. 同じ反復進行を短調で書きなさい。

【演習】

これら反復進行を様々な調にてピアノで弾きなさい。各調において、どの和音から始めても主和音までたどり着いて終えられるように練習しなさい。

§43, 44の補足

これまで見てきた反復進行はどれも音が下がっていく例でしたが、同じように基本形や転回形を使って上昇する形を作ることもできます。

反復進行は他にも様々な形がありますので、密集配置だけでなく解離配置を用いる、様々な調で作成してみる、様々なメロディポジションを試す、などを行いピアノで弾いてみてください。

七の和音による反復進行(転調なし)

七の和音による反復進行

§45-1. 属七→主和音の進行を基本として繰り返していくことで、次のようにバスが二度ずつ動いていく反復進行を作ることができます。

長調

短調

この進行は、七の副和音(属七以外の七の和音)は四度上あるいは五度下の三和音に解決するのが最も自然であるということを教えてくれています。四音全てが鳴らされた(つまり完全な)七の和音は省略を含む(不完全な)三和音に解決し、逆に不完全な三和音からは必ず完全な七の和音に移ります。ただし、転回形の和音からは常に完全な和音に解決します。

【演習】

1. 次の反復進行を完成させなさい。

2. 同じ反復進行を短調で書きなさい。

§45-2. 七の和音の第三音を次の和音まで保持することで、七の和音のみの反復進行を作ることができます。

長調

短調

この進行では、七の和音は常に四度上あるいは五度下に移ります。保持した第三音は次の和音の第七音となり、さらにその第七音は次の和音で第三音へと解決します。また、完全な七の和音は不完全な七の和音に、不完全な七の和音は完全な七の和音へと解決します。

転回形を含む反復進行では、五六の和音と二の和音、および三四の和音と七の和音、という組み合わせを使うことができます。

【演習】

1. 次の反復進行を完成させなさい。

2. 同じ反復進行を短調で書きなさい。

§45-3. 上の2つほど自然とはいえませんが、導七の和音から主和音(第三音を重複)へと移る進行からも反復進行を作ることができます。この進行では、三和音は三度下の七の和音を準備することになります。

【演習】

  1. 同じ反復進行を短調で書きなさい。
  2. 九の和音で同じ進行を作りなさい。
  3. これらの進行をピアノで弾き、どの音から始めても主和音に戻れるよう練習しなさい。


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