第一章: 和音の基礎知識と命名法② 七の和音
§3. 七の和音は、三和音にさらに根音の七度上の音を追加した和音です。
これは、三和音を2つ重ねたものとも考えることができます。
七の和音には次の6つがあります。
このように、七の和音には7を付します。
§4. 七の和音には次の3つの転回形があります。
1. 第一転回形:五六の和音 (縦に56を付す)
2. 第二転回形:三四の和音 (縦に34を付す)
3. 第三転回形:二の和音 (2を付す)
七の和音の転回形には二度音程が現れますが、転回形ごとにこの二度の位置が異なることに注意しましょう。第一転回形では一番上、第二転回形では真ん中、第三転回形では低音部に現れます。
三和音の場合と同じように、転回形の名前は最低音が何になるかで決まります。つまり、
という和音はどれも第三音が最低音なので、どれも五六の和音です。
同様に、
という和音はどれも第五音が最低音なので三四の和音、
という和音はどれも第七音が最低音なので二の和音です。
第一章: 和音の基礎知識と命名法③ 自然音階及び和声的音階とその和音 ~主要和音と副和音~
§5. 和音を作るのには、次の4つの音階を使用します。
a) 自然長音階
b) 和声的長音階
c) 自然短音階
d) 和声的短音階
§6. 上の4つの音階の下で作られる三和音は次の通りです。
a) 自然長音階
b) 和声的長音階
c) 自然短音階
d) 和声的短音階
(自然音階と和声的音階で音が変わる和音については、それぞれnat.及びharm.を付した)
増五度を含む2つの和音(和声的長音階におけるVI、及び和声的短音階におけるIII)を除いても、自然長音階と和声的長音階には合わせて9種の異なる和音が、自然短音階と和声的短音階にも合わせて9種の和音が存在します。
このうち、長音階において「主要三和音」と呼ばれているのは次の3つです。
主和音(トニック、トニカ)
下属和音(サブドミナント)
属和音(ドミナント)
短音階における主要三和音は和声的短音階を用いて
主和音(トニック、トニカ)
下属和音(サブドミナント)
属和音(ドミナント)
となります。
三和音の場合と同様に、七の和音もそれぞれの音階に作ることができます。
a) 自然長音階
b) 和声的長音階
c) 自然短音階
d) 和声的短音階
七の和音においても、増五度を含む和音(和声的長音階のIVとVI、和声的短音階のIとIII)以外に長音階と短音階のそれぞれに9種の異なる七の和音が存在します。これらのうち、自然長音階におけるV度の和音、および和声的短音階におけるV度の和音
を「属七の和音」あるいは「主要七の和音」と呼びます。
§7. 自然長音階のI度およびIV度の三和音は長三和音です。
和声的短音階のI度およびIV度の三和音は短三和音です。
和声的長音階と和声的短音階におけるV度の三和音は長三和音です。
属七の和音はV度の長三和音に短七度の音を足したものです。
長調においても短調においても、主要三和音と属七の和音以外の和音を「副和音」と呼びます。
七の副和音のうち、自然長音階および和声的短音階にて導音を根音とする和音を、「導七の和音」と呼び、長調の場合「減五短七の和音」、短調の場合「減七の和音」となります。
減五短七の和音
減七の和音
注:主要和音のみを使った和声進行では、自然長音階と和声的短音階を用います。短音階が自然短音階でないのは、自然短音階が導音を持っていないためです。全ての度数の和音を使用した和声進行では自然短音階と和声的長音階も使用することになります。
【演習】
全ての三和音と七の和音について構成音を分析し、それぞれの和音が何と呼ばれる和音か確認しなさい。