第三音の跳躍

課題No. 10

§26-1. 第三音の跳躍は、基本形同士のI度-IV度およびI度-V度(どちらも順不同)の和声に現れることがあります。
§26-2. この際、2つの和音は和声的連結されていなければなりません。
§26-3. 跳躍の後は、反対方向に二度か三度音程で動かなければなりません。

課題No. 10(メロディ課題)の作例

第一転回形のバスの跳躍

課題No.11

§27-1. 六の和音同士でI度→IV度あるいはI度→V度の進行をすると、バスが根音でないにもかかわらず四度あるいは五度の跳躍が現れます。
§27-2. この場合も、2つの和音は和声的連結されていなければなりません。
§27-3. 跳躍の後は、反対方向に二度か三度音程で動かなければなりません。

§27-4. バスと同時に上三声で根音および第五音が跳躍することも可能です(重複の仕方による)。この場合も和声的連結でなければなりません。

課題No. 11(バス課題)の作例

VII(減三和音)の六の和音

課題No. 12

注:やや不協和な和音であるが、ここで扱う。

§28-1. この和音はドミナントの和音として使うことができます。
§28-2. この和音の前にまず基本形のIV度で準備し、VIIの六の和音が来たあとは基本形か六のトニカに解決しなければなりません。
§28-3. この和音の根音は重複できず、第三音か第五音のみが重複を許されます。
§28-4. 導音はトニカの主音に上行解決しなければなりません。この時の連続五度を避けるために、導音はテナーに置くことができません。

§28-5. 長調においてこの和音を使うことで、上3声に4音連続で順次上行して合計が完全四度となる音列(上行形のテトラコード)を作ることができます。
§28-6. 旋律的短音階においてこの和音を使うことで、上3声にテトラコードを作ることができます。このとき、旋律的短音階を用いたことにより、IV度の和音が長三和音に変化します。

§28-7. 旋律的短音階でこの和音を使う時、長三度の二和音が二度関係で連続する(順次連続長三度)のは良くありません。

これを避けるため、まずI度の六の和音では第五音を重複しておき、バスの方をIVの和音まで維持するということが可能です。この場合、IVの和音は必然的に基本形ではなく二の和音(七の和音の第三転回形)となります。

注1:これと似た進行に、「Iの六→VIの三四(七の和音の第二転回形)→VIIの六→Iの基本形」というものもあります。

注2: VII度の六の和音は、四六の和音の経過用法(§23)の代わりとしてI度の基本形と六の和音の間に使うことができます。特に経過和音が強拍に来る場合にこの和音が使われます。

長調における基本形のIIの和音

§29. (a) 基本形のIIは長調でのみ使われ、サブドミナントの役割となります。Iの基本形、Iの第一転回形、IVの基本形、VIの基本形、のいずれかの和音の後に置くことができます(下図参照)。この和音の後は基本形のV度に旋律的連結するか、第一転回形のV度に連結しなければなりません。

IIの基本形からVの基本形に和声的連結するのは危険で、順次連続長三度を作ってしまう恐れがあります。

注:長調におけるIIの基本形はコラールのカデンツに用いられることもあります。この場合、Iの六の和音の前に配置します。

長調および短調におけるIIの六の和音

課題No. 13

§29. (b-1) IIは第一転回形ならば長調でも短調でもサブドミナントとして使用でき、基本形か第一転回形のI度の後に置きます。
§29. (b-2) この和音ではソプラノが根音でなければなりません。(*稀に第三音となります)
§29. (b-3) 重複は根音あるいは第三音ですが、直後に四六の和音が来る場合には第三音しか重複できません。

注:IIの六の和音にて第五音の重複は許されますが、その場合さらに五度の跳躍が必要となります。

基本形のVIの和音:2つの使用法

課題No. 14

§30. (a) 偽終止

(a-1) 基本形のドミナントは、通常向かうはずの主和音を避けて基本形のVI (第三音重複)に旋律的連結することができます。
(a-2) これによりフレーズが途切れることを偽終止と呼び、次のフレーズは基本形のIVか第一転回形のIIから始めます。*稀にIの六の和音から次のフレーズを始めることもあります。
(a-3) フレーズの途中であっても、偽終止のような解決が必要な場合は同じV→VIを使うことができます。この場合、Vの代わりにVIIの六の和音を用いることもあります。

§30. (b) 全終止や半終止(あるいは曲中におけるその類似形)中での使用

(b-1) 基本形のIの後に基本形のVIを置くことができます。この場合、VIの後には基本形のV, IV, II, あるいはIIの六の和音が続きます。
(b-2) VI→Vの進行は二度の関係なので旋律的連結になります。基本形のIVやIIへの連結は和声的連結でなければなりません。

*注1:短調の場合、VI→VはVIが第三音重複の時にのみ可能です。これを破ると増二度進行ができてしまいます(例a, b)。
*注2:VIの和音が第三音を重複している場合、VI→IVという進行も可能になります。上3声のうち2声に跳躍が現れますが、問題ありません。跳躍する2声は互いに三度あるいは六度音程を保つはずです(例c, d)。跳躍を含むこのVI→IV進行を根音重複の状態から行うこともあります(例e)。

長調における基本形のIII

課題No. 15

§31-1. この和音を使うことで、長調のメロディに下行形のテトラコードを作ることができます。

§31-2. この和音は、基本形のIあるいは基本形のVIの後に和声的連結で配置します。
§31-3. IIIの後には、IV度の和音を旋律的連結で置きましょう。

注:基本形のV→Iという進行の代わりとして、IIIの六の和音→Iというのも良く見られます。この場合、第三音を重複するようにします。連結は和声的と旋律的のどちらでも問題ありません。

自然短音階における基本形のIII: 第一のフリギア終止

課題No. 16

§32-1. 長調の場合と同じように、この和音によってメロディに下行形のテトラコードを作ることができます。
§32-2. 基本形のIあるいは基本形のVIの後に置き、さらにその後はサブドミナントを置きます。

上の例2と例3はフリギア進行と呼ばれる進行です(この名前は教会旋法の1つであるフリギア旋法に由来します)。この進行が短調の半終止に使われた場合、その終止をフリギア終止と呼びます。

自然短音階における基本形のVII: 第二のフリギア終止

課題No. 17

§33-1. この和音によって、バスに下行形のテトラコードを作ることができます。

バスにこのテトラコードを作るわけですから、基本形のI→基本形のVII (nat.) →IVの六→基本形のV (harm.) という進行で使うことになります。

§33-2. 次の進行は不自然ですので、上3声にこの進行が現れないように注意しましょう。

そのためには、VIIの和音でバスを重複している声部を下に四度跳躍させましょう。下の例では、例dを除いてどの良例でもこれを守っています。

この進行もフリギア進行の一つであり、やはり短調の半終止で用いられるとフリギア終止と呼びます。

§32, §33の補足

a) 第1のフリギア終止ではVII (nat.) の六の和音を使うこともできます。重複は第三音です。
b) 第2のフリギア終止ではVII (nat.)の代わりにV (nat.)の六の和音を使うこともできます(下の例c)。

コラールの作曲(転調なし)

課題No. 18

§34-1. コラールとは、元々は教会で礼拝の時に歌われる合唱(讃美歌)を指していたものです。
§34-2. いわゆるコラールというのは、全ての声部が同時に二分音符で動き、ときどきフェルマータを伴うカデンツによって曲や歌詞の区切り(スタンザ)をつけるものです。
§34-3. これまで学んできた和声の規則に従ってコラールを作ると、いわゆる厳格和声と呼ばれるものが出来上がります。
§34-4. 同じカデンツを使い続けるよりも、様々なカデンツを盛り込むのが良いでしょう。同じカデンツを2連続で使うのは避けるべきです。
§34-5. 曲の途中では完全終止は避けましょう。第二種のカデンツ(四六の和音を含むカデンツ)が使われることは稀で、使うとしても曲の最後だけになります。
§34-6. フェルマータが2拍目についている場合は1拍目も2拍目も同じ度数の和音にするのが一般的です。メロディポジションだけ変えることもあります。
§34-7. 多くのコラールがアウフタクトで二拍目から曲を始めており、曲頭には基本形あるいは第一転回形のVを使っています。IVから始まるのは稀です。

課題No. 18(コラールのメロディ課題)の作例1

注:コラールの途中ではV→IVの進行が現れることがあります。

課題No. 18(コラールのメロディ課題)の作例2

和声的長音階の使用:サブドミナントマイナーおよびII (harm.)の六の和音

§35-1. ここから先は、長調の課題において和声的長音階による和音を使うことができます。具体的には、基本形のIV(サブドミナントマイナー)、第一転回形のIV、そして減五度を含む和音であるIIの第一転回形です。

§35-2. 次のような半音階進行は許されません。

また、1つのフレーズに自然長音階と和声的長音階を混在させてはいけません。

注:従って、和声的長音階を使っているフレーズでは基本形のIIやVI度の和音は使用できません。

§35-3. コラールでは和声的長音階は使えません。

次へ

(一つ戻る)

(和声法実践マニュアルトップに戻る)