カデンツ:全終止と変終止

§20-1. カデンツとは、一つの音楽の段落に和声進行として終わりをもたらすものであり、終止形とも呼ばれます。
§20-2. カデンツは基本的にトニカで終わります。
§20-3. この基本的なカデンツは、全終止(ドミナント→トニカ)と変終止(サブドミナント→トニカ;変格終止とも)に大別されます。
§20-4. いずれのカデンツでも、1) 終止の2つの和音がどちらも基本形、2) 最後の和音のメロディが根音、3) 最後の和音が強拍に置かれている、という3条件をすべて満たしている場合、これを完全終止と呼びます。いずれかが欠けている場合は不完全終止です。

第一種のカデンツ:サブドミナントからドミナントへの進行を含む終止

課題No. 7

§21-1. 第一種のカデンツは、I→IV→V→Iという進行です。
§21-2. 2拍子の場合はIVを強拍に、Vを弱拍に置きます。3拍子の場合は2拍目にIVを、3拍目にVを置くこともできます。

第二種のカデンツ:四六の和音を用いた終止

§22-1. 第二種のカデンツは、IV度→四六のI度→基本形のV度→基本形のI度、という進行です。
§22-2. IV度と四六のI度は必ず和声的連結します。共通音はI度の根音です。
§22-3. 四六の和音では第五音(バスの音)を重複します。
§22-4. 2拍子の場合は四六の和音を強拍に置きます。3拍子の場合は四六の和音を2拍目、V度の和音を3拍目に置くこともできます。

【演習】

全ての長調及び短調で2つのカデンツを弾きなさい。

四六の和音の経過用法

課題No. 8

§23-1. 同じ度数の基本形と六の和音(順不同)の間に、四度あるいは五度関係にある四六の和音を経過的に挟むことができます。
§23-2. この手法では和声的連結しなければなりません。バスは二度ずつ上行/下行する順次進行ですので、上3声のうち1声部が共通音を保持し、1声部がバスと反行し、残りの1声部が一旦下行してから上行します。
§23-3. 四六の和音は弱拍に置くのが望ましいです。
§23-4. 六の和音では根音を重複するのが普通ですが、六の和音→四六の和音→基本形という並びの時は第五音を重複することもできます。その場合、六の和音と四六の和音の共通音のうち内声にあるものは保持せずに三度跳躍することが許されます(下図3つ目の例)。

半終止

§24. 基本形のV度で音楽が区切れることを半終止、基本形のIV度で音楽が区切れることを変格半終止と呼びます。

*注:変格半終止の場合、VをIVの前に置くことができます。

半終止をはじめ、いずれかのカデンツによって音楽が区切れた部分をフレーズと呼びます。

 半終止について、以下の2点を覚えておきましょう。

1) 曲の終わりには半終止を用いない。
2) 半終止の後は基本形のIV度、基本形のV度、第一転回形のV度のいずれかで始める。使い方を学習した後でならば副三和音で開始することも可能。

注:半終止では、次のような形も良く見られます。

半終止および変格半終止の例

特定の課題は設けませんが、上の例を課題に使って練習すると良いでしょう。

上3声における四度および五度跳躍

課題No. 9

§25-1. この節からは上三声について四度あるいは五度の跳躍を使うことができるようになります。このような跳躍によって、配置の密集/開離を任意に切り替えることもできるようになります。
§25-2. 根音、第三音、第五音のどれも跳躍が可能です。跳躍した声部はその次の音で跳躍と逆方向に動かなければなりません。
§25-3. 和音の度数を変えながら、つまりI度-IV度あるいはI度-V度(どちらも順不同)の和音変化をしながらの跳躍の場合には、次の規則があります。

  • 最初の和音が基本形なら2つ目の和音を六の和音に、最初が六の和音なら2つ目を基本形にする。
  • 2つの声部が同時に跳躍するのは望ましくない。声部と声部の間にオクターブを超える隙間を作ってはならない。和音の連結は和声的連結でも旋律的連結でも構わない。
  • 根音から根音に四度あるいは五度跳躍する場合、六の和音は根音を重複する。
  • 第五音から第五音に四度あるいは五度跳躍する場合、六の和音は第五音を重複する。

 メロディが跳躍している時、下3声のどれかがメロディと同じ方向に動いてメロディと五度や八度の音に達する場合を、「並達五度」及び「並達八度」と呼びます。外声(ソプラノとバス)同士の並達五度や並達八度は許されません。

 このため、メロディが上方向に跳躍する場合、はじめの和音を基本形に、2つめの和音を六の和音にする必要があります。

注:終止ではIV度の六の和音の第五音からI度の四六の和音に跳躍することも可能です。

課題No. 9の作例

作例1

作例2(同じメロディに対する別の作例)

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